賢者 魔力もちと出会う
一夜明けて朝になった。
特に私の体が邪神の呪いにさらに浸食されると言う事もなく、割とそのままの状態だった。要するに、今は大丈夫だけど、さらに魔力を使っていくと邪神の呪いに巻き込まれて魔王化してしまう状態のだろうか?気を付けて生きて行かねばならないなぁ……頭が重い。
私は弟と妹の朝の支度をいつも通りに終え家族の見送りをすると、最後に家を出た。ママは急ぎの仕事があったらしく早めの出勤をしている。
鈴ちゃんといつもの待ち合わせ場所で落ち合い、学校に向かう。鈴ちゃんとはなんと、10年ぶりくらいに同じクラスになった。保育園以来になる。
二人で他愛のない雑談をしながら学校に向かっていると、突然前の方から強力な魔力の波動を感じた。何が起きたかわからなかったが目を凝らしてみると凄まじい魔力を纏った男子高校生らしき人がガードレール足場に強引にカーブを曲って猛スピードでこちらに向かってくる。
え?ちょっとまって、昨日の魔力反応を感じ取られていたのか?ターゲットは私か?私は突然の事で頭がパニックになってしまった。
その男子高校生が転びそうになりながら私たちの前につんのめりながら近付いて来て、煙が出るんじゃ無いかと思うくらいに足を地面に擦りつけてピタッと止まる。
凄まじい魔力の持ち主だ、私、殺されるのかしら?この間合いだと私にはもう何も出来ない。戦士の間合いだ……
私が驚いて頭が固まって動けないでいると、隣にいた鈴ちゃんがその男子校生に話しかける。
「ええっ?高ニにもなってなにやってんの?小学生?」
「あーっと……久々に寝坊して本気走りしたらずっこけちまったよ。ははっ」
「そう?もう時間なら大丈夫よ、私らいつもギリギリ間に合うから。ん?」
鈴ちゃんが固まってる私を小突く。あ、同じクラスの
私は色々疑問が頭の中に渦巻いたが取り敢えず反応をしてみた。
「……あー物凄い速さで走ってくるからビックリしちゃったよ。ほんとオリンピック選手みたいだったよ。陸上部だったっけ?そもそも、あんなに人って速く走れたっけ?」
「ゔっ?」
あれ?反応がイマイチおかしいな?質問に答えて来ない?
「……まぁ、頑張っちゃったからね」
「んな訳ないでしょ、うちの学校にはオリンピックどころか全国区の選手も居ないんだから。あ、立ち止まらないで歩かないと、さすがに遅れるよ」
羽雪くんのよく分からない返答に鈴ちゃんが軽くツッコミを入れる。非常に普通な状態だ。どういう事かさっぱり訳が分からなかった。
思わず羽雪くんをじっと見てしまったが、相手も気が付いてはいる様で目を逸らして誤魔化そうとしている感じだった。私の命を狙いに来たなにかじゃないのかな?私は不安になりながら二人の後をついて行った。
学校に着いてからもこっそりと羽雪くんを観察する。ふと気が付いたのだか、私以外にも彼を観察している人が結構いるようだった。たしか人気ある人だったっけ?気さくでかっこいいし。確か鈴ちゃんも気があったんじやなかったっけ?
授業中も羽雪くんが上の空な感じになっていた。雰囲気的には突然に魔力に目覚めた感じかな?それを今色々考えている。と言ったところだろうか?昨日までは何も感じなかったからな……
「羽雪くん、問七の二行目から三行目の訳は?」
「あれ?あ、わかりません、聞いていませんでした」
「正直なのはよろしいぃー。が?授業中は集中よ、集中ぅ」
完全に上の空の様だ。これは色々と調べなければいけないな……しばらく羽雪くんの行動を見張ってみるか。
放課後になると羽雪くんがソワソワし始めて早く帰りたそうな感じだった。おそらく魔力のテストでもしようとしているのだろうか?
夜ご飯の準備まではまだ時間があったので、それまではちょっと尾行してみるか。魔力を使わなくても気配はある程度消せる訓練をしていたので試しにやってみる。塀を歩いてる猫に気配を消したまま近づきチョンと触ってみる。突然の事にビックリしたネコが塀から落ちて走り去ってしまう。うーんちょっと悪い事したかな?まぁ気配隠蔽は出来るっぽいね。
それから一度家に帰り、自転車に乗って魔力の方向をなんとなく感じながら探してみる。大きな魔力反応なので探すのがとても簡単だった。どうやら高速で移動しているみたい。あそこは裏山の空き地かな?小学生の時に探索した覚えがある。
相手に魔力感知が出来ないくらい離れた位置から羽雪くんを観察する。それにしてもすごい魔力量だ、あれで何をするつもりだろう?
あ、朝にやっていた身体強化かな?魔力を身体に纏わせて身体能力を強化するシンプルなもの。格闘系の人なのだろうか?物凄い動きをしている。前世を思い出してもかなりの腕だった様に見える。
「これは……すごいな」
「魔法はやっぱり無理かな?」
あれ?羽雪くん何か変だな?自分で能力に驚いている感じなのかな?あ、魔力を練り始めた、え?あの威力だと大変な事にになりそうな?
「あっちぃ!」
立ち上がる火柱と轟音に私は驚いた。あれは?制御出来ていない感じか?あんな派手にやったら人が集まってくるんじゃ無いか?私は周りを見回す。この距離だったら大丈夫なのかな?
「お、お、おおっ?!」
なんか、撃ってる人間が一番驚いている様な……どう言う状況なんだ?思考を巡らしていると、羽雪くんが更に魔力を練って魔法を発動する。
「風の刃」
ドーォゥン!
「ちょっ、これヤバイ!」
うわ!あの威力で撃っちゃうんだ!風の刃じゃ無くて、風の大砲だよ!あれじゃ!私はヤバさを感じたのでその場から逃げ出した。どうやら羽雪くんには気が付かれなかったようだが、羽雪くんもかなりの速さで空き地から離れていっているようだ。流石にあれだけの轟音だと人が来るよね。
私は家に帰ると、いつもの様にご飯の支度をして家族の帰りを待つ。弟はサッカーの練習、妹はまだ小学校一年生だから学童保育から帰ってくる。ママは最近仕事か忙しいらしく遅くなっていた。私は夜の家事をしながらも色々考えていたが、羽雪くんの事をあまり知らなかったので鈴ちゃんに……聞こうと思ったが、たしか鈴ちゃんの好きな人って羽雪くんだったような気がしたのであまり聞けないな。そうだ去年同じクラスだった海斗くんだったら大丈夫かな?海斗くんとは小学生で遊んだりしてたし、去年同じクラスだったので連絡先を知っていた。
とりあえずどんな人なのかを質問してみよう。
【突然だけど、羽雪くんってどんな人?】
暫くすると海斗くんから返信が来る。
【良いやつだよ。男の俺から見ても良いやつだと思う。どうしたの?】
【ちょっと気になる事があったので、どんな人柄か知りたかったの】
【ああ、とりあえず今は好きな人はいないって言ってたかな?あと、奴は結構モテるぞ?あまり気にしてないみたいだけど】
うん、突然こんな事を聞けば恋愛からみの話だと思っちやうよね。
【ありがとう。変な人とか、人には言えない趣味してるとかじゃなければいいんだ】
【そんなのは俺が知っている範囲では無いかな……ちょっと人より大人びていると言うか諦めている感じがなんかあるかな?そう言う性格なんだろうけど】
【うん、ありがとう。あ、この事は羽雪くんには秘密にしてね】
【わかった、ちょっと意外だったよ】
あーこれは勘違いされてる。まぁいいか。勘違いさせておけば次も聞きやすくなるし。私、ちょっと黒いな……とか思ってしまった。
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