第13記:博徒

 眼が覚めた。枕辺のアナログ時計が「朝の8時」を示していた。洗顔後、身支度を整えた。最後のカギをかけてから、自アパートを離れた。1週間分の衣類を担いで、近所のコインランドリーへ向かった。

 ランドリー到着後、空いているマシンに担いできたものを放り込んだ。洗剤を撒き、扉を閉めた。指定の金額を投入し、お湯洗い(やんわりコース)を選んだ。設定後、起動ボタンを押した。ガラス越しに、洗濯の様子が見えるようになっている。今日は衣類が少なめだったせいか、泡立ちが良い。


♞ライオンのトップか、花王のアタックか。どちらにするか、いつも迷う。


 洗い上がるまでの間を、壁際の本棚から抜き出した女性週刊誌を読みながら過ごした。こういう際でなければ、まず手にしない本である。極端な内容の記事が多く、時折吹き出す。洗濯終了後、脱水衣類を機械から、新しいビニール袋に移した。袋を担いで、家に戻った。頭上に青空が広がっていた。


♞女性週刊誌が好きな男である。


 バルコニーの物干し台に脱水ものを干し終えてから、台所に行った。湯沸かし器にミネラル水を注いだ。沸き立ての湯で、コーヒーを淹れた。昨夜コンビニで買った「ザクザク食感のクッキーシュー」なるものを食べながら、熱いやつを飲んだ。俺は左党だが、甘味にも目がない。旨いもんが好きだ。


♞誰だって好きである。


 食後、居室に行き、愛機を起動させた。ぴよぶっくを呼び出し、作成画面へ飛んだ。草小説の続きを書き始めた。我がダサク『邪神の眠り』も33章に突入した。頁数も640を超えたが、話の方はほとんど進んでいない。蝸牛並の進行速度だ。俺の中に「進める気がない…」のかも知れない。


♞メクるに転生させるつもりだが、果たしてできるだろうか?途中で厭きてしまうかも。


 好きなキャラクターと好きなシチュエーション。この二つが揃うだけで満足してしまっているのだ。今回の主役は「渡世人」である。彼がどのような運命を辿るのか、俺自身にもわからぬ。冗談ではない。本当にわからないのだ。斬り合いの果てに命を落とすか、あるいは、しぶとく生き延びるか。ともあれ、衣類ならぬ「心のカメラ」を担いで、追ってみるしかあるまい。〔2月10日〕


♞笹沢左保の『木枯し紋次郎』は俺の愛読書である。カツシン主演の『座頭市』も大好きである。特に前者には共感を覚える部分が多い。

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