第5話
翌日の朝
「ん?開かないな。」何が起ったのかすぐ分かった
あいつが外からドアを塞いでいる。子供の悪戯のように。
なぜか私はこの部屋にいるとパータンが変わってしまう。
何の感情もなく、ただ冷静に損得を計算するだけの性格になってくる。
今日も一万五千円を稼ぐためのバイトが私を待っているんだから、家を出てなければいけない。ドアが閉められても、飛び降ればいいだけのこと。
私が住んでるのは二階で、三、四メートルの高さだった。
やったことはないけど、興奮も恐怖も何も感じてない。万が一、足が挫いたり、骨が折れたとしても、近くのクリニックに行けば、5000円くらいで済むだろう、まだ時間あるし。
こう考えて私は躊躇いもなく二階から飛び下りた。
「ぎゃあ」
この瞬間、私は「やはりそうだな」と思った。
骨が折れるほどではないけど、腕を擦りむいた。
傷口から血が出て、痛みというものがどんどん私の脳内に伝わってくるが、感情は何も変わらない。
でも、やっぱりコンビニに行って絆創膏を買ったほうがいいかな。
コンビニ出た後、私は図書館に行った。
何にすればいいか、早く決めたほうがいい。
文学ー日本文学
選ぶのは難しいことだ、特に私にとって。
この時、昨日のお嬢さまの悲しそうな顔を思い出した。よく分からないけど、悲しい本を避けてしまった。
色々悩んだ後、「少女の港」という本に決めた、怖いこと悲しいということもなく、言葉も上品であの方にふさわしいと思ったから。
バスから降りてすぐ、大粒の雨が降ってきて、傘のない私は仕方なく走った。
腕も痛くなってきて、本当に大変なことになってきた。
二分ほど走ってやっと約束の時間にこの屋敷に着いた。一人の女性が傘を持って正門で立っているのを見えた。
その女性は私を見てすぐ私の方へきた。
え?千鶴さん?なんで?
昨日のことを思い出して、なんかこの人はちょっと苦手かもしれない。
「お嬢様はあんたが傘持ってないと思い、心配で私に指示したのよ、感謝しなさい。」
「ありがとうございます。まさかお嬢様が」
「勘違いするな。あんたにだけじゃないわよ、いつもこんなに慈悲深いのよ、あの方は」
千鶴はちょっと悲しそうな顔がしてこういった。
「私が持ちましょうか。」
「結構です。一応うちの仕事なので」
屋敷に入ると
「まずはシャワー浴びなさい、こんな無様な格好でお嬢様にみられたくないでしょう?」
「でも着替えは?」
「持ってくるわ、安心しなさい。」こう言って彼女は去った。
「ありがとうございます」
中に入るとなんか良い香りがして、気持ちがいい。
「千鶴さん、悪い人じゃないな。」
ここに泊またらいいな、思わずこう思った。
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