第8話 なんでもないや
暖かいお味噌汁を飲みながらイラストを描く。通話にいる人たちも、ゲームなり創作なり、自分の活動に打ち込んでいる。時々、話しかける程度。図書室でみんなで自習するテスト前の雰囲気。
一息つく。空を見る。外は薄く明るくなりはじめている。耳をすませば車の音。マクロさんが通話から抜けた。今日もお仕事があるらしい。代わりに、我らがVtuberアイドル、ヨツキさんが通話に入る。それまでの静寂からいっぺん、和やかな談笑ムードに包まれる。
ふと時計を見る。8:33。仮面ライダーをテレビで見たい。その前に朝ごはん。そう思って、別れを告げ、通話を抜ける。一瞬猛烈な虚無感が襲いかかる。
慌ててコンビニに走る。夜とは違い車も多い。あの自由な空間は、日常的な空間へと巻き戻されていた。
ミネストローネとおにぎり2個と鶏肉のサラダ。あとは、レジでコロッケを注文する。コロッケを齧りながら家に走る。8:56分、9時の放送になんとか間に合った。
そうしておにぎりを齧りながら、朱音にイラストを描きながら思いついたことを送る。
「思ったんだけど、」
数秒もかからず返事が返ってきた。
「( ゚ー゚)ウ ( 。_。)ン」
「もしよ?もし万が一朱音がスマホを没収されたとして、手紙時々書いてくれん?書く事なんでも良いけん」
「書く!」
そして僕は住所を教えた。今考えればネットで出会ったばかりの人に住所を教えるにはあまりにも安直だったかもしれない。それでも、朱音との繋がりが消えてしまうのが怖かった。
そして、ゼロから託された質問をする。かなりの覚悟がいった。とりあえず落ち着くために、仮面ライダーを最後まで見てから送ることにした。内容は…全く頭に入ってこなかった。
30分経過。
ついに僕は送信ボタンを押した。
「あと、昨日から色々考えて、一つ聞きたい事。朱音はさ、朱音自身のこと好き?」
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