転生者 マッサージをしてみる

 風呂から上がりリビングに戻ると父ちゃんがぐったりとしてソファ―に突っ伏していた。


「おかえり」

「おー優……ただいま、父ちゃん疲れたぞ……」

「お疲れ……」

「背中マッサージしてよ、ぐりぐりっと……」

「え?別にいいよ」

「お、言ってみるもんだね」


 折角なので魔力を使った回復マッサージとか試してみるか……電気ビリビリするのかねぇ、やっぱり。父ちゃんだったら痛くても笑って許すだろう。肩のあたりを見様見真似でマッサージしながら魔力を流してみる、健康な状況をイメージしながらやるんだっけか……


「お、おおっ???あ、あったかい?」

「ん?あったかい?」


 ビックリした俺は思わず手を離して止めてしまう。


「え、ちょっと、もうちょっとやってよ、なんかすごく気持ちいい」

「……?わかった」


 試しに魔力感知をしてみる、与謝峰さんにあった黒いモヤなんかは無い様だ。マッサージをしていると相当気持ちいいらしく、「おっ、おっ」……とか変な声が聞こえる。ついでに魔力を目に集中させて父ちゃんの体を見てみる……肩、腰、内臓あたりと右手など流れが変に見えた。ついでにその辺も触って流れを良くするイメージで魔力を流す……


「……ぐぅ、ぐぅ……」


気持ちよかったのか、よほど疲れがたまっていたのが眠り始めてしまう。


「お父さんお疲れだったのねぇ……あ、優斗、食器運んで」

「OK」



 夕ご飯を家族で食べていると、父ちゃんからはマッサージ師になれ!とか言われちゃうし、そんなに良ければ……と母ちゃんにも後でやることになった。妹はフーンといった反応だった。食事中も魔力感知を使って家族を観察してみる。母ちゃんの内臓と腰辺たりの流れが悪いのがわかった。妹はまるで悪いところが無く健康そのものだった。これは勉強して医者になるか?……とも思ったが、さすがにうちの経済状況と凡人の俺の頭ではちょっと無理かな……確かこの世界の医者になるにはトップクラスの頭が無いとダメだったような?

 食後、母ちゃんにも同じようにマッサージをしてみると父ちゃんと同じ反応だった。余り子供としては聞きたくない母ちゃんのやや色っぽい声を聞いた後、気持ちよすぎて眠るところまで完全に同じだった。眠ってから身体の悪い流れもついでに良い流れにしておいた。二人ともいつもお疲れ様です。


 俺は部屋に戻ってから落ち着いて色々と情報を整理してみる。まず、俺が他人に魔力を流すと全員がビリビリしてしまうわけではない。両親のように気持ちいい状態になる場合もある。

 魔力感知では他人の魔力?の流れが見えて悪いところなど発見が出来る。魔力を使って悪い流れなどを良くなれーと、身体の良い状態をイメージしながら魔力を流すことで治すことが出来る。与謝峰さんの様に黒いモヤ?の様なものは今のところ他の人からは見えたことが無い。なにかあるのだろうか?スマホに何時もこの時間には来ている着信は無くちょっと寂しいと思いつつベッドに横になると疲れていたのか気が付いたら眠りについていた。



 翌日の午前は市営のコートでサッカーの試合があった。学校の同好会メンバーが集まっての草サッカーだけども……相手はお腹の出た人もちらほらいる社会人チームだったが、経験者が多くなかなか強かった。が、高校生ならではの体力と若さで押し切りギリギリ勝てた。やっぱりサッカーは面白いなぁ。プレイ中も相手からもトラップ超上手い!とか褒められてしまった。プレイ中に世界がスローモーションの様に時々見えるのはずるいよな……

 ついでに魔力感知でお腹ポッコリの社会人を見てみたりした。魔力感知で体の悪いところが見えるのは大体10メートル以内みたいで離れすぎると気配だけって感じだった。痩せている人は大体良い魔力の流れに見え、太っている人は内臓の辺たりに悪い流れが見えた。太っている人の方が体が悪くなるはずだから魔力感知の性能はしっかりと働いているね。俺の中で考えがまとまると、ふとスマホを見る……着信無しかぁ……


「優斗、朝からスマホを気にしすぎじゃね?」

「え?……そう?」


 確かに休みのたびに着信チェックしてたかも……海斗がちょっと心配そうな顔をする。


「返信がなかなか来ない感じか?」

「あ……俺から送って無いかも……」

「えっ?」

「いつもグイグイ来る感じだったからなぁ」

「そうか……」


 海斗がなんかわかったかのようにウンウン頷く。俺はさっそく与謝峰さんにメッセージを送る。


【今日の午後は暇?練習しようかと思う】


ちょっと間を置いてから連絡が入る。


【今、家族が大変な状態、今日無理、ごめんね】


 なんかちょっと寂しい気分になった。与謝峰さんにしては変な文章だな、相当大変な事になっているのだろうか?今日は一人で練習かぁ……面白くなさそうだなぁ。


「なんか見るからにがっかり顔だな……」

「今日は忙しいみたいだな」

「そうか……」


 しょうがないので一人で廃工場に行って魔法の練習をした。なんか一人だとつまらないなぁ……とりあえず一通りの魔力操作の練習をしたが、前世の記憶も戻る気配無かったのさっさと家に帰った。

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