第10記:怠惰

 眼が覚めた。枕辺のアナログ時計が「朝の6時半」を示していた。布団を出て、厠に行った。用と手洗いを済ませてから、窓を開けた。雪が見えた。昨夜から降り始めた雪が、まだ降っているのだった。おそらく、電車の運行にも、少なからず影響を及ぼしているだろう。

 今日が休みで助かった。幸運を実感しながら、再び布団に潜り込んだ。こう寒いと、何もやりたくない。何も考えずに、眠り続けていたい。


♞我が町も積雪する。大した量ではないが。


 皆さん御存知のように、俺の本性は「なまけもの」である。先天的に怠けるようにできている。勤勉勤労とは絶望的に縁がなく、惰眠継続が最大の望みなのだ。もし俺が「働かなくても食っていける身分」だったら、いったいどうなっていたか。我ながら、怖くなる。


♞俺って、本当に労働に向いていないと思う。昇進意欲もまったくない。


 気がつくと、朝の9時になっていた。潜れるものなら、ずっと潜っていたいが、今日は外出の予定がある。いつまでもこうしているわけにもゆかぬ。気力を総動員して、起床した。洗顔後、湯沸かし器にミネラル水を注いだ。降雪は依然続いていた。沸き立ての湯で即席コーヒーを淹れた。窓外の雪景色を眺めながら、熱いやつを飲んだ。


♞雪見酒ならぬ「雪見コーヒー」は悪くない趣向である。


 居室に行き、2杯目のコーヒーを飲みながら、異国産ドラマのDVDを観た。鑑賞後、電源を切り、身支度を整えた。出かける前に、歯を磨いた。

 玄関の施錠を済ませてから、アパートを離れた。徒歩で7~8分かかるところにある歯科医院に行き、歯石の除去をやってもらった。終了後、近傍の図書館に行き、読みたい本を読んだ。滞在時間は1時間ほど。


♞歯医者さんの待合室で『アンパンマン』を観ている。


 読後、商店街にある食堂兼居酒屋に行き、昼食をしたためた。本日のランチ、空揚げ定食(ミニうどん付き)を食べた。同店の空揚げを食べるのは、今日が初めてだが、なかなか旨かった。

 無論、材料もいいのだろうが、空揚げにしろ、天麩羅にしろ、揚げ立てに勝るものはない。うどんも美味しかった。これで、680円(税込み)はお値打ちと云える。地元の良心店である。〔2月2日〕


♞同店は一度閉業したが、場所を変えて復活した。移転後も日替わりランチは継続され、ファンを喜ばせた。俺もたまに食べに行っている。

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