初戦

 6本の腕に3つの首。さながら阿修羅のような風貌だ。俺が捜し求めてる奴じゃないな。だが、顔が無い。


「こいつ...顔が無いんだが...」


「そうだ。悪魔には基本顔はない。のっぺらぼうだな。」


 悪魔がこちらに気づいたようだ。刹那。とんでもないスピードで俺に右腕3本を振りかぶりながら走ってくる。咄嗟に阿修羅に背を向け叫んだ。

「獣化・ヤマアラシ!」

 背中に鋭い針が生え、物理攻撃を防ぐ。ライオンすら恐れるというその針に、阿修羅も距離をとった。


「身体強化・腕ッ!」

 セロが阿修羅の背後から殴りかかるが、難なく避けられてしまう。


「こいつ、三つ首だから死角がねぇのか。目はねぇくせによ!ジョウッ、なにか飛び道具はねぇのか!」


「攻撃できるものは無いです!」

 またも阿修羅は近づいてくる。無駄だということを学ばないのか。


「「「○×!」」」


 ッ!阿修羅が手の平から腕をどんどんと生やし、針のない正面を攻撃しようとしてきた。咄嗟に丸まったから良かったものの、大分危なかった。


「ジョウ!なにか足の速い奴に変化してらあのビルの角に誘導してくれ!俺が先回りして、阿修羅の不意をつく!」


 なかなかいい作戦だ。筋肉だけじゃないようだ。


「獣化・ノウサギ!」

 逃げ足において兎の右に出るものはいない。ましてや俺のサイズになれば尚更だ。


「来い!阿修羅!」

 阿修羅はその足の速さと腕を無限に 生やし、伸ばしながら追ってくる。だが、兎の巧みなフットワークの前では問題にならない。そして、阿修羅は俺を捕まえるのに夢中だ。これはイケるぞ!


「オラァ!!」

 セロの会心の一撃がクリーンヒット。阿修羅が動かなくなる。これは勝ったろう...。


「ふぅ。よくやったジョウ。これに勝てたのはお前のお陰だ。よし!C地区に向か...」


「ん?なんだよセロ隊長...え...」

 振り向くとそこには頭を握り潰されたセロと、2体目の阿修羅が立っていた。

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