鬼神

「ウソだろ...」

 阿修羅はすぐさま標的を俺に切り替え、殴りかかってくる。


「クソッ、獣化・ヒグマ!」

 こうなったら大怪我覚悟でタイマン張るしかないようだ。出会ったばかりとはいえ、また人が1人、目の前で死んだ。このクソ悪魔共が。ぶっ殺してやる。


 阿修羅の3つの拳も、ヒグマなら受けられる。とはいえ、阿修羅には6本腕がある。防戦一方になるのは必至であった。隙を見てヒグマの重い一撃を入れるしか勝機はない。


「なにっ!?」

 ずっと殴りかかってきた阿修羅が急に腕を伸ばし、体に絡めてくる。5本の腕で拘束し、防御出来ないようにする気だ。

 1本目の腕を咄嗟に振り払う。が、抵抗虚しく完璧に拘束されてしまった。


「かくなる上は!獣化・ツノトカゲ!!」

 ツノトカゲ、その能力は極めて異質だ。目から敵を混乱させる血を噴射するのである。だが、その血は全身の血液の¹∕₃を消費する、諸刃の剣だ。


 だが、この状況!俺を拘束するために5本の腕を使い、かつ至近距離で互いに動けないという状況!これなら必中!


 ブシュゥゥゥゥ

「「「□&○%$■☆♭*!?」」」

 阿修羅の拘束が解かれ、動きが鈍る。

「再獣化!羆ァ!」

 さながらダガーナイフのような爪5本を備えた、ヘビー級ボクサー5人分とも言われる腕力から渾身の正拳突きを放つ。


「ハァハァ...勝った...」

 鬼神の名を冠する阿修羅のような見た目のくせに搦手からめてを使いやがって...そして、その搦手が敗北に直結するとは皮肉だな...


 C地区に向かいたいところだが、場所が分からない。とりあえず通信機で迎えを呼ぼう...。

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