第4話 多少は認めましょう
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「う……ん、はむうっ」
結衣は強引に口づけしてくる。博人も流されるように受け入れてしまう。
「お兄ちゃん・・・大好き」
西洋絵画の中の少女のような端正な顔立ち。
結衣が、この“危険なキス”を始めたのは、世界崩壊から一週間経ってからだった。
『あのね、私はむしろイヤじゃないの、今の状況』
一週間前、こっそりと囁いてきた妹。
『だって、ずっと大好きだったし、一緒にいれるもん・・・お兄ちゃんはどう?』
そんなもの決まってる。
こっちも物心ついた時からずっと結衣を見守ってきたのだ。
「もう、誰もいないんだしさ・・・別にいいじゃん、も、もっと色んなことしようよ」
頬を赤く染めながら、あまりに魅力的なことを誘ってくる。
「駄目だよ・・・結衣。ちゃんと調べてからだ」
「だって、多分大丈夫だよ 私、お母さんの連れ子だったんだから・・・」
そう、博人が五歳の時の記憶だ。
うっすらとだが、ゆず子が「博人君よね? 今日から、兄妹よ! 仲良くしてあげてね!」とやってきた時の記憶。
ずっと一緒だった上に、街で一番、というか日本一の美少女と体を密着させているのだ。
しかし、博人は自分でも信じられない自制心で、振りほどいた。
結衣は傷ついた表情だ。
「俺……ゆず子さんのこと、割と尊敬してるんだ」
「……だからなあに?」
「あの人から軽蔑されたくないから。今は駄目だ」
「……ウソツキ。もう、知らない。やっぱり大嫌い」
とてとてと結衣は部屋から出て行く。博人は嘆息して、一階へと降りていく。
もう結衣は立ち直ったようで、ゆず子と昼飯を並べている。
これでいいんだ。ゆず子にこのことを知られれば・・・
「二人とも、そこに座りなさい」
ゆず子がそう言い、博人は旨そうな焼きそばを口にする。
「まあ、本番まで行かなかったみたいだし、ヨシとしましょう。いい? いずれ、血が繋がってるか話すけど、ともかく本番は無しよ。こんな時代に、孕んだら大変なことになるからね。それまで、多少乳くりあうのは大目に見るとしましょう。さ、焼きそばをさっさと食べなさい」
博人はブハアっと焼きそばを吐き出してしまっていた。
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