ツインツイストドライブトライブ! 卓球ダブルス青春殺伐高校男児バチバチ炎獄血風劇
雨蕗空何(あまぶき・くうか)
最強ペア、解散そして再結成
第1話 最強ペア決裂
軽やかな打球音をすら残響にし、ピンポン玉は飛ぶ。
青色の卓球台、低く跳ねる白い玉の対空猶予時間は一秒にも満たない。
即応。ラケットの面を合わせる。高速の応酬。
汗が散り、蒸発して白く舞い上がりながら、男たち、ピンポン玉の往復、幾度と、幾度と、幾度と。
視界が白くスパークする。高みに登る感覚。針先のように垣間見えた隙に、打球を鋭く――
…………
……
◆
「ふざけるな
思い切り派手な音を立てて、ソルトは、
何事かと、上下階から踊り場へ視線が集まる。
男子二人。壁際に追いつめられる者と、その着崩した学ランにつかみかかる者。
「……悪かったとは思ってるよ、ペッパー」
つかまれる手もそのままに、ソルトはペッパーを、
ペッパーはなお、激昂した。
「悪かったとは、なんだ? 悪かったと思ってるから、卓球部を辞めることを、勘弁しろとでも?
ふざけるなッ!!」
叩きつけるように、つかんだ胸ぐらをさらに締め上げ、壁にソルトを押しつけた。
ギャラリーがざわめくが、普段は優等生然としたペッパーが、銀髪で一見ガラの悪いソルトを組み伏せるその迫力に、割って入れる者がいない。
「ふざけるな、ふざけるな、ふざけるなッ!!
ボクとのダブルスはどうなる!?
悪かったの一言だけであっさり解消できるほど、ボクらのペアは軽いものだったのか!?」
「最初に言っただろうが」
つかむ手を振り払い、ソルトは苦々しく言った。
「ここの卓球部に入ったのは、ホレた女がいるからだって。
そんで、フラれたんだよ、ソイツに。
居づらくって、卓球部を続けられるワケ、ねぇだろが」
ソルトは盗み見るように、ペッパーの顔を見た。
はたして、ペッパーは髪が逆立つかと思うほど、逆上した。
「その程度のことで、ボクとのダブルスを捨てるというのか!!」
「その程度ってなァ!!」
ソルトは怒鳴り返した。
「テメェが卓球に命かけてるみてぇに、オレだってこの恋に真剣だったんだよ!!
それをフラれて、同じ卓球部に居続けるなんて、気合いが入るワケねぇし、気まずくて居心地悪いに決まってるじゃねぇか……」
言いながら、ソルトは情けなさに顔をしかめ、語調は弱々しくなった。
ペッパーはソルトをにらみ下ろし、わなわなとふるえ、それから、吐き捨てるように言った。
「……もういい」
ソルトの胸をひとつ突いてから、ペッパーはきびすを返した。
「キミがそういうことなら、ボクは退部について何も言わない。
好きに去って、好きに腐っていくがいいさ」
階段を登った。
ギャラリーが道を開けた。
登りきって、ペッパーは一度立ち止まり、こぶしを握りしめて、振り返らぬまま言った。
「キミとの卓球を、楽しいと思っていたのは、ボクだけかッ……!」
ペッパーは去っていった。
ソルトは何も言わず、何もせず、ただそれを見上げていた。
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