第7話 カステラの魔法でみんな幸せにな~れ!

カステラの妖精さん×2のアドバイスのかいあって、というか私が異物混入しようとするのを物理的に止めてもらっただけだけど、私は初めてちゃんとしたカステラを焼けた。


「このカステラを騎士団の皆さんに食べてもらえば、カステラ職人たちを救える。師匠も帰ってくる!」


美しい姿で倒れたままの騎士団の皆さんの口にカステラを入れると、みるみる息を吹き返し、力強く歌いながら出て行った。きっとカステラ職人を助けに行ってくれたに違いな……ってもう帰ってきた! あっ、カステラ職人たちも一緒だ!

 

騎士団の皆さんが歌っている。ええと、歌詞によると、どこぞの海賊がカステラ職人をさらって海外に売り飛ばそうとしていたらしい。この国には100人のカステラ職人がいると聞いていたが、半人前はまあいいか、とスルーして99人を拉致したらしい。ふーん。むかつく。



「あっ、師匠! 無事で良かった! お帰りなさい」

「フラフィア! おまえカステラが焼けるようになったんだって!?」

「そうなんですよ~」

私は胸を張った。

「俺が手伝いました」

「俺も」

カステラの妖精さんたちがすかさず自己主張した。


「え、あれって王様じゃないの?」

「どうして黄色い全身タイツを……」

「股間が……ああ、見てはならぬ、見てはならぬぞ……」

カステラ職人たちが元王様のタイツ姿を見てヒソヒソざわざわしてきた。

元王様の妖精さんは、あわあわし始めた。

こういういたたまれない感じの空気がちょっと苦手なほうの妖精さんも、つられてあわあわしてしまったようで、大声で叫んだ。

「り、リニアモーターカー! 助けてー! この空気をなんとかしてー!」


すると空から。


金属の塊であるリニアモーターカーが。


私たちがいる厨房に向かって時速600キロメートルで降ってきた。



もう無意識で。


私は――。


リニアモーターカーをカステラ魔法で巨大カステラへと変えた。



ふわっふわのカステラは、時速600キロメートルに耐えられずに空中分解し、ちょうど一口サイズになって王国に降り注いだ。国民たちは大喜びでカステラを受けとめた。


――


元王様と99人のカステラ職人の命を守った私は、ナーガ・サリ王国の英雄として崇められるようになった。


新しい王様が即位して、英雄である私を王宮に呼んで丁重にもてなし、そこそこの金額を口座に振り込んでくれることを約束してくれた。そして城とか運河とかをカステラに変えないでねと何度も念押しされた。やだなあ、そんなこと私がやるわけないじゃないですか。今度の王様は心配性な性格みたいだ。


私は、英雄になったけれどもあいかわらずカステラを作るのはヘタクソなままだ。今日もまた異物混入カステラを製造して、師匠に叱られている。


「フラフィア、またやったな!? カステラが緑色じゃないか」

「ごめんなさい~。青汁とメロンを入れたらヘルシーになるかなって……」


「おじさんね、きみにはまずノーマルなカステラを焼けるようになって欲しいな? まず基本が大事じゃん? いきなりアレンジレシピはやめて? ね?」

と妖精さんその1が言った。焦げ茶色のベレー帽がおしゃれだ。


「どうしてこうもカステラを焼くのがヘタクソなんだろーな」

と妖精さんその2が言った。チューリップのついた白い三角形の帽子をかぶっている。


二人の妖精さんは、相変わらず何の役にも立たない。カステラのことをよく知っているみたいな雰囲気だけ出すのはうまくて、都合の悪いことからは逃げる魔法が得意なだけの存在だった。国にリニアを落としかけたことも、うまいことうやむやになったし。カステラの妖精って本当何なの。



私はカステラ職人としては相変わらず失敗ばかりだけれど。カステラを愛しているから。きょうも明日もカステラを焼き続ける。いつの日か極上のアレンジカステラを作ることを夢見て。


そして、国にとって邪魔なものをカステラに変える「食べて撤去プロジェクト委員会」の委員長としても活躍し、魔法を使ったり、委員報酬をもらったりして、毎日を楽しく過ごしている。


カステラ万歳!


<おわり~>

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はきゅうてんBOSS城のカステラ職人はリニアモーターカーより強い ゴオルド @hasupalen

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