第7記:最終話

 洗顔後、身支度を整えた。自室を出て、鍵をかけた。1週間分の衣類を担いで、近所のコインランドリーへ向かった。この時間帯なら、店内はガラガラであろう。最もやりたくない作業を真っ先にやっつけてしまおうという寸法であった。

 ランドリー到着。果たして、店内は無人であった。洗濯マシンの中に担いできたものを放り込み、その上に、粉末洗剤をばら撒いた。扉を閉め、五百円玉を投入した。お湯洗い(標準コース)を選び、起動ボタンを押した。


 壁際の椅子に腰をおろし、洗い上がりを待つ。ただ待っているというのも退屈である。又、俺はそういうことができない性質(たち)である。本棚に収められているマンガ誌(ビッグコミックオリジナル)を一冊抜き出した。なんとそれは『浮浪雲』の最終回が掲載されている号であった。

 超長篇マンガも、ついに終幕を迎えたのだ。それにしても「連載44年」とは、凄過ぎる。俺は熱心な愛好家ではないけれど、さすがに感慨深いものを感じた。ラストカットに続いて、所謂「秋山語録」が載せられていた。遅れ馳せながら、ジョージ先生、長い間、本当にお疲れ様でした。


♞1月20日の日記の一部。テレビドラマ版が観たくなった。


 店に足を踏み入れた瞬間、俺は「この店はダメだ…」と、思った。人手が足りないのか、要領が悪いのか、単にやる気がないのか、理由はよくわからないが、食べ終えた皿や器が、テーブルやカウンターの上に放置されていた。それも、一つや二つではない。こういうところは危ない。この時点で撤退するべきだったのだが、気の弱い俺はそういうことができないのだ。


 退散後、貸しDVD屋に行ったり、スーパーに行ったりしたが、今日はどうやら「厄日」らしく、行く先々で嫌な思いをした。暗い気分で家に戻り、買ってきたものを棚や流しの下に収めた。その後、屋根裏部屋に行き、腕立て伏せをやった。

 風呂場に行き、温水を浴びた。体を拭き、服を着た。その頃には、世界は真っ暗になっていた。俺は「何か」に急かされるようにして、露台に干しておいた衣類と寝具を屋内に取り込んだ。

 愛機を起動させ、編集作業に没頭しようとしたのだが、どういうわけか、こちらの調子も悪い。せっかくの日曜だと云うのに、踏んだり蹴ったりだ。この厄、どうやって払うか。まあ、長い一年、こういう日もあるか……。


♞1月21日の日記の一部。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る