賢者 金儲けを考える

 小学校4年生になった。


 小学4年生になるとまたママのお腹が大きくなってきた。待望の妹が出来るらしい。これで私は可愛い弟と妹と兄弟が2人になるのだ。


 私は可愛い弟と妹のために、自分でお金が稼げないか色々考えてみた。残念ながらこの世界の方が文明レベルが進んでいるため、私が知っている知識を利用しても儲ける事などは出来そうにない。かと言って頼みの綱の魔法は使う事が出来ない。困ったな、パパに聞いてみるか?


「ねえ、パパ、私もお金を稼ぎたい」

「え?なぜだい?一応、今の収入でもやっていける状態なんだけど……妹が出来ちゃったから心配になっちゃったのかい?」

「違うの、私、折角色々な知識とかあるから何か利用して稼げないかと思ったの」

「ああ、なるほど……かと言って、たしか文明レベルは日本より低くて魔法がある世界だったよね?」

「うん、だからすぐには思いつかないんだけど何かないかなと思って」

「魔法を使った錬金術!とか出来ると良いんだけど、中世くらいと比べると……あ、琴音、琴音の世界にあってこの世界に無いものを作ればいいんだよ」

「うーん、魔法込みじゃないと無いな……魔法石もないし、魔法陣書いても魔力いるし、魔獣の素材もないし……」

「ほんとにファンタジーな世界なんだね、でもそれだとやっぱりこっちでやれる事なさそうだね……」

「呪いさえ無ければ……」

「残念だねぇ」

「あ、私、動物と会話出来るわ」

「えっ!本当かい?」

「魔族は生まれつき動物と会話出来るの、それってレアな能力?」

「もちろん……あー、どうだろ」

「何か思いついたの?」

「獣医とか、馬に乗る職業……とか、動物を使った職業って難しいかもな」

「難しいとは?」

「今すぐ儲からないって事だね、それにまだ動物と話せるか試してないんだろ?」

「うん」

「それじゃ今週末、パパとお馬さんがいる所に遊びに行くか」

「あれ?なんかパパ嬉しそうだね?」

「ふふっ、まぁいいじゃないか」


 結論から言うと、儲からなかった。馬との会話?念話はそれなりに通じたけど、いくら馬が元気で頑張ると言ったところで、その馬が一番を取れるわけでは無いのだ。よくスポーツ番組や格闘番組の前に選手が威勢のいい事を言うあれです。パパごめんなさい、今月のお小遣い使い切っちゃったね……反省します。帰ったらママにこっぴどく怒られたのは言うまでもない。



 先日の一攫千金の儲け話から一転してパパが真面目に話をして来た。


「琴音、確か魔法陣を書いてたとか、色々呪文を作ってたとか言ってたよね?」

「うん、前職は魔法研究者的な事をやっていたよ」

「だったら、プログラマーとかエンジニアをやってみると良いかもね」

「スマホとかゲームとかを動かすあれ?」

「うん、そうだ、ちょっと入門書やら入門ホームぺージ見繕ってあるから見てみて」

「うん、わかった」


 勧められるがまま、入門書やらネットを色々調べてみる。確かにこれ、魔法陣を組み込む作業にとても似ている。色々な命令文や条件分岐を駆使して目的の力を得る。私の当面の目標は決まった。


「パパ、ありがとう、私やってみるわ」

「うん、今から勉強していけばなんとかなるよ」


 私はさっそく何個かのアイディアがあったので、簡単なスマホのアプリを作成する事にした。スライムが食べ合うゲームでも作る事にした。パソコンなどは家計に余裕があるらしく、わたし専用のものを買ってもらった。大変ありがたいです。



 9月になると前回と同じようにママが産婦人科に行く。5日ほど入院になるらしい。今回は日中に出産する事になった上、とても安産だったらしく、私が鈴ちゃん家にお泊りと言う事もなかった。パパが樹のお迎えなどで大変だったみたいだが、家事は私がやっているので特に問題らしい問題も無かった。


「おかえりなさいママ!」

「ままぁ、おかえりなさい」

「ただいま、琴ちゃん、いっくん、げんきそうね」

「うわ!ちっちゃい!」

「可愛いなぁ……やっぱりいいなぁ」

「ふふっ、この子の名前はあおいよ。二人とも仲良くしてあげて可愛がってあげてね」

「うん!」

「もちろんよ、ママ、ほんとうにかわいいなぁ」


 それにしても生まれたての赤ちゃんは可愛い。ほんと可愛い。弟の樹も妹が小さくてかわいすぎてメロメロになっていた。二人して甘やかす事になるのだろうか。妹は幸せ者だ。

 4歳になった樹と生まれたての碧が並ぶと可愛いが並んでとてもかわいい。私は何を言っているんだろうか?



 妹が生まれる事によって、ママもパパも大変そうになったが私が頑張ってサポートする事にした。私も140cmくらいに成長し、力も強くなったのでお使いなどもかなりまとめて食材などを買う事が出来る。ミニ主婦みたいになってきて、私が家を守っている感じになってきた。

 

「琴ちゃん、いつもありがとう。だけど大丈夫?お勉強とかに専念したかったらいつでも言ってちょうだいね」

「大丈夫よママ、私、ママになれないから、丁度ママの気分が味わえてうれしいわ」

「え?……あ……そうだったわね……」


 ママが私をギュッと抱きしめてくれる。ちょっと恥ずかしいけど嬉しい。


「琴ちゃん、ありがとう」

「え、え?大丈夫よ。無理してるわけでは無くて本当に楽しいの」

「そう言ってもらえるとありがたいわ」


 ママがふと思案にふけ、はっと思いついた事を言う。


「琴ちゃん、お祓いとか受けるとどうなるの?効かないかな?」

「あ、そうかこの世にも魔力使える人いれば……でもこの呪いって、前世でも最強クラスの呪いなんだけど……やってみるだけやってみようかな」

「さ、最強クラス……望みが薄いけどやるだけやってみましょう」


 その週末、近所でお祓いで有名な神社にパパと行ってみる。お布施をはらっておまじないのようなものを私にする。その間私は周囲を魔力視をして観察する。うん、全く魔力や精霊力、神聖力の流れを感じない。ただの儀式っぽいなこれ……

 終わった後、パパが私に尋ねてくる。


「琴音、どうだった?」

「魔力とか全く感じないから、ただの儀式だったみたい。お布施もったいなかったかも」

「そうか、気にしないで良いよ。僕もこんなお祓いの儀式見るの初めてだから新鮮だったよ」

「ふふっ、ありがとう、パパ」


 パパにギュッと抱き着いてみたらパパが慌てて転びそうになった。自分の体が大きくなっていたのを忘れていた。パパの顔が真っ赤になっていた、恥ずかしいのだろうか?

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