賢者 高校生になる
高校1年生になった。
考えてみると鈴ちゃんと同じ学校になるのは初めてなんだね。保育園時代からよく遊んでいたからそんな気がしなかった。ほとんど生まれたときからになるから本当に長い付き合いになる。
「おはようこっちゃん!」
「おはよう。鈴ちゃん」
「こっちゃん可愛いな~」
「鈴ちゃんも似合ってるよ。頑張ったかいあったね」
「うん、ありがとう」
私達は二人で学校に登校する。高校まで来ると大人だった精神と周りの精神のギャップがほぼ無くなってくるので、言葉遣いや気の使い方などが減るのでだいぶ会話が楽になってくる。学校に着くとクラスの振り分け用紙が貼られていた。残念だ、鈴ちゃんとは隣のクラスか。折角なら一緒のクラスだと良かったんだけどな。
「お、鈴香、一緒のクラスだな」
「あ~残念、俺は隣のクラスだわ」
「残念ねーまた3人同じクラスだと良かったのに」
なんか爽やかで格好いい二人組が鈴ちゃんに話しかけてくる。あれ?この人達かな?鈴ちゃんが頑張ってこの学校に入った目的の人は。どっちだろ?
「琴音ちゃーん、同じクラスだ!」
「私は隣かぁ……新たな出会いに期待だね」
七海ちゃんと未菜ちゃんが後ろから話しかけてくる。二人も同じ学校に入れたんだよね。もちろん私も二人に全力で勉強を叩き込む……いや、教えたのだ。
「七海ちゃん、また同じクラスだね、よろしくね」
「こちらこそ!」
七海ちゃんとはなぜか同じクラスになる率が高いな。これは腐れ縁ってやつなのか?ちょっと憧れていたやつだけどついに私もそれを体験している!
「お、与謝峰さんとも初めて同じクラスだね」
「ん?」
私は思わず話しかけてきた人を見た。鈴ちゃんの好きな人だよね?あ、もう一人いたからどっちだろう?
「あ、あれ?俺のことわからない?」
「えーと?」
「海斗って言ってわからないかなぁ……」
あれ、確か小学生の時の夏休みにすずちゃんと一緒によく探検してた、あの悪ガキくんか!なんか大きくなってカッコよくなりすぎで分からなかったよ。
「思い出したよ!とても大きくなったのね、小さい時の事で記憶が止まってるからわからなかったよ」
「し、親戚のおばさんみたいな反応をありがとう……」
「いやーかっこよくなっちゃって。お姉さんビックリだよ」
「あ、ありがとう……」
「琴音ちゃん、誰?紹介して」
「あ、こちら海斗くん。こっちが七海ちゃんね」
「あ、よろしくね!」
「お、おう、よろしく」
ちょっと七海ちゃんの目がハートマークになっている気がしたが、相手は幼馴染のかなり可愛い子だからなぁ。なかなか高校生活も色々とイベントが起きそうだ。
高校になると授業がものすごく難しくなるかと期待をしていたが、そんな事もなく、順調にステップアップする難しさになっていた。私は学校を流しつつ、家事と自分の勉強とアプリ開発の方に労力を費やす様になっていた。
鈴ちゃんが楽しそうに恋愛と言うか男友達付き合いをしているのを見ていると、恋愛とか良いなーとか思ったりした。気がついたら七海ちゃんにも彼氏ができていたりと、高校生にもなると色々変わって行くものなのね。私には出来ない事と思うとちょっと寂しくなった。
パパの三回忌を迎えた。日々が忙しすぎて段々と振り返る事が無くなってきた。今でもあの時に私が魔力を使える状態だったらな、とか、邪神の残滓が実は気のせいで、魔法使っても大丈夫でした……なんて妄想を思わずしてしまう。
家族も今の生活に慣れてきたので、突然泣いたり不安がるようなことが無くなって来ていた。ただ、樹も碧も2年も経って色々と成長し自我がかなり目覚めて来ていたので今までのいい子ちゃんでは無くなって来ている。良くも悪くも子供らしさが戻ってきたので良い事なのかもね。
ママも仕事の方に集中してもらって、家の事は私がほぼ全部やっている状態になった。早く弟と妹が成長しないかな……と思ってしまったりする。
そう言えば1周忌の時も掃除していたらノートが降って来たんだっけ?今回は何が降ってくるのかな?と思っていたら、机の突然引き出しが開いた。
ん~これはパパの霊でもいるのかな?と思って魔力視をやってみるが……わからなかった。魔力が普通に使えたらなぁ……
引き出しの中身には封筒に入ったご祝儀?が入っていた。ヘソクリに見えないでも無いけどランドセルを買えるくらいの額が入っていた。偶然だろうけどママとあおちゃん喜んでくれそうだな。
「ありがとうね。パパ」
私にはどうやら見えないようだが、お礼を言わずにはいられなかった。
高校に入ると色々な学校行事を本気でやるのがこの国の文化の様で、体育祭や文化祭にもかなりの力を入れているようだった。祭りは好きだけどいかんせん家の家事をこなすと参加ができない。ちょっとだけクラスの催し物の手伝いをするくらいで。それでも普段交流のない人と喋ったり、共同で作業をするのは結構楽しかった。
「与謝峰さん、今日の打ち上げこれない?」
文化祭の後片付けをしていると海斗くんが私を誘ってくる。あれ?海斗くんって鈴ちゃんにベタぼれのはずなんだけどなんで?ちょっと周りに意識を集中すると、何人かの男子がソワソワしている。うーん。私なんて恋愛出来ないんだから他の子に行った方がいいと思うんだけどなぁ……
「ごめんね、今日は母親の仕事が長引きそうだから家帰って弟たちの面倒見ないと駄目なの。また誘ってね」
「おう、わかった。鈴香にも聞いてたけど大変なんだな……」
「うん。大変だけど可愛いから頑張れるよ」
「そう言うもんなのか」
「そう言うものです」
文化祭の帰り道、私は一人だった。
色々なイベント。恋愛。私には出来ないのかと残念で悲しい気分にはなったが、私はまだ生きられていて。私はまだこの人生を楽しめる。と無理でも考えてポジティブな意識への切り替えをした。
私は歩いている途中、突然無気力になって立ち止まってしまった。
思ったより心が疲れているのかと……自分でも意識してしまった。
パパが生きていれば慰めてもらえたのかな……
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