第7話 DAYBREAK FRONTLINE
その日は眠れなかった。眠る気がなかったというべきか。そういう時の日課である、創作者の集いのボイスチャットに入る。ここにはいつも、何かを創るために一生懸命な人、何かを創る人が大好きな人がいる。
「おはようございます。」
何時であろうがそこでは常に朝日が登る。
「お、納豆君だ。おはよ。」
マクロさんが返事をする。彼はAO入試で日東駒専の工学部に入った方だ。まさにAO入試で工学系の入試に臨もうと思っていた僕にとって、先輩のような。それでいて暖かいお兄さんのような人だ。
「おおw納豆wやほー。」
こめたねさんも迎えてくれる。彼はFortnightで日本有数の結果を残した配信者の方だ。モンハンに凝っているらしい。引きこもり中卒からここまで成り上がった彼もまた、人に黙って寄り添える、あったかい素晴らしい人間だった。
彼らの声を聴き、安らぎを覚える。それで居て漠然とした寂しさが宙を舞う。急に温もりが欲しくなった。インスタント食品を貯めておく箱を覗き込む。コーンスープの箱は空だった。机の上に散らばるお金をかき集める。何回も数え直す。500円とちょっと。家を飛び出す。鍵なんて必要ない。通話に繋げたままイヤホンをつけたスマホを握りしめる。朝と夜には車でごった返すその道も、流石にこの時間には一台の車もない。その空間で息をしているのは、確かに自分だけなのだ。こんな時間に外に飛び出す背徳感と特別感が足をより速く動かす。コンビニまで全速力で走った。風が頬をかすめていく。本当にこの素晴らしい世界に悲しみなんてあるんだろうか。その間は無心になれた。笑い声が口から飛び出す。藍色の空に吐息と笑い声が吸い込まれる。
コンビニの無駄に広い駐車場を抜け、光に集まる虫にように入り口に向かう。しまったマスクを忘れていた。来ていたパーカーの襟を口に当て、中に入る。素早くインスタント味噌汁とエナジードリンクを手に取りレジに置く。
お金を払い、二つとも手掴みで家に戻る。スマホをふとみる。4:21。右の空は紫色に染まり出す。夜という自由の終わりをその光は告げている気がした。
<続>
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