第2話 地蔵の祟り
これは怖い話というか、私の懺悔の話。
小5の夏休みの時の話です。
友人のAと山の中の廃寺にいったんだ。
昼間だったし、肝試しとかじゃなく探検って感じだった。寺の裏手に見つけた獣道を進んだ所に1体のお地蔵様を見つけた。
周りは草がボーボーに生えてるのにお地蔵様の周りだけなんも生えてなくて不気味な存在感があって私は少しビビっていたが、それに気づいたAは強がってお地蔵様をペタペタと触ったり裏を覗いたりしていた。
でも特になんにもなくてつまらなかったのかAは
「つまんねーの」そう言ってお地蔵様を蹴ったんだ。
その瞬間、ゴトンッて乾いた音をたててお地蔵様の首が落ちた。
私はもちろん顔面蒼白、Aも流石にビビって
「あ、やべ」とか言ってオロオロしていた。
どーしようかと二人で顔を見合わせた瞬間に声が聞こえた。
「首、よこせ、、、」
どこから聞こえたのかわからなかったが確かに聞こえたんだ。
二人とも一瞬固まったけど直ぐにダッシュで来た道を逃げ帰ってその日は解散になった。
翌日、朝ごはんを食べていると家の電話が鳴り。対応していた母が血相変えてAが昨夜、急に頭痛を訴えて病院に運ばれ入院したと伝えてきた。
私は急いで病院に向かいAのお見舞いにいった。
Aは思ったより元気そうで検査の為に数日入院することになった。夏休みが数日パァだと愚痴っていたが、A母がジュースを買いに病室を出ていった途端に神妙な顔になりこう言った。
「昨日の夜にさ、夢に地蔵が出てきたんだ」
Aによると昨夜病室で寝ていると夢に首が無いお地蔵様があらわれて「首、よこせ」と何度も繰り返していたと言うのだ。
「やっぱり俺、呪われたのかな?」
そう言うAに私は、
「気にし過ぎだって」
と言うしかなかったが、私もあの時に声を聞いていたので内心は祟りなんじゃないかって思っていた。
「なぁ、あの地蔵の首を直してきてくれないか?」
Aは私に懇願してきた。自分は病院から出れないから自分の代わりにお地蔵様の首を戻して謝って来て欲しい。自分も退院したら謝りにいくから頼むと。
正直嫌だった、蹴ったのはAだし私は夢も見ていない。下手に触りにいって私まで祟られるのはごめんだった。
私が返事をする前にA母と看護婦さんが病室に入ってきて、Aは検査の為に連れていかれてしまった。
病室を出る時にAはもう一度「なぁ、頼むよ。」そう言っていた。
結局その日は行くか悩んでいる内に夕方になってしまい、お地蔵様の所にはいけなかった。
ベッドで横になりながら私は考えていた。
祟りはもちろん怖いし、呪われたってAの自業自得だ。でも、Aは私の友達だ。こんな時に助けるのが友情なんじゃないかって。
「明日、いってみよう。ちゃんと謝れば祟られたりもしないはず、、、」
そう考えて私は眠りについた。
翌朝朝食を食べた私はすぐに廃寺へ向かった。獣道を進みお地蔵様の元へ行くと、首の無いお地蔵様が佇んでいた。私は首を探して周りの草むらを掻き分ける。
「なんで!?ない!!」
たしかにあの時はお地蔵様の足元あたりに落ちていたはずの首が見つからない。
誰かが持っていった?野犬かなにかに動かされてしまった?そんなことありえるのか?
混乱しながらも探すが見つからない。
焦りと恐怖で尋常ではない汗が流れる。
しばらく探し回ったがやはり見つからないので私は一度捜索を諦め、お地蔵様に謝ることにした。
首の無いお地蔵様の前に正座をして必死に祈った。
「すいませんでした。すいませんでした。首は絶対に探して戻すので許してください!」
頭の中で何度も繰り返す。
どれくらい祈っていただろうか、ふと背中に悪寒を感じて顔を上げた私はそのまま凍りついた。
お地蔵様の胴体の上には、Aの顔が乗っていた。
無表情なAの顔が私を見つめている。
それは私と目が合った途端にニターッと邪悪な笑みを浮かべてこう言った。
「首、もらったで、、、」
そう言うとAの顔はグニャリと歪み元のお地蔵様の顔に戻っていた。
気がつくと私は無我夢中で走っていた。
一目散に自宅へ向かうと自分の部屋に逃げ込んで部屋の隅でガタガタ震えていた。
どれくらい時間が経っただろう。
ドンドンドンっ!部屋のドアが激しくノックされ、私を呼ぶ母の声にビクっとして我に返る。
外はもう夕方になっていた。
「大変よ!A君が、A君が、、、!」
Aは亡くなっていた。
昨日検査を終え異常もなく一晩様子を見て今日の午前中には退院したが、帰宅途中で急に何かに怯えたように錯乱し、線路に飛び込んで電車に轢かれて即死だったらしい。
Aの葬式で周りの大人達がヒソヒソとそんな話をしていた。
棺の中は見せてもらえなかった、大勢で探したがAの首が見つからなかったからだ。
もし、Aに頼まれたあの日の内にお地蔵様の首を直しにいっていればAは死ななかっただろうか?
今でもお地蔵様を見る度に疑問と後悔を感じながら生きています。
これが、私の懺悔の話です。
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