転生者 記憶の整理をしてみる
鈴香と与謝峰さん二人と世間話をしながら学校につくと、たしかにギリギリな感じで学校に着いた。あのくらいゆっくりでも余裕なんだなぁ……何時も丁度よいと思うのは学校に着いてからみんなとダベってるからか……
「おっ、優斗!間に合ったのか」
「ああ、かなりのスピードで走ってきたよ」
「その割には汗かいてないな?」
「あれ?ホントだ」
俺は自分の体を思わずチェックしてしまう?なんでだ、全然汗をかいてない。魔力ブーストのおかげか?後で実験してみないとな……
「お、鈴香おはよう!」
「おはよー海斗元気だな~」
鈴香と海斗は小学生のサッカークラブからの友人で仲が良い。何となくいつもつるんでしまう。小学生時代は3人共サッカーが上手い方でかなり試合で活躍したくらいだ。女性ながら鈴香は本当に運動神経が良くてサッカーが上手だった。
ホームルームも終わると、俺は授業中も授業そっちのけで転生前の記憶を思い出し色々考えてみた。残念ながら記憶が完璧じゃなくておぼろげな個所が多いが、現代である日本と比べると、文明のレベルが全然違い電気もガスも車のない明治時代前の世界だった。かと言って地理や歴史にそこまで詳しく無い俺でもこの世界にある場所では無い、異質な全くの別世界と言うことだけは分かった。
特に違うのは生活で、転生前の俺は魔力を使って戦闘行為や日常生活を送っていたっぽい。現代とはかけ離れた生活だ。うーん、魔法がこの世界に歴史上あった事ってあるのだろうか?聞いた事がないな?歴史をちゃんと勉強していたら分かるものなのだろうか?それすら謎だ。
「
先生が俺を指名したみたいだか記憶の整理に没頭している俺は全く気が付かない。
後ろの席のクラスメイトが椅子を蹴って教えてくれる。何事かと周りを見回して自分が指名されたことに気がつく。
「あれ?あ、わかりません、聞いていませんでした」
「正直なのはよろしいぃー。が?授業中は集中よ、集中ぅ」
クラスがどっと沸く。いつもならオーバーアクションで戯ける俺も記憶の整理が追いつかず頭がぼーっとしてしまい無反応に。いつもと違う様子に周りがあれっ?といった感じになる。
「おい、優斗、どうしたんだよ今日は?ずっと上の空って感じだな」
昼食の時間になると親友の海斗がご飯を食べながらも完全に上の空の俺に話しかけてくる。いつもキラキラした笑顔だな、海斗は。さすがイケメン。
「ああ、今朝な、ものすごい夢を見てだな、頭がまわらないんだよ」
「いつも寝起きがいいのに起きられないの珍しいもんなぁ、昨日のチャンピオンシップでも見て寝不足なだけかと思ったよ」
「あー録画でみるわ、あの時間に起きてるの辛いわ……」
大好きなサッカーの試合結果が気にならないくらい、朝の夢……転生前の記憶が衝撃的だった。
「なぁ、あーっと……例えば戦国時代の戦争の夢と見たことある?」
「んー無いなぁ……変な夢見てたんだなぁ」
「だよなぁ……」
さすがに剣と魔法が存在する世界の話をする訳にもいかないので、現実世界で似たような適当な話をしておいた。戦国時代が一番近い……よな?
「あれじゃない?武士の生まれ変わりだったりね。んーでも優斗みたいな人生を達観した キャラだったらあり得るかぁ?」
「輪廻転生ってやつね」
「TVでやってたなぁ、前世は戦闘機のパイロットだったとか?」
「あ~俺も見たかも。……え?俺、達観キャラなの?」
「リアクション今か。良くふざけるけどってのが付くけど、女子達がそう言ってたよ、おっさんくさい時があるって」
「マジか……今度からちょっとはしゃいだ感じにするか?」
「今更無理じゃない?」
「んだよなぁ……」
昼飯の弁当を食べながら転生前についての記憶を整理してみる。割とあやふやだが色々と思い出せる。具体的な仕事は何をやってたとか、どんな食べ物を食べてどんな道具を使って生活を送っていたかくらいは。
問題は思い出せる範囲がことさら狭く、転生前の名前やら、転生したであろう死ぬ直前の記憶、歳を取ってからの記憶が殆ど無い。その代わり若い駆け出しの頃の記憶は、割かし思い出せる事がわかった。
海斗が、思案にふけて自分の世界に入っている俺に飽きれた感じで話しかけてきた。
「心ここに在らずって感じだねぇ?」
「あ、すまん。今日の同好会休むわ」
「おけ、みんなに伝えとくわ」
こちらの世界とどう考えても違うあちらの世界。朝に発動してしまったと思われる魔力による脚力の強化。よみがえった記憶は本物の確率が非常に高いのがわかったので、確認のためにも試してみる事は山の様にあった。何せ魔力と言うこの世界では未知の力を使えるんだから。これから非常に面白い事になりそうだ。
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