第2話 終わりの世界

日比谷ゆず子は、レジ袋を持ってドアを開けた。

「博人、結衣。ご飯にしましょうか」

 そう言って、ゆず子は玄関を開ける。パーマを当てなおさないと、髪がボサボサだ。

博人は流行りのニンテンドーのゲーム機に夢中だ。

「ちょっとお兄ちゃん、そこのキーはボックスに置いたでしょ?」

 結衣は、お姫様カットの髪の隙間から街で一番美人の顔を覗かせている。

「あー、うるさいな」

 博人は煙たげにそう言う。

「すぐに忘れるんだから」

「ハイハイ」

「あー、『火炎放射器』を持っていかないと、また負けるよ」

「分かってるって」

 ゆず子は微笑まし気に見つめる。

「ナカヨシねえ」

 ゆず子がそう言うと、

「全然」と博人は返す。

「さあ、鍋にしましょうか」

「毎日じゃん」

 そう言いつつも、結衣は少し嬉しそうだ。

「安かったからねえ」

「安いって母さん、わざわざお金を払ってきたの……?」

「もちろん! 自動レジは動いてるし」

 てきぱきと、ゆず子は鍋にめんつゆと具材を入れていく。

「お金だって、いつかまた使う日が来るかもしれないからとっておけばいいのに」

 博人はそう言う。

「バカなことを言いなさんな。こういう時こそ、普段通りの行動が重要よ」

 やれやれ、と博人は教員のゆず子の頑固さに首を振る。

「幸一もそろそろ帰ってくるだろう。あの子、ハントとなると夢中だからねえ」

 ゆず子はそう言った。

「コウちゃん、無事だよね?」

 結衣は心配そうだ。

「大丈夫よ、コウは訓練してて強いんだから」

 ゆず子がそう言う。

 窓の外を見ると、相変わらず「ウウウゴオオ」と唸りながら、血肉に飢えた“ウォーカー”が、うろついているのだ。

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