第3話 Cage<NTv>
「お父さんに『いらない 』って言われた𐤔」
朱音が放った一言は、一瞬の内に僕の感覚を奪い去った。僕は運よく家庭に恵まれ、親の愛の下育ってきた。学校の友達だってそうだ。親に必要とされないこと。それが現実にありうるのだと。震えた。何も言葉が出なかった。
「親、離婚してるんやけど原因がお母さんなの。それで私がお母さんと同じような行動してるの見て出ていったら?って」
僕は動揺を隠すことができなかった。
「今周りに人おる?おらんかったら電話したい。想像よりも深刻で、読むのが重い」
本音だった。気持ちが文字にならない。紡ぐべき言葉が見つからない。これまで本を読みあさってきた僕にとって、言葉が見つからないのは初めての経験だった。
「お父さんがいて、電話は無理かも」
あっさり断られた。まあ、仕方ない。
「学校側はいじめを隠したがって、教育委員会にすら言わないで」
言葉が出ない。何も言えない。状況を整理するだけで手一杯だった。自分に何ができるのか。それすらわからない。小学校でやった着衣水泳と同じ感覚。もがけどもがけど先が見えない。そんな中、言葉を必死で紡いでいると、朱音からの返信が途絶えた。それでも諦めたくない。必死に祈る。
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