第3話 蓮の花
これは中学の時に転校してきた友人に聞いた話。
小学校の同級生に途中から不登校になった奴がいたらしい。とても花が好きな子で、教室でも良く花のイラストを描いたりしている子だった。
友人は仲が良く家が近かったからプリントとかを届けに行ってたんだって。
プリントを渡すときは母親に渡してた。会わせてはもらえなかった。それでも毎回、花の絵と「ありがとう」って書かれたメモを母親を通して貰ってたんだって。
しばらくしてその同級生は死んで、母親は逮捕された。
後から調べたらメモに描かれた花は蓮の花。花言葉は「救ってください」だった。
それから毎月、友人の元には蓮の花の描かれた紙が届くようになった。ある時はポストに、ある時はカバンの中に、ある時は自室の引出しの中に。
最初は信じてくれなかった親も月を重ねる毎にたまる紙と友人の必死な様子に紙を持ってお祓い等にいったらしいが効果は無かった。
そして、ついにダメ元で父方の祖父母がいる今の土地に自分だけ預けられる形で転校してきたのだという。
「それで、どうなったんだよ?」
私は友人に尋ねた。
「こっちに来てからは紙は届かなくなったよ。」
そう言って彼は笑った。
「実は今日がその同級生の命日なんだ。だから今日を乗り切れば、もう大丈夫な気がしてるんだ。」
それが彼との最後の会話だった。
彼は帰宅途中に交通事故で亡くなった。
彼の制服の胸ポケットには小さな白い花が沢山ついた花の絵が入っていたらしい。
たしか、桑の花だったかな。
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