第5話 幸一
「もう、お母さんサイテーっ」
結衣はぷりぷりと怒っている。
「な、何よ乳くりあうって! そんなのじゃないモン! もっと繊細だモン!」
「乳くりあってたんでしょ?」
「もうっ、サイテーだようっ。私とお兄ちゃんは、そんなじゃないモン。もういい! 二度とご飯食べない!」
と、言いつつ焼きそばをしっかりと食べきる結衣だった。
博人もゲホゴホとせき込みながら、焼きそばを口に含む。
「何よっ、お母さんとお父さんだってえっちなことしてた癖に!」
「そりゃそうよ、夫婦だしね。あんたらは兄妹なの」
「じゃあ、本当のことを教えてよ! ・・・私、お兄ちゃんのこと好きなの知ってるでしょ?」
「今は言えないの」
「お母さんのケチ! なんでなのよ?」
「理由は分かるはずだよ。そんなね、血が繋がってるかどうか・・・それで恋愛したりセックスしたりしていいもんじゃないの。じゃあ、血が繋がっていたら、すっぱり諦めるの?」
「それは・・・無理。好きだモン」
結衣は、博人を見つめる。
「それと、もう一度、ウチらの家族構成をよく考えてみなさい。私には、みんな大事な子供なんだよ。今、事実を言うことで、結衣だけ有利になるなんてことは認めないねえ」
「お母さんのケチ」
しかし、結衣も納得してくれたようだ。
「幸一も帰ってくるだろうね・・・」
と、玄関が三度ノックされた。日比谷家の合図だ。
「ただいまー、いや“ウォーカー”ども、最近は割と素早いんだ。名前を“歩く者(ウォーカー)”とつけた者を政府で処するべきだよ、うむ」
重々しい台詞。博人は玄関まで行った。
「おお、博人! ただいま。結衣から誘惑を受けてないだろうね?」
幸一は、美しく長い黒髪を腰元まで伸ばしている。
「フン、ハンター姉ちゃん」
結衣は、べーと舌を突き出している。
幸一は、結衣に似ている端正な顔を綻ばせた。
「不健全な関係はいかんぞ。いや、妬いている訳じゃないぞ。私は博人のためを思っているんだからな、コホン」
「お姉ちゃん、お帰り」
博人はそう言った。
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