賢者 プログラマーになる
小学5年生になった。
私は色々と家事をこなしながらプログラムの勉強とゲームアプリづくりに熱中する。この時になると大手ゲーム会社からゲームを作る支援プログラムなどが無償で提供されていたので、その辺を色々使って自分一人でアプリを作ってみたりしていた。折角なので作ったものをパパにやってもらった。
「えっ、これ琴音がつくったの?」
「うん、支援プログラムを使ってやってみたの、動かしてみて」
「お、おお、なんかちゃんとしたゲームになっている」
スライムが家の小物を食べて大きくなり、最終的には町のサイズまで大きくなり一番を競うゲームだ。マルチプレイにはまだ対応していないけど、そちらも勉強すれば支援プログラムでなんとかなるみたい。パパも黙々とプレイして熱中し気味だから成功だろうか?
「面白いな……これ、売り物になりそうな……」
「うん、そうするつもり、一つ300円くらいで売ってみて薄利多売的な?」
「なるほど、スマホだったらワンコインくらいのノリで買ってくれそうだね」
「一応使っているデータも商用利用可能なものばかりだから問題ないはず」
「え、えっと理解が追い付かないけど、これで商売しても問題無い感じなのね」
「うん、あとはマルチプレイ対応にしてテストしたらリリースしてみようと思う」
「え、個人で出来るのか?そうなのか、パパも調べてみる」
「お願い、たぶん子供の私が売りに出す事は出来ないからパパの名前で出さないとだめでしょ」
「わかった、がんばってみるよ。本当は将来プログラマーになる勉強をするようにと思って言ったんだけど……それをはるかに超えちゃうのが琴音の凄いところだね」
「えへへっ」
そうしてマルチプレイ対応のアプリが出来て、父の頑張りもありスマホアプリに登録をしてみる。商売をするのに登録料とか年間手数料がかかったりするのはどこの世界も一緒だ。割と少額らしく、パパのお小遣いから捻出してくれるらしい。
「200本くらい売れるだけでも一応登録料とかは賄えるのか、僕もやってみるか……いや、無理だな、今からプログラムを覚えるのは無理そうだからそもそも不可能か……」
「パパが企画してくれれば私が作るよ。私のゲームも塊が転がるゲームのオマージュだから良いアイディアが欲しいわ」
「わかった、思いついたら企画してみるね」
パパも一応頑張って企画してくれたけど、イマイチパッとしたものが出てこなかった。いくらプログラムの腕を磨いても企画が無いと作れない。私は勉強がてら企画の勉強などもしていく必要が出てきた。ほんとこの世界はやる事が多い。楽しい世界だ。
初夏になると小学校での林間学校が始まった。
林間学校と行っても、林の中でキャンプをするわけじゃないのね……林の中にある施設に泊まる感じか……前世でリアルキャンプを経験してきた私にとっては、全部が用意されてる感があってすごくてなんかつまらない。なんか七海ちゃんと未菜ちゃんと遊んでるだけでいいや、もう。
「与謝峯さんなんかすごいな……」
「すごい包丁さばき……」
「琴音ちゃん、料理も出来たのね!」
「絵以外全部出来るなぁ……」
「むぅ……」
やっぱり絵はダメかぁ……頑張っているんだけどなぁ、と思いつつ野菜を刻む。林間学校では調理を自分たちでしなければいけないらしく、私たちは支給された材料を刻んで鍋に入れるだけ……に近いお手軽な料理、カレーを作る準備をしていた。普段から家事をしているのでこれくらいお手の物だ。過保護なのか大体の子は普段は家事を手伝わないらしい。この世界は本当に子供にとって楽な世界だ。
火をつけたりするのも先生がまわってきたり、ハイキングと言うか道が整備されすぎてて散歩としか思えない事をやったりしていた。要するに色々とぬる過ぎるのだ。
うーん、これならたまに週末にパパと二人で行っているキャンプの方が面白い。あっちならナイフで魚もさばけるし、火も起こして肉を焼けるし。空と土のにおいをかぎながら眠るのは何とも心地の良いものだ。こちらの世界には虫よけも物凄い進化しているから、ずいぶん楽なものだけど。
ただ、みんなで集まるキャンプファイアーのダンスなどは昔を思い出させてくれて楽しかった。皆で祭りのときこうやって火を囲って踊ったなぁ……お互い照れ合ってなかなか手をつなげなかった記憶などが蘇ってきた。キャンプファイヤーの火が消える時、柄にもなく寂しくなってしまった。
部屋に戻ると女子グループで恋バナが盛り上がっていた。七海ちゃんと未菜ちゃんにもちゃんと好きな人がもういるみたい。わたしだけ取り残されているが、好きになったところで私に出来る事は無い。ちょっと心の奥でズキっとしてまた寂しさを感じてしまった。人が楽しい感じなのを見て嫉妬してしまっているのかな?
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