賢者 遊んでみる

 中間テストの最後のテストも終わり、みんなが自分の席に突っ伏したり、さっさと帰り支度をしたり三者三様な感じの中、テスト期間中は隣の席の羽雪くんに鈴ちゃんと海斗君が話しかけてきた。


「さぁ、遊びに行くか」

「たまには駅前に繰り出そう」

「お、おう……テンション高いな」


 机に突っ伏してた羽雪くんが反応する。なんか全力だして燃え尽きてたね。さて、放課後どうしよう?とスマホで羽雪くんと連絡を取るべきか、話しかけるべきか迷っていると羽雪くんと目が合ってしまった。


「お、こっちゃんも行くぅ?」

「んー今日は行けるかな」

「おお、めずらしいな」

「今日は母さん定時で帰ってくるから大丈夫だって」

「兄弟の面倒見るのも大変だね」

「んじゃ行くか」


 私たちは4人で駅前のスポーツ遊戯施設の3時間パックで遊ぶ事になった。私以外は体育会系のノリだけど前世で体術の基本などをこなしていた私だ。負けず嫌いなところもあるので頑張って付いて行ったが結構しんどいな。この人たち本当に運動神経が良い。たまに思わず意識加速を使ってもギリギリ付いていけるレベルだ。なんで部活じゃなくて同好会なんだろ?

 途中、鈴ちゃんがちょっとお手洗いにと私をトイレに引っ張っていった。ちょっと鈴ちゃんの顔が緊張している感じだった、どうしたんだろ?


「ね、ねぇ?こっちゃんさぁ……」


 珍しく鈴ちゃんが言い淀んでいる。いつもならはきはきした感じでスパッと色々な事を言うのに。


「どうしたの?」

「あ、あのー、その、優斗と、その、なんか良い感じなの?」

「えっと?なんか話が見えない様な?」


 あれ?いい感じって、魔力使えるとかじゃないよね、もちろん。鈴ちゃんからは魔力の波動的なものを感じた事は無いし……


「その、噂で、優斗とこっちゃんが付き合っているって……」

「え?……あ、そっちか」


 中央公園で二人で話してたのを誰かに見られたかな?話は聞こえない距離だけど、誰がいるくらいは分かるものね。


「付き合ってはいないよ。最近は色々話とか相談とか勉強を教えてる感じかな?」


 鈴ちゃんがまじまじと私の顔、と言うか表情を読もうとしている。私はおそらく今はポーカーフェイスだ。……多分。


「そ、そうなんだ……仲はいい感じなのね……」

「うーん、そうだね。羽雪くんは色々と面白い人だからね」

「そっか……」

「なんか反応が面白いよね、からかったりとかすると本気で顔が赤くなったりするし、落ち着いてるのになんか初心な感じが何ともかわいいよね」

「え?う、うん、私もそう思うよ……」

「?」


 それから何となく鈴ちゃんが無言になってしまって、トイレから帰る。あれ?羽雪くんの雰囲気もちょっとおかしいな?海斗君から似たような事聞かれたのかな?

 その後はいつもと変わらない感じで4人で一通りのアトラクションを楽しんだ。途中から鈴ちゃんのテンションが上がったり下がったりなんか変な感じになってるんだけど……ほんとに鈴ちゃんって海斗君の事が好きなのかな?どうみても羽雪くんの方なんだけど……


「ちょっといいか?」

「……うん」


 遊戯施設を出たタイミングで羽雪くんから声をかけられた。なんかお互いに気恥ずかしい感じだ……

 海斗くんと鈴ちゃんは私たちに気を使ったのかちょっと距離を取って二人で話し始めていた。あちらも情報交換をしているのだろうか?


「なんかごめん、噂になってたみたいだね」

「うん、俺も聞いた、結構見られてたんだね」

「ちょっと私が浮かれすぎてたかも…………」

「俺の方が浮かれてたかも……」

「……」

「……」


 思わず見つめ合ってしまい、お互い軽く笑いだす。私がが離れていった二人をちらっと見る。やっぱりなんか変なんだよね、ものすごい違和感を感じる……


「ねぇ、ほんと鈴ちゃんって海斗君と相思相愛なの?」

「え?どう見てもそうだろ?」

「若干……と言うよりかなり疑惑だよ……信じて色々話をしたらなんか鈴ちゃんちょっと様子が変になっちゃったよ……」

「確かに変なテンションだったな……」

「それで、これからどうするの?」

「うーん、上手に隠しながら色々やる?俺は別に噂とかどうでもいいんだけど……与謝峰さんが困るだろ?」

「……私も別に……だけど、上手に隠しながら……上手く行くのかなぁ……」


 羽雪くんが噂がどうでもいいとか男らしい事を言ってくれて若干照れてしまった。海斗くんと鈴ちゃんもこっちをちらちら見ながら会話をしてる。うーん、どう思われているんだろうか?


「一旦持ち帰って考えましょうか」

「んだね、この場で考えても良い案でなさそうだね」


 それから途中で男子二人と別れ、鈴ちゃんと二人で家に帰る。


「鈴ちゃん?どうしたのなんか顔がこわばってるよ?」

「へ?あ、えっといろいろと考え事を……」

「ほうほう、お姉さんに相談してみなさい」

「うーん、今回ばっかしはこっちゃんには相談出来ない……気がするよ」

「あら?鈴ちゃんも大人になったのねぇ~」

「なんか、こっちゃんママみたいな口調だね……」

「え、わたしあんなにボケボケじゃないよ?」

「たしかに、こっちゃんはパパ似だったもんね」

「うん、多分そう」


 それからは鈴ちゃんの気が晴れたのか、二人で他愛のない話をしながら家に帰る。さて、色々あったけど久々に体動かしたからスッキリした。明日からは魔法の練習再開だ!楽しみだ!

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