転生者 噂になってしまう

 中間テストの期間は異世界がらみの事は特に進展もなく、ひたすら勉強の日々。前世の記憶の確認をしたら現実の記憶に影響が……と可能性を提示されたおかげでビックリするくらい勉強が捗った。与謝峰さんとは異世界話と言うよりも現実の俺の先生と化している。だって聞いたらすぐ答えが返ってくるんだもん、しかも優しい解説付きで。やっぱり頭がいいね。それと、記憶が戻ったおかげで効率の良い暗記の仕方を覚えたせいか、思った以上の成績を出せそうだ。



 中間テスト最終日、最後のテストも終わり気力を使い果たした俺は、机に突っ伏してだらけていた……あーこれで心置きなく魔法の実験ができる……


「さぁ、遊びに行くか」

「たまには駅前に繰り出そう」


 海斗と鈴香のコンビが俺の席に誘いに来る。そう言えばテスト後に遊ぼうって話だったか?二人の仲の進展?修復のためにも行くしかないかな?


「お、おう……テンション高いな」


 ちらっと与謝峰さんの方を見る、テストの時は席が近くなるんだよね……スマホを見ていた与謝峰さんとばっちりと目があってしまう。


「お、こっちゃんも行くぅ?」

「んー今日は行けるかな」

「おお、めずらしいな」

「今日は母さん定時で帰ってくるから大丈夫だって」

「兄弟の面倒見るのも大変だね」

「んじゃ行くか」


 4人で駅前に来てから気が付いたのだが、バイトをしている鈴香を除いて財布の中身が寂しい状態だったのでスポーツ遊戯施設の3時間パックで遊ぶことになった。学割が効いてもそれなりに高いんだよね。割りと体を動かす事が得意な俺たちに余裕で付いてくる与謝峰さん。勉強だけじゃなかったんだねぇ……はしゃぐ姿もかわいいなぁ……最近髪がぼさぼさじゃ無くなって来て、綺麗になった気がする。


 途中、鈴香がちょっとお手洗いにと与謝峰さんを連行して行ってしまった。海斗と二人っきりになるとちょっとソワソワした感じで海斗が話しかけてきた。


「な、なぁ、優斗、与謝峰さんと付き合ってるのか?」

「へ?……んー確かに最近仲良くしてる感じだけど……」

「結構、噂になってるぞ……」

「まじか……」


 スマホのやり取りは分かるか分けないだろうから、ちょくちょく会っていたアレかなぁ……目撃されていたのか……どう答えればいいんだろ?異世界がらみを伏せればいいか……あ、異世界がらみの情報を抜くと説明が上手く出来ないような?困ったな、与謝峰さんに相談したい……


「付き合ってはいないよ、勉強教えてもらったり、ちょっと色々相談に乗ってもらったりしている感じ。頭が良くて色々なやり方考えてくれるから助かってるんだ」

「ん??あれ?そんなんなのか?……噂はやっぱり噂かぁ、二人で公園デートしてるところ見たとか……二人で楽しそうにコンビニで話してたとか」

「あ……全部、本当かも……二人で行ってたわ」


 客観的に見たら、人目を忍んで落ちあう二人……って感じだよなぁ……与謝峰さんに迷惑かけちゃったなこりゃ。察しの良いはずの海斗もどっちなんだ?って顔で困惑してるわ……


「ちょっとウキウキして周りが見えてなかったかも……気を付けるわ」

(魔法の練習が面白すぎて周りが見えていなかったなぁ)

「??お、おう?」


 さらに海斗が困惑した感じになる……あれだ、この辺の言い訳なり、なんかいい感じでなんとかするのも与謝峰さん任せだな……魔法使えるのにちょっとテンション上がり過ぎてたな……


 しばらくすると、鈴香と与謝峰さんが帰ってきた。あっちも似たような会話してたんだろうか?ちょっと気になる。鈴香と与謝峰さんの様子を見る限りはいつも通りに見える。その後はいつもと変わらない感じで4人で一通りのアトラクションを楽しんだ。途中から鈴香のテンションが上がったり下がったりなんか変な感じになっていたが、大丈夫だろうか?

 

 遊戯施設を出たタイミングで俺は与謝峰さんに声をかける。


「ちょっといいか?」

「……うん」


 なんかお互いに気恥ずかしい感じだ……

海斗と鈴香は俺たちに気を使ったのかちょっと距離を取って二人で話し始めていた。


「なんかごめん、噂になってたみたいだね」

「うん、俺も聞いた、結構見られてたんだね」

「ちょっと私が浮かれすぎてたかも…………」

「俺の方が浮かれてたかも……」

「……」

「……」


 思わず見つめ合ってしまい、お互い軽く笑いだす。与謝峰さんが離れていった二人をちらっと見る。


「ねぇ、ほんと鈴ちゃんって海斗君と相思相愛なの?」

「え?どう見てもそうだろ?」

「若干……と言うよりかなり疑惑だよ……信じて色々話をしたらなんか鈴ちゃんちょっと様子が変になっちゃったよ……」

「確かに変なテンションだったな……」

「それで、これからどうするの?」

「うーん、上手に隠しながら色々やる?俺は別に噂とかどうでもいいんだけど……与謝峰さんが困るだろ?」

「……私も別に……だけど、上手に隠しながら……上手く行くのかなぁ……」


 与謝峰さんが若干照れた感じになる。海斗と鈴香もこっちをちらちら見ながら会話をしてる。ああ、今の様子見て色々思うだろうなぁ……


「一旦持ち帰って考えましょうか」

「んだね、この場で考えても良い案でなさそうだね」


 それから途中で女子二人と別れ、海斗と二人で家に帰る。海斗が悟ったような晴れ晴れした顔で言った。


「いろいろ分かった気がする、俺はまったりと見守るよ」

「え?なにを?」

「んーなんか色々話がかみ合ってない様な……」


 海斗は良くわからない困惑した表情をしていた。お互いどうなってんの?って顔になっていたと思う。



 その後、与謝峰さんからのメッセージが無かった、色々プランを考えてくれているんだろうか?ちょっと不安になりつつも風呂に入る。明日の休日は久々にサッカーの試合か……午後から与謝峰さんに会えるだろうか?明日連絡してみよう。

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