第6話 夢のヒーロー

 親が家に帰った後、1人になったその部屋のカーテンを閉める。電気は付けない。部屋の電気はあまりにも眩しい。机に散らばる遊戯王カード。「冥王竜ヴァンダルギオン」がスマホの光を反射する。冥界のファラオのカードだ。

 とりあえず、思いを吐き出したい。歌いたい。スマカラを開く。とにかく明るい曲を歌いたかった。

”この地球ほしを守りたい その笑顔が見たい 傷つき倒れても構わない。強く優しく“

“もしも涙が邪魔をしても、虹の朝が今君に見えるはずさ”

“霞む蜃気楼が君を見せるよ。進んだ先に何が起きても負けはしない、覚悟で”

“誰よりも早く辿り着きたい。守るべき人がいるから“


 好きなアニメ・特撮の歌がずらりと並ぶ。全力で声を振り絞る。伴奏と音を奏でるなんて考えちゃいない。むしろ伴奏なんざかき消してやる。腹の中に溜まった得体の知れない何かを、声に出す。呼吸が上がる。声が枯れていく。それでも、超えなくちゃ、なにかを。そうこうしてるうちに、ゼロから連絡が来た。

「朱音どうなった?」

「一応は落ち着いた。実は…」

「うん…とりあえずここは納豆に任せるわ。」

「俺に?」

「だって、今朱音の中で一番心置いてるのって納豆やと思うんよ。だから、一番心に響くのも納豆やん。」

「よね…」

本当はゼロにも助けて欲しかったが、自分しかいないという使命感、自分が朱音から頼られているという照れ臭さ、そしてその重圧。

 よね…っては言ったものの、なんでそう言ったのか自分でも良くわからなくなってきた。

「まじで?」

聞き直す。

「じゃなきゃこんな話さんよ。」

「そんなもんか…」

「少なくとも追い詰められてる人はね。紫音にさぁ自分は好きって聞いてみて。」

「わかった。聞いてみる。」

<続>

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