第一章 お互いを知ること
出会いとは突然の出来事だと自分は思うんだ。初めての友達・先輩や後輩そして恋人が出来る事など様々ある。
深く深く関わりを持てば良い未来・悪い未来、その二つのルートが待っているだろう。
私もそうだ。「彼」との出会いの事。今でも覚えてるよ。
「君が皇来栖さん?」
来栖の名前を呼んでだ時は初対面だと思えない程テンションで声をかけたこと。
「はい、そうですが・・・。貴方は?」
「私は朧です。桐生朧よろしくね。」
これが私達の出会い、共通の友人に教えてもらい会いに行った。
第一印象は大人しいイメージで誰でも仲良く出来そうな人だなと思った。そして私は来栖とは仲良く出来ると確信か持てた。来栖は私の事、どう思っているか、今でも分からないままだ。
少しずつだけど友人としての距離が縮んできた頃だ。私が来栖の事を「友人」としてではなく、好きという気持ちを抱くようになったのは。あの時は誰かに心の穴を埋めてほしかっただけだったのにさ。
あの頃の私の心は崩壊していた。いや、崩壊しつつあったと言い換えるべきか。何をしでかすか分からない状態で時間を過ごす度に思うことは「死にたい」という言葉のみ。
「泣く意味ないのになんで涙って勝手に出てくるんだ?」
(もう枯れる程出したのに・・・。)
雨の日に、傘も差さずに泣きながら夜の街に行った。誰もいない場所に行きたいと思い彷徨い続け、その時に誰からか着信が来た。
友人からだ。
「おい、さっき雨の中傘差さずに歩いてたか。みんなして探してるぞ。」
「すまん、全く気が付かなった。」
雨の音でほとんど聞こえない友人たちからの着信。でも探してた?何故?
「今日、何かあったか?」
「ちょ、おま・・・今日は朧と飲むって話してただろ、最近お前様子おかしいから。」
「すまん、すっかり忘れてた。また改めてセッティングしてくれるか?」
今は誰にも会いたくない気分だ。あいつ以外は。
皆には心配をかけてしまったので連絡し、帰宅した。雨と一緒に流した涙も一時の感情も流して。疲れた。こんな世界にいる意味なんてあるのか・・・。
本当に馬鹿な世界だ。
(本当に申し訳無いことしてしまったな。)
ずぶ濡れの状態で帰宅しすぐにシャワーを浴びに脱衣所に向かった。服を脱いで自分の身体をふと見てしまう。
(またあの時を思い出すなぁ。まだ消えない傷をいったい何度繰り返すのか。)
幼い頃に興味本位で行ってしまった自傷行為が今でもやめらなく、今に至る。やめよう、やめようと何度も努力を行ってきたが結果、重度になる一方だ。
なんと哀れな姿なのか、家族にバレなくても友人達にバレて、何度も説教されたか。それでもやめられないのはもう依存症に近いのかもしれない。風呂場から出て身体や髪を乾かし服に着替え終わった時に一本の着信が来た。来栖からだ。
(今日は色んな人から連絡来るな、朧。)
出てくるなよ、こんな時に。
「来栖、どうしたの?貴方から連絡なんて珍しいね。」
「お前、俺に隠し事してるだろ?」
一瞬心臓に針が刺さる感覚に襲われた。鋭い言葉が来栖から言われると思っていなかった。
「隠し事?いつしたんだと言うんだ?」
(どの事で聴かれているんだ・・・。)
隠し通せるとは思ってない。一つは誰にもバレないようにしてるからだ。
『あいつ』のことは外には漏れていない『はず』だ。
「何の事か分からないな、来栖。」
「恍けるな、お前誰だ。朧じゃないだろ。」
一瞬凍りつく感覚を感じた。この感じ、バレているな。仕方ない。もう話すしかない。
来栖なら話しても問題ないだろう。
「いつから知っていた、『僕』の正体を。」
声の雰囲気が変わる。男性の低い声で、
「初めまして、来栖君。朧がお世話になってます。」
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