賢者 家に帰る

 羽雪くんは女神の力が抜けても魔力をまだ使えるようだった。一番家が近い羽雪くんの家を頼りなんとか人と出会わずに家に着く。家に入ると誰もいない状態だった、私とガーディアンが羽雪くんの部屋で待たされる間に、羽雪くんはは手早くボロボロになった服をゴミ袋にまとめ着換えをすます。

 羽雪くんは私たちの服を用意すると言って部屋を出ようとすると、ガチャ……とドアが開く音がした。


「ただいまー?あれ誰か帰ってる?兄ィ!彼女来てるの!??あれ二足?」

「おーい、ちょっとこっち来てくれないか?」

「え、なーに?紹介してくれるの?」


 羽雪くんが妹さんを部屋に招く。大丈夫かしら?服がボロボロでところどころ血まみれの高校生と、もう一人は人間には見えるけど中身ロボットなんですが……部屋に入ってくると案の定、妹さんは私たち二人を見て固まってしまう。


「こ、こんにちは」

「……」

「……こんにちは……これは、どう言う感じ?」


 ほら!やっぱり困っちゃうじゃない!


「ああ、ちょっとトラブルに巻き込まれてね……彼女の家まで帰れるように着替えが欲しい感じ」

「……わ、わかった……だけど合う服なさそうな……」


 私は改めて自分の姿を確認する。あ。なんか物凄いきわどい状態になってる……怪我はある程度羽雪くんが治してくれたけど。女の子としてどうなのって感じになってる。


「ジャージとかで良いから!」

「あ、そうだね、それならあるよ」


 妹さんが自分の部屋に着替えを取りに行ってくれる。ガーディアンがきょろきょろと部屋を物色しだし、私は羽雪くんの部屋に入っているという状況にやっと気が付き何も考えられず緊張してしまう。


「ほい、これなら入るっしょ」


 しばらくすると妹さんが二人分のジャージを持って来てくれる。体育会系って言ってたから沢山もってるのかな?


「お、ありがとう」

「はい、兄は出てくー」

「あ、そうか」


 あれ?羽雪くんが外に出された?


「あ、私の名前は結衣。よろしくね。あ、今後ともよろしくお願いいたします」

「え、いやこちらこそお願いいたします。与謝峰琴音よ」

「んーじゃぁ、琴音ちゃんね。そちらの方は?」

「……」

「あ、その子喋れるけど、今は喋らないの……」

「うーん、なんか大変なのね……」


 私たちは結衣ちゃんから貸してもらったジャージにそでを通し、ボロボロになった服をまとめる。お気に入りだったけどしょうがないね。


「それで……兄ィの彼女は琴音ちゃんかな?」

「……」


 私は質問に答えられずに顔がゆでだこの様になってしまう。


「あー、はいはい、わかりましたよっと」


 ドタドタと急いで階段を昇る音がする。


「兄ィ、焦ってるなー」


 羽雪くんが飲み物と、汚れをふける様にウエットティッシュとタオルをもって部屋に戻ってくる。私の顔が真っ赤になってるの分かるだろうなぁ……


「はい、与謝峰さん、のどかわいてるだろ?」

「あ、ありがとう」


 考えてみたら久々の水分補給だった、冷えた麦茶が物凄くおいしい。


「……はぁ……生き返る……」

「無茶したからなぁ……さすがに」

「ねぇ、詳しくは聞かせてくれない感じ?」

「止めておいた方が良い気がするわ、平穏な人生送りたいし俺……あ、この事は他言無用で頼む、割とマジで」

「んー分かったそれじゃ……琴音ちゃん、またねーあと無口な人もまたねー」


 結衣ちゃんが気を利かせて外に出る。羽雪くんと全然性格が違うのね。羽雪くんが真面目な顔に戻って私に現状を聞いてくる。


「与謝峰さんの体に邪神の何か……がもう無くなった……でいいのかな?」

「大丈夫だと思う、軽く魔力を使ってみるね」


 私が魔力を使っても、黒いモヤは発生しなかった。もう大丈夫だ。私はちょっとウルッと来てしまう。やっと、やっとここまでこれた……妄想ではくて何度となく夢見た状態だ……


「セレスを再スキャン……邪神の残滓の残存率……0%だと思われます」

「おう……ありがとう」

「さすがに疲労もすごいと思うし家に帰って休んだ方が良いと思うけど……ガーディアン……きみはどうするんだい?浄化後はどう言う指令を受けていた?」

「浄化後は賢者セレオースの魔法陣にて逆転移をする予定です。それまでは特に指令がありません、地中にでも潜伏しましょうか?」

「地中に潜伏……新型はそんな事も出来るようになったのね!!!!」


 いつの間にそんなすごい機能が付いたの?魔術院の人たちなのかな?女神様の口添え?


「あっ!」


 羽雪くんの視線に気づき、私は恥ずかしくなって下を向いてしまう。ああ、今はそんな時じゃない……


「んーどうしよう?俺んところは部屋ないし……与謝峰さんが魔法陣作るまでどれくらいかかるの?」

「……今の環境だと直ぐには無理だと思う……古文書も図書館も女神様達もいないし……色々足りない感じ」

「んじゃ、地中に潜伏してもらって、呼び出すとき魔力高めるとか?」

「それも手なんだけど……一応、戦闘しているのでメンテナンスしないとだめかも……家だと色々理解あるので……大丈夫かも」

「?話しているのか?」

「……うん、母さんには、色々あってね……兄弟もちょっとだけ知ってる……かも」

「お、おう?……わかったそれじゃガーディアンはよろしく頼む」


 私がにっこりとほほ笑むと、羽雪くんが照れてくれる。なんか嬉しいな……


「説得とかは一人で大丈夫?」

「……んー大丈夫……かなぁ……どうだろ?」


 玄関まで羽雪くんと一緒に降りて行くと、羽雪くんのお母さまが帰ってきたみたいで玄関から入ってくる。


「あれ?……あら?お客さん?」


 お母さまがなんか物凄くうれしそうな表情をして、羽雪くんをちらちらと見る。


「ああ、こちらはクラスメイトの与謝峰さんと……ガー子?」

「あら、そうなの、優斗とこれからもよろしくね、帰るところかしら?」

「は、はぃ」


 私はかなり緊張してしまい、最後の「ぃ」が抜けた声になってしまっていた。恥ずかしい。


「優斗、ちゃんと送ってくるのよ、晩御飯は遅れてもいいから」

「……わかった」


「お邪魔しました」」

「オジャマシマシタ」

「はーい、またいらっしゃいね」

「じゃいってくる」


 私と羽雪くんが並んで歩き、その後ろをガーディアンが付いてくる。


「私、これから普通の人生おくれるんだよね……」

「ああ、全部解決だ、ものすごく……長い時間よく頑張ったな」

「うん……ありがとう」


 そこからは特に会話もなく黙々と歩き続ける、私はこの短時間で色々あり過ぎて頭がボーっとしてしまった。私の家の前に近づくと、ちょうど家に帰るところだったママと鉢合わせをした。


「あら、琴音……あれ? 服どうしたの? あれ? 新しいお友達? と優斗さん」

「あ、ママちょっと色々あって……家の中で話していい?」

「わかったわ、あ、あの子たちがいるからご飯の支度終わってからでいい? あ、材料足りないわね……」

「あ、俺は良いです、家で夕ご飯食べるんで」

「そう? 折角なのに……」


 私は羽雪くんをチラッ見ると、羽雪くんが軽くうなずく。


「あ、自転車……置きっぱなしだったよな、取ってくるわ」

「え? あ、ありがとう。鍵これ」

「いつのまに……じゃ、ちょっと取ってくる」


  羽雪くんが自転車を取りに颯爽と駆け出す。魔力も結構回復している様だった。


 私はガーディアンをとりあえず私の部屋に連れて行ってしばらくここにいてもらう事にした。夕飯の準備をしているママの所に向かう。


「琴ちゃん、いったいどうしたの? 服はよごれちゃった?」

「うん、ちょっと色々あって。後で全部話すよ。羽雪くんも一緒の方がいいし」

「そう、とりあえず早く作っちゃおうか」

「うん」


 私とママはさっと夕飯を準備をする。羽雪くんちょっと遅いなぁ……気を利かせてわざと遅くしてるのかな?


 しばらくすると家のチャイムが鳴る。


「あ、待ってたよー入って」


 羽雪くんをとりあえず自分の部屋に案内する。とりあえず家族分のご飯を食べてから落ち着いて話しかな?


「私たちご飯食べちゃうから、ガーコと一緒に私の部屋で待ってて、変なところは漁らないように!」

「わかった……ガーコになったのか……」

「あなたが命名したんでしょ?」

「ちゃんとした名前つけてあげようよ……」


 え? 違ったのか。てっきりガーコで決まりかと……まぁいいか、あ、ガーディアンが私の部屋を物色している……羽雪くんもそわそわしている……


「あ、あんまり見ないでね……じゃ、ちょっとご飯食べたら呼びに来る」


 私は羽雪くんを部屋に残す事が恥ずかしかったが、まぁ、しょうがないかな……リビングに戻ると弟と妹も席についてまってた。私はまたこの光景が見れて物凄くうれしくなった。


 夕ご飯を食べていると弟と妹からは彼氏は一緒じゃないのか? とかいろいろ聞かれたけど適当に……答える事も出来ずに、私ただ、顔が赤くなって縮こまるだけだった。見かねたママがそういう話はもうちょっと二人の関係が落ち着いてからしなさい。と一応注意してくれた。


 家族が夕ご飯を食べ終えたので、弟と妹は部屋に戻ってもらい、羽雪くんを呼びに部屋に駆け上がる。ママはそれじゃぁとコーヒーとお茶請けを用意しにキッチンに向かう。


「……なんか部屋の空気がおかしいかな? 2人ともちょっと下まで来て」


 ドアを開けると羽雪くんの様子がちょっとおかしかった。なにをやってたんだろう?


 羽雪くんとガーディアンとでリビングに降りると食卓が片されてコーヒーの用意がされてる。お茶請けを持って与ママが入ってきて椅子に座る。皆がちょっと落ち着いたみたいなので私はママに話をする。


「えっと、まずこの子なんだけどしばらく家に置いて良いかな?」

「えっ? まだ未成年よね?」

「この子、ガーディアンと言うゴーレム……簡単に言うとロボットなの」

「のぞみちゃん、腕の形態変化やってみて」


 羽雪くんが気を利かせてか説得用にガーディアンに命令をだす。ガーディアンの腕が変形しロボットの鎧型になる。見事な変形っぷりだ。その様子を見てママが驚いた表情をする。


「……あなたと居るといつも不思議な事が起きるけど、今回はすごいわね……」

「ママに以前話した異世界から……私達を助けに来たの」

「……本当に……信じていなかったわけでは無いけど、本当なのね」

「それで、この子を送り返すには色々調べものとか準備が必要なので思ったより時間かかりそうなの、ロボットだから食費とかはかからないし」

「えぇ、大丈夫よ、あなたがお願いして来るなんて……良かったわ、あなたの運命がいい方向に行ったのかしら?」


「うん、ママ全部良い方向に行ったわ……私、普通の人生を送っても大丈夫になったの。恋愛も出来るようになったし、子供も……大丈夫になったの……」


 私は話ながら途中で涙声になり目がウルウルしてしまう。私の発言の意味を理解したママが目を見開いて驚く。ママがゆっくりと席を立ち私を優しく抱きしめる。


「本当なのね? 良かったわ……長く……長く苦しんでたもんね、本当に良かった……」


 私は嬉しいのと辛かった日々を思い出して思わず泣き出してしまう。本当に長かった……ずっと諦めていたのだ。前世でも、今世でも。本当は恋愛もしたかったし、自分の子供を家族だって持ちたかった。幸せな家庭を見るたびに羨ましくなったし。自分が惨めな気分になったりもした。やっと私は自分のために幸せを追い求められるんだ……やっと……やっと……


 私はしばらく泣きじゃくった。暫く泣くとちょっとすっきりした。ちょっと恥ずかしくなってきた……


 ママが私を優しく抱きしめながら羽雪くんにが話を振った。


「あなたが治してくれたのかしら? 私達を治したように?」

「ええ、そう言う事になります。が、俺のせいで遅くなってしまい申し訳ありません」


 羽雪くんが私たちに頭を下げる。え、なんで? 私たちを助けてくれたのに!


「顔を上げてください! 事情はよくわかりませんが娘を治してくれたのです。謝る必要はありません、……本当にありがとう」


 あ、ママ、羽雪くんは遅れた事を謝っているの。でも私が頑張って魔力を使ってこなかったせいなんだ……


「羽雪くんは全然悪くないわ、おそらく私のせいなの」


 羽雪くんがちょっと呆けた感じで私の顔を見る。


「羽雪君が魔力に目覚めた前日に、うちのキッチンで油の火事が起きそうになって……危ないと思ったから魔法を使っちゃったの……」

「あの時ね、私が油用じゃないコンロでやってしまったやつね……」

「僕が間違えて水かけちゃったやつだね……ごめんなさい」


 あれ、樹、なぜリビングに? 羽雪くんもなんか申し訳なさそうな顔をしている……


「樹! 部屋にいなさいって言ったわよね?」

「ママ、丸聞こえだよ、凄い話してるから来ちゃったよ」

「今日は特別にタブレットつかっていいから! ちょっとだけ大人しくしてて!」


 ママが樹と碧を追い立てる様に2階に押しやる。ただ事では無い雰囲気なので、二人はそのままおとなしく2階に上がる。


「続けるね。私がこの世界に来て初めて魔法を使ったのがあの時なの、多分私の魔力か邪神の残滓を察知して、羽雪君が前世の記憶を取り戻したと考えると色々納得出来るの」

「そう言えば最初の魔力感知の時に黒いモヤが少しだけあったね」

「つまり、私が生まれてすぐ魔法を使っていたら……」

「うーん。それは無いかな、多分小さい時だと体から小さ過ぎて対応出来なかったと思うし、逆に時間経ってからだとのぞみちゃん無しだと負けてたと思うよ」


 あ、そっか……その時使っていたら私は普通に邪神の残滓に巻き込まれ魔王化していたのか……あ、でももっとタイミングよく魔力を使っていれば……パパが死ぬ前に魔力を使っていれば……色々出来たかもしれないのに……


「でも3年前に魔法を使えればパパは死ななかったかも……」

「琴音、あなたのせいでは無いと言ってるでしょう?突然の交通事故なんて防げる訳ないでしょう……」


 ママが私を諭すように優しく語り掛けてくる。


「魔力を開通させていないこの世界の人間にはセレスの呪符魔術、及び付与魔術の効果は軽微と予測されます。」


 ガーディアンが空気を呼んだのか客観的な意見を付けて補足をしてくれる。


「そっか……どうやってもダメだったか……」


 私がなにをどうやってもうまくいかなかったのか……私は心のどこかにあったわだかまりが無くなり吹っ切れたような気がした。私は天を仰ぎ見る。


 ママが疑問に思っていたのか羽雪くんに質問をする。


「優斗さんもあちらの世界の人なのかしら?」

「はい、与……琴音さんとは友人……戦友に当たります」


 私の顔が若干赤くなる。あ、ヤバい……気が付いてしまうのだろうか……確か昔に話をしてしまった記憶が……


「!あら? あら? もしかして話にあった憧れのナイト様かしら?」

「ま、ママっ!」

「ふふっ」

 

 ああ、やっぱり覚えていた! 前世での愛しい人を置いてきた話を! ここで言わないでっ! 私は恥ずかしすぎて顔が赤くなるのを感じた。


 その場の空気を壊す様に羽雪くんのスマホの着信があった。

 羽雪くんがメッセージを確認をする。あ、そうだね、もう結構な時間か。


「あー、じゃあ俺そろそろ……」

「う、うん、時間も遅くなっちゃったね」


 私とママとガーディアンがが玄関まで羽雪くんを見送る。


「あ、言い忘れた」


 羽雪くんが振りかえって私に耳打ちをする。


「部屋に戻ったら、魔力感知をした方が良い。あの様子だと……多分もう時間無いかも……」

「ん? わかった、なにかしら?」


「お邪魔しました、それじゃまた!」

「うん、また学校で!」



 羽雪くんの後ろ姿を私たちは見送る。ママがそっと呟いた。


「良い人で良かったわね」

「うん。ものすごくお人好しね……」





 私とママはリビングの跡片付けをと夕ご飯の跡片付けをする。


 あ、そうだ。羽雪くんが魔力感知をした方が良いと言っていたけど、なんでだろ?


 言われたとおりに私は魔力感知をしてみる。


 あれ? ……何だろこの感覚……


 

 リビングの部屋のいつも空いている席。もう誰もいないはずの席。


 そこにうっすらと透明なパパの姿があった。


 

 え……



 私が見えている事が分かるのか、座っていたパパが立ち上がる。


『琴音、見えるのか?』

「……う、うん……」

『ああ、よかった……』

「ずっと……いてくれたの?」

『心配で心配であちらに行けなかったんだよ』

「……突然いなくなるから……私……わたし…」


 思わず私は泣いてしまう、なんでこのタイミングで……あ、羽雪くんが時間が無いって……この事か……パパが消えかかっている……


 ママが私の事が心配になってこちらに近づいて優しく背中に手を当ててくる。


「琴ちゃん大丈夫? どうしたの?」


 樹と碧も2階から降りてきて、どうしたんだろう?と言った表情をしている。


「ママ、いっくん、あおちゃん、私の手を握って」


 3人は、どうしたものかと見つめ合った後、私に近づいて恐る恐る私の手を握る。


「そのまま、リラックスして。絶対に手を離さないでね」


 私は魔力を3人に流す。前世で何回かやった事があった。魔力を持たない人にも魔力や霊を見れるようにする魔法。


「あ、あなた……」

「パパ……」

「パパ?」


 良かった、3人にも見える様になったね。


『これは……僕が見える様になったのかい?……』

「ええ、見えるわ……」


 パパの霊は私たちに近づき優しい目をして私たちの体を触るような身振りをする。パパの体がどんどんと薄くなっていってる。これは前世で何度も見た光景だ……


『さすがに触る事は出来ないね……』


 パパはママの顔をなぞる様な動作をする。


『ママ、3人をここまで育ててくれてありがとう。僕が突然死んじゃったりしてごめんな……』

「ふふっ、わたし頑張ったよ……頑張ったのよ……」


 ママが涙を流し出し泣きじゃくってしまう。あの時以来だな……


『樹、僕との約束を守ってくれてありがとう……よく頑張ってくれたな』

「うん……俺、これからも頑張るから」


『碧、ごめんな……パパいきなりいなくなっちゃって 』

「パパ……お星になっちゃうの?まだいるの?」


 パパの姿がどんどん透明になって光り輝いていく。時間が迫っている様だ。


『パパ、みんなが心配で成仏出来なかったけど、皆、もう大丈夫みたいだね。琴音、これからは普通に生きていけるってパパが聞いたら……僕はもう安心してしまったみたいだ。皆ももう大丈夫だね?』


「うん……もう大丈夫よ。見守ってくれてありがとう……」 

「う、うん……」

「またどこか行っちゃうの?」


 ママが泣きながらパパに答える。樹は泣いてしまっている。碧は状況が分からないのかポカーンとしてしまっている。



『琴音……ありがとう。最後にみんなと話せて嬉しかったよ』


「うん。色々助けてくれてありがとう。……やっぱりパパだったのね……」




 パパがにっこりと笑い。それから光となって消えて行った。


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