02
「あっはっはっはっはっ!」
「そんなに面白いか?」
腹を抱えていつまでも笑い続けているタカナシに、俺はウンザリしながら聞いた。ちなみに今の彼女は、俺の見慣れた……つまりは透明人間でもなんでもない『人間色』に戻っている。
「だって面白いよっ!さっきまで一緒に授業受けてたのに、私がいきなりユーレイになっちゃったって思ったんでしょ?理系メガネのくせに、非科学的!」
「待て、そこで何故メガネが出てくる。論理的じゃない」
俺がそう返しても、タカナシはケラケラと笑うばかりだ……
「それで、あの謎現象の説明はしてもらえるんだろうな?」
「うーん……あんな決定的瞬間、見られちゃったらね。ツクモくんなら、そもそも言いふらす友達もいなそうだし、ちゃんと話すよ」
何やら失礼なことを言われた気がするが、聞き流しておく。そして何故か屋上の床に正座したタカナシは、打って変わって真剣な表情で口を開いた。
「
「シレノメリアの事か。先天的に両足が結合した状態で生まれる」
「そっちじゃない!むしろ、よく知ってるね……そっちじゃなくて、まぁ俗称なんだけど」
彼女は俺をジッと見つめると、囁くような声で告げた。
「私ね、恋をすると泡になって消えちゃうんだ」
「………」
「……………」
俺は何とかその情報を頭で処理して、口を開いた。
「……それは、どういう原理なんだ」
「そんなの私が聞きたいわよっ!」
彼女の勢いに押されて、コクコクと頷いておく。
「症候群、と言うからには病気なんだろう。薬はあるのか?」
「身体が透けて消えちゃうんだよ?透明人間につける薬なんて、あるワケないじゃない?」
そう言われてみれば、確かにそうかもしれない。俺が勝手に頭を悩ませていると、タカナシが顔を近付けて、秘密を囁くみたいに声を低めた。
生きている、人間の匂いがする。少しの汗と、洗剤の匂い。
「でもね、本当は呪いなの」
タカナシが口にした突拍子もない言葉に目を見開くが、彼女の表情は至って真剣だった。
「お母さんが教えてくれたわ。悪い魔女が、遠い昔の祖先にかけた呪いなんだって」
「そんな、ファンタジーな……」
そう呟いてから、この発言が本人を前にして言うには、
「こんなにファンタジーな存在が目の前にいるのに?君みたいな、なんでも科学で説明つけないと気が済まない人間がいるから、症候群なんて病気扱いされるのよ」
「……悪かった。それじゃあ、どうしたら呪いは解けるんだ?」
俺が質問すると、彼女は『待ってました』と言わんばかりに、ニッコリと笑った。
「決まってるでしょ?お姫様の呪いを解くのは、王子様のキスしかないのよ」
俺は思わず目を瞬かせて、素朴な疑問を口にした。
「それ、色々と話が混じってないか?」
「え、ツッコむとこ、そこなの?」
戸惑いの表情を浮かべたタカナシに、俺は淡々と答えた。
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