現代転生 どうやら異世界が前世だったみたいです

藤 明

異世界人の現代転生

現代転生・表 異世界人・現代に転生するが記憶が完全ではないようです

転生者 記憶を取り戻す?

ある晴れ渡った澄み切った天気の朝。

小鳥のさえずりとともに目覚ましのアラーム音が遠くに聞こえる。

俺はもう朝かと重たい頭を起動させる。

俺はうっすらと目を開けると、そこには見慣れない天井があった……?


「はっ! えっ? ここどこ?」


俺は驚いて半身を慌てて起こす。あれ?よく考えると、違う……見慣れ過ぎた天井だ……俺の頭がもの凄く混乱する。よくある白塗りの壁紙が綺麗にしわもなく張られた天井、よくある郊外の一戸建て住宅の一室だ。なんでそう思ったんだ俺は? いつも見慣れているじゃないか。あ、でも他にも違う天井をよく見ていた気がする。俺の頭の中には古めかしい木と石で出来た全く違う文明の部屋の風景が浮かぶ……何だこの妙な感覚は?


あ……そうか、俺、思い出したんだ。当たり前の事が当たり前じゃないと思える事が俺の頭の中で起きた。いや、突然起きてしまった。


俺は前世の記憶を思い出してしまったのだ……俺の生まれ変わる前の記憶を??なにこれ? あれ? 俺?? 今は誰? なんか頭の回転がおかしい……


「……あれっ!? あれ? ん~???」



思い出した情報量が余りに多く、あまりに突然すぎる事に頭がショートした俺は、辺りを見回し、スマホを確認すると、スマホの目覚ましアラームのスヌーズをオフにして……


ゆっくりと体を横たえて布団を体にかけてから……また寝た。

……おそらく夢だろう。いや~。やけにリアルな夢だった。映画顔負けだわ、はぁ、やれやれだわ。今日は平日だから学校に行かないとな……



俺は再び気持ち良い夢の中へとまどろんでいく……





「あれ? ちょっと優斗! まだ寝てるの? 早く起きなさい! 海斗くんもう来てるわよ!」


母ちゃんの慌てた大きな声で起こされると、俺は部屋の時計を寝ぼけながら見る。それは母ちゃんが慌てるわけだと納得する、今から準備をすると遅刻しそうなくらいの時間になっていた。海斗に悪いので先に行ってもらう事にするか。


「……あー、今起きた! 先行っててもらって!」


取り合えず慌てて飛び起きて支度をしながら時計を見ると、もう既にかなりやばい時間だった。流石にいつも通りに準備をすると完全にアウトか?など逆算しながら準備を進めて行く。


「え? 優斗まだ寝てたんですか? めずらしいっすね」

「そうなのよぉ、いつもは勝手に起きるから油断しちゃったわ、あの子、夜なにしてるのかしらね」

「あー昨日はサッカーの中継あったから、あれかなぁ?」

「あ、海斗くん、間に合いそうに無いから行っちゃってだって」

「わかりました。それじゃおばさん」

「はい、行ってらっしゃい」


母ちゃんと海斗との会話を遠くに聞きながら、学校に間に合わせるためにも寝癖をなおし、最低限の身支度を終えて朝ごはんを食べずに急いで玄関に向かうとする。準備をしながらも冷静な俺は昼まで腹がもつか心配になったがしかたない。玄関で靴ひもを急いで結んでいると、後ろから会社に行く準備を終えた母ちゃんの声が聞こえる。


「ちょっと、優斗、菓子パンくらいもっていきなさい」


母ちゃんが、菓子パンの袋を俺に渡してくる。俺はそれをバッグに詰めて急いで支度をする。


「お、あんがと、いってきます」

「いってらっしゃい、ちょっと急ぎなさいよ、あ、車に気を付けて!」




俺は家を出て遅れを取り戻すため小走りで学校に向かう。

途中で今朝の夢の事を色々考えたが、戻った記憶なのか夢なのか、それが現実なのかは余りに突拍子もないものだったので、よくわからなかった。ただ、あまりにリアル過ぎで夢とも思えなかった。


(そう言えば足に魔力を流して早く走るなんてのをやっていたな……)


ふと夢の記憶を頼りに試しに足に魔力を込めてみると、突然、体に熱い力の流れが走ったかと思うと、恐ろしい程の踏み込みの力が足に伝わりもの凄い加速が加わった。俺はびっくりしたが、体は突然の加速に驚く事なく自動的に、転ばない様に思い出した記憶が勝手に制御してくれているようだ。体が軽く飛ぶ様に走れる! なんだこの速度は!! 楽しいぞ! と思ったら曲がり角にあるガードレールが予想より早く近づいてきた。



「ちょっ! これやばい!」


かなりの勢いでガードレールを蹴って壁走りした後、慌てて魔力のイメージをやめて止まろうとすると案の定速度が出過ぎていて壮大につんのめった。久々の運動会に出てハッスルするお父さんの様に転びそうになりながらなんとか転ばずに停止する。と、同時に偶然に目の前に居合わせた女子高生2人とばっちりと目が合ってしまう。



「……ええっ? 高2にもなってなにやってんの? 小学生?」


幼馴染の鈴香がひややかな目をしながらからかってきた。鈴香はスポーツ万能でショートカットのに合う活発な子で……ってほんと俺をいじるのが大好きな子だなぁ。


「あーっと……久々に寝坊して本気走りしたらずっこけちまったよ。ははっ」

「そう?もう時間なら大丈夫よ、私らいつもギリギリ間に合うから。ん?」


鈴香が隣のクラスメイトの与謝峰よさみねさんに、目配せをして同意を取ろうとしたところ……なんだか与謝峰さんの様子がおかしかった。


目を見開いたまま固まっていて、オーバーな演技で受けを狙っている訳では無く、素で驚いていたようだった。鈴香が肘で軽く小突くと、やっと気がついた様で慌てて取り繕う様に眼鏡に手をやり、やや早口でまくし立てるように話し始めた。



「……あー物凄い速さで走ってくるからビックリしちゃったよ。ほんとオリンピック選手みたいだったよ。陸上部だったっけ? そもそも、あんなに人って速く走れたっけ?」

「ゔっ?」



確かに最初から見られていたら、あまりの加速力とスピードで若干人間を辞めているくらいに見えるだろうなぁと言う自覚はあった。沢山の人目がある町中で出すスピードじゃなかった。次からは気をつけないとな……


「……まぁ、頑張っちゃったからね」

「んな訳ないでしょ、うちの学校にはオリンピックどころか全国区の選手も居ないんだから。あ、立ち止まらないで歩かないと、さすがに遅れるよ」


鈴香に呆れた感じで促されると俺は遅れない様に足早に歩き始めた。与謝峰さんからの目線が気になる。どうやら訝しがられているようだ。与謝峰さんはクラスでも人気のある黒髪ロングのメガネ美人なんだけど……たまにメガネがキラッと光って今はなんだか怖い。とりあえず昨日のニュースの話題でも出してごまかしておくか……



(今度から気をつけないとな……と、言うか前世の記憶はマジだったのか?……)



俺はこの能力を試したくて仕方が無くなった。放課後が楽しみすぎる。早く学校終わらないかなぁ……まぁ、まだ学校についてないわけだけど……

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