第6話 不気味な物件
別に幽霊とか怪異があったわけじゃないけど不気味な話。
私が小学2年頃のことだから今から20年以上前の事。当時は借家に住んでいたんだけど、いよいよマイホームを買う事になったらしくて色々と物件や土地を見て回っていた。
両親は田舎の静かな雰囲気が好きだったので大通りから外れた所を希望して土地や中古物件を見ていたんだけどその中に不気味な物件があった。
その日は仕事の都合かなんかで父は居なくて母と2人で物件巡りをしていた。
不動産屋に渡された地図を頼りに主要道路から側道に入りしばらく進んだ所にソレはあった。
周囲は林に囲まれ昼間でも薄暗く、どんよりとした空間が広がっている。
その中心には淀み濁った池、その横に佇む一軒の家があった。家の後には一本のデカイ松の木が存在感を主張していた。
一目見た感想は「廃寺」そんなイメージしか湧いてこなかった。
当時の私は一人っ子で両親共働きのいわゆる鍵っ子だった。両親の帰宅はだいたい18時〜19時で夕方帰宅したらその時間まで一人で留守番をしなければならない。ハッキリ言って嫌だった。こんな場所のこんな家でそんな日々送れる気がしない。
母も似たような感想だったらしく結局その家は外観を見ただけですぐに辞めた。
それから時は経ち最近の事だ。実家に帰省していた私は母と雑談してる中でふとその家の事を思い出して母に覚えているか尋ねた。
私は家のインパクトが強すぎたのと幼かったので場所とか全然覚えて無かったんだけど母はけっこう覚えていた。
「不動産屋もついてこなかったしアレは絶対なんかあったね。」
そう母は言っていた。
確かに鍵と地図だけ寄こして勝手に見てこいって普通はあんまり無い気がした。
その日は実家側の予定で昼過ぎには帰る事になってて午後から暇だったのでドライブがてらその家を探してみようと考え、母に場所を聞いていってみる事にした。20年以上前なので建物自体はもう無いかもしれないが池はあるだろうと思っていた。
細かい場所まではわからなかったが主要道路がわかれば曲がるポイントは田舎道なのでそう多くない。
マップで大体の見当をつけて向かう。
林の合間にある側道を見つけ進入する。
マップではこの辺りに他に道は無い、間違い無いはずだ。
入り少し進んだ所で私は停車した。
目の前の林に囲まれた道は金網で作られた扉で封鎖されていた。
脇に回れば歩いてなら通れそうだったがそうしようとは思わなかった。
その扉には木の板で作られ朱に塗られた50センチ程の鳥居が針金で固定されていたのだ。
それが異様な雰囲気を発していてその先にいく気を失わせていた。
近づいて見てみるとこちら側の面は褪せた朱色だったが、裏面は真っ黒に変色してしまっていた。
その時、暗い道の奥の草むらがガサガサと動くのが見えた。その音にビビった私はダッシュで車に乗り込み猛バックでその道から脱出した。
その日の夜に母に電話をして確認したが場所はやはり間違っていなかったみたいだった。
特に実害も無かったし幽霊とか見たわけでもないが、もしあそこに住んでいたらとかあんな場所を紹介した不動産屋とか金網と鳥居が設置された理由とか色々な意味で怖いと感じた不気味な出来事だった。
気にはなるが、もう調べてみようとは思わないな。
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