転生者 後日談
時間は飛んで夏休みの最中。
俺たちがひと暴れした廃工場は流石に損害が激し過ぎて大変なことになっていたので、その後厳重に立ち入り禁止になってしまっていた。新たに探し出した別の魔力練習スポットで俺たちはのぞみちゃんを送り返す準備をしていた。
この数ヶ月の間にも俺たちには色々とあった。
あれから俺と与謝峰さんが付き合うことにしたと海斗に報告をしたら、うん!わかってたぜ!的な爽やかのりで返された。前世と同様に俺の行動は周りのみんなにはバレバレだったと言う事だろう。その後、鈴香にも「おめでとう」と目をキラキラ?涙目にさせながら言われた。与謝峰さんがその脇で困った顔をしていたのが印象に残っている。
与謝峰さんの家族達、特に妹さんがのぞみちゃんに懐いてしまって今日の別れが大変だったらしい。あちらの家族は異世界に理解があって面白いよな。こっちの家族はただ俺に彼女が出来たって情報だけだもんな。ああ、そうだ、あれから俺の家族からマッサージをせがまれるけど全員分をしっかりとやると結構魔力がしんどくなるようになっていた。使っても使っても減らない魔力の原因は女神様の恩恵だったんだなぁ……
魔力の練習も二人でやれるようになったのは良いけど、以前のようにあふれる魔力が無くなったので、俺のほうが魔力欠乏症になってしまったりして与謝峰さんに迷惑をかける事が多くなってしまった。俺が気絶して動けない時に帰りが深夜になってしまって彼女を送り届けた時、与謝峰ママからは全く心配されていなかったのが印象に残っている。ママさん、俺はもう娘さんを頂いて良いのでしょうか?
異世界転送自体はこれがいきなり本番と言う訳でもなく、事前に小さい魔法陣で試していて、向こうとのやりとりに成功しているので大丈夫だろう。やり取り中もお互いの近況を少しだけ知る事ができてうれしかった。
ただ、のぞみちゃんサイズの転送には大量の魔力がいるらしく、女神様の力が抜けた俺たちでは必要な魔力を溜めるのに3週間もかかってしまった。俺達はのぞみちゃんにこちらの世界のお土産を大量に持たせた。少しだけ文明の発展のヒントを軽く添えて……ズルは少しぐらいは許される……と思いたい。
「さてと、準備完了、あとは呪文を唱えて残った魔力を流すだけね」
「おっけ、それじゃのぞみちゃん、元気でな」
「レビィ、セレスお世話になりました」
与謝峯さんが呪文の詠唱を始め唱え終わる、二人でお互い目を合わせると、俺達は2人で魔法陣に最後の魔力を込める。魔法陣が光りだし、のぞみちゃんの姿が完全に光に包まれると共に消え去る。
「行っちゃったね」
「そうだね」
前世との繋がりが薄くなる気がして、どこか寂しい気持ちになった。与謝峰さんの方を見ると同じ様に感じているようだった。なんとなくそのまま二人で暫く立っていた。
「琴音……それじゃ、行こうか」
「うん……優斗くん」
なんとなく寂しい気持ちを隠すためなのか、お互い自然に手を繋いで歩きだした。
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