入隊

「えー今日からお前たちのFCUとしての隊長となるセロだ。よろしくな!」


 随分と暑苦しい容姿と見た目どうりの話し方。

 僕の苦手な人種だ。急にFCUへの入隊要請が送られてきて、呼び出されたところへ来たらこれだ。やはり能力者そのものが少ない以上、入隊は強制か...


「早速だが自己紹介をしよう!何事もお互いを知ることが大切だ!まずは俺から。セロ・ストロス、41歳、趣味は筋トレ、能力は身体強化だ!速い、強い、分かりやすいの三拍子揃ってる能力だぞ!好きな言葉は 成せばなる成さねば成らぬ何事も だ!いい言葉だよなぁ!よし、次はちょっと暗めのそこの君だ!」


 早速ご指名か...正直こういうのは少々苦手だがやらざるを得ないか。


「僕ですか...ジョウ・アニマ、19歳、能力は獣化です。獣なら基本なんでもなれます...悪魔を殺せるならなんでも大丈夫です...以上です。」


「つ、次は私っですよね。名前はシズ・アイムで、今年で17歳になりますっ。よ、よろしくお願いします!し、趣味は読書です。よく読むのはミステリーとか...かな。あっ、あと能力は熱線です。簡単に言えばビームです。はい。じゃ、じゃぁ次お姉ちゃん。」


「シズの姉のイレーネ・アイムと言う。年齢は20、能力は鉄操作、武器を作ったり壁を作ったり複雑じゃない鉄製のものならなんでも生成できるわ。趣味は喫茶店巡りとかね。よろしく頼むわ。」


「最後は俺か。タオン・クリース、29、能力は分身。文字通り、そのままだ。趣味とかは...あ〜特にねぇな。よろしく。」


 自己紹介が一通り終わった。ビルの一室で横に長い机と椅子、そしてそれと向き合うようにして並ぶパイプ椅子の上で行われるそれは、さながら面接のようであった。


「よーし!分かってると思うが今のところFCUはここにいるメンバーだけだ。前のFCUメンバーはこの間の大規模発生で俺以外死んだ。いや、消えたと言う方が正しいな。まぁ詰まるところ、お前らは強制入隊って感じだ。人員不足解消にはこれしかないんだ。許してくれ。」


「...消えた?」タオンが反応する。


「ああ。世間には伏せられているが、能力者は能力を使いすぎると能力が暴走して、時空の狭間へ吸い込まれ姿を消す。これは最初に出現した悪魔の力だ。無論人々の中に能力者が現れたのもな。何が目的があるのかは知らんが、まぁ我らにも反撃のチャンスが与えられたことに喜ぶべきだろう。」


「ってことは、俺らもすぐ死ぬのかよ?なぁ?そんなことを強制しようとしてのかよ!?」


 タオンの反応ももっともだろう。僕は目的が悪魔殺しだから全然問題ないけど。


「そうだ。君たちは所詮使い捨て。俺も含めてな。そして、時空の狭間に消えた後の消息など掴めるはずもない。しかも、能力者が狭間に消えないと新たな能力者は生まれない。ずーっと地獄の自転車操業をこなさなきゃならんのさ。」


「俺はやんねぇぞ。早死には覚悟してたが、そんな死に方は御免だね。俺は降りる、降りるぞ!」


「残念だが、その場合は政府によって殺される。能力者が死なない限り、新たな能力者は生まれないのでな。先程も言ったが、君たちに選択の余地は無いんだよ。時空の狭間に消えるより殺された方がマシだってんなら仕方ねぇがな。」


「そ、その時空の狭間ってのは何なんでしょうか?」シズが問う。


「さぁな。そもそも俺らの能力のメカニズムも分かんねぇのに、時空云々が分かるわけねぇって話だわなぁ。まぁ研究者共はこぞって時空の狭間を調べてるが、期待せん方がいい。」


「で、でもその消えた人達はどうなッ」

「ジリリリッ テロンA地区に悪魔出現。直ちに急行せよ。繰り返す。テロンA地区───」


「この話はあとにするぞ。シズ・アイム。早速だが、初出勤だ。悪魔退治は俺らにしかできんからな。気合い入れて行くぞぉ!!」

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