第147話 閑話 食いしん坊なエル先生②

 




 ◆かえで視点





「エル先生♪ そんなに動揺してどうしたのですかぁ?」

「こ、これは......むずかちい、じけんなの」


 うふふ♡ エルちゃんは本当に分かりやすい子ですね〜エルちゃんは嘘つく時に前髪を触る癖があるので、何かあると瞬時に分かっちゃうだもん♪ 葵ちゃんも笑いそうな所を頑張って抑えています。真顔で話そうと必死だけど、口元が緩んで今にもニヤニヤしそうな雰囲気です♪


「こ、これは......おくらなの......」

「オクラ? もしかしてお蔵入りですか?」

「んみゅ......おくらなの!」

「ええ〜名探偵のエル先生に解決出来ない事件があるのですか!?」

「............」


 まあ、恐らくこの事件の犯人は可愛い天使ちゃんだと言うのは確定ですね♪ お耳が長くて、目がパッチリとした眉目秀麗で愛らしい金髪の幼い女の子♡ きっと食いしん坊さんかな♪ こっそりと冷蔵庫や戸棚を開けて、笑顔でつまみ食いしている光景が目に浮かびます♪


「そうえば、戸棚にあったクッキーは......何味だったかなぁ?」

「ちょこ! あっ......」

「ん? あれれ? 何でエル先生は戸棚に置いてあったクッキーの味を知っているのですかぁ?」

「は、はめられたの!!! こ、これは、す......すいりなの! きっと......ちょこなの!」

「うふふ......なるほど! 流石はエル先生!」


 葵ちゃん完全に楽しんでいるわね。エルちゃんは相変わらず目を泳がせながらキョロキョロとしています♪ この光景を見るだけで目の保養になるわ♡


「あ、そうえば......冷蔵庫に入ってた限定プリン。あれ毒が入ってたのすっかり忘れてたなぁ♪」

「ふぁっ!?」

「お腹壊しちゃうかもね〜(チラッ)」

「ううっ......たべたら、ちんじゃうの?」

「どうかなぁ〜」

「ぐすんっ......ボク、ちにたくない!」

「え?と言う事は〜もしかしてエル先生が犯人? 私の限定プリン食べちゃったの?」

「んみゃ!? ち、ちまったの! ボク、ちらないもん! たぶん、たべてないの!」


 はうっ......!? やばい、語彙力と意識が行方不明になりそうでした。これだけで白飯3杯分は行けそうね♪ エルちゃんは本当にピュア何だから♡ 何だか私まで心が綺麗だと錯覚しちゃう程にエルちゃんは純粋です♡


「ぐぬぬ......タマちゃん! タマちゃんなの!」

「にゃう!?」

「ええ〜? タマちゃんが犯人なのぉ?」

「にゃーう!!」


 あらあら、タマちゃんが台所の方へと走って行きましたね。まさか、タマちゃんが何か事件の解決の鍵を握っているのかな〜? 既に真犯人は分かってはいるけれど、何だかほのぼのとする事件だね♪


「にゃーん!」

「ふぁっ......!? タマちゃん! それだめなの!」

「あら?」

「これは......まさか、エル先生の......!?」


 タマちゃんが口で咥えて持って来たのは、昨日エルちゃんが3時のおやつに食べた【魔法少女☆みくるちゃんプロマイドチップス】のゴミ袋ですね。そして、その袋の中に何とクッキーの袋が複数枚出て来たのです! これは最早言い逃れ出来ませんね♪ エル先生♡


「エル先生? これは何ですかねぇ?」

「............」


 エルちゃんもちゃっかりとしてるわね♪ クッキーが食べたいが為にバレない様に証拠を隠滅しようと考えついちゃうなんて♪ 


「にゃ〜ん♪」

「タマちゃんのおにぎり! おにぎりもの!」

「くすくす......エル先生? それを言うなら裏切り者ですよぉ?」

「ぐぬぬ......に、にげるの!」


 エルちゃんはリビングから逃走を試みようとするが、背後から葵にがっしりと掴まれ逃走はあっけなく失敗してしまうのであった。


「はい、捕まえたよ〜食いしん坊探偵エルちゃん!」

「んみゃ!? あおいねーたん! ごめんなしゃぁぁぁぁあああ!? ぎゃあああ!? や! こちょこちょは......メッ! あははははは!!」

「探偵さんが犯人とは前代未聞だね〜? お姉ちゃん! エルちゃんを少し押さえてて!」

「はいは〜い♪ エル先生、失礼します♪」


 楓と葵は、エルちゃん抱っこしてリビングのソファの上へと移動した後にエルちゃんの弱点を満遍なくこちょこちょしたのであった。


「アハハハハハハハハ!!!! ち、ちぬ!」

「ここが効くのかなぁ? おまけに小さなエルちゃんのあんよもこちょこちょしちゃうぞ〜♡」

「脇の下とお耳のこちょこちょもハッピーセットだよ♡」

「たちゅけて!!!! あはははははは!!」


 2人のお姉ちゃんからのこちょこちょ攻撃の猛攻を前にエルちゃんは為す術も無く笑い声を上げて悶えている。


「あははははは!!」

「もお♡ 食いしん坊ちゃんはこうでちゅよ!」

「今日と言う今日は許さないからね♪ お姉ちゃん、エルちゃんをしっかりと押さえててね!」

「ラジャ!」


 エルちゃんは、2人のお姉ちゃんからのこちょこちょと言う名の拷問を15分近く受けるのであった。






 ―――――――――





「ぐぬぬ......ちゅかれたの」

「うふふ♡ エルちゃん? お姉ちゃん達はお菓子を食べるのは駄目だとは言わないけどね。食べ過ぎは良くないんだよ? お菓子の食べ過ぎで病気しちゃうと行けないからね」

「んぅ? びょーき?」

「病気はね。それはそれはとっても怖いんだよ〜」


 エルちゃんが食欲旺盛なのは良い事ですが、甘い物ばかり沢山食べるのは危険です。私と葵ちゃんもエルちゃんの健康面の事もちゃんと考えないと行けません。食事はバランス良く食べる様にしないと将来自分が損する事になりますからね。


「病気はね。おばけよりも怖いんだよ〜」

「おばけ......ううっ、かえでねーたん!」

「あぁ、ごめんねエルちゃん♪ 例えが良く無かったね〜おばけ怖かったよね〜よしよし♡」


 こないだ舞香さんの持って来たホラー映画【深淵の森】がエルちゃんの中で少しトラウマになっちゃてるのかもしれません。やっぱりエルちゃんにはまだそう言うのは早かったかな?


「エルちゃんの気持ちも凄く分かるけど、程々にしないと駄目だからね♪ それに歯磨きした後につまみ食いしちゃうと虫歯にもなっちゃうから。虫歯さんはなると痛い痛いしちゃうんだよ♪」

「むちば?」

「うんうん。歯を磨く事も凄く大事なの♪」

「ぐすんっ......ボク、わるいこ?」

「いやいや、エルちゃんはとっても良い子だよ♡ 私や葵お姉ちゃんもエルちゃんの事が大好きだから色々と言うんだよ♪」

「んみゅ」


 あらあら♪ 私の身体にむぎゅっとエルちゃんがピッタンコして可愛いなぁ♡ おめめもウルウルさせちゃって♪ エルちゃんの温もりが暖かいわね♡ 良し、今度はエルちゃんの事を沢山褒めてあげよう♪ 今日は私が仕事に行ってる間に葵ちゃんと一緒に色々お手伝いをしてくれたと聞いてるし♪


「エルちゃん、今日は葵お姉ちゃんと何してたの〜?」

「んみゅ! ちぇんたくしたの! およーふくたたんだの!」

「ええ!? エルちゃん凄いなぁ♡ お洗濯やお洋服畳む事が出来たんだ♪ お手伝いするエルちゃんは良い子でちゅね〜♪」

「お姉ちゃん、今日はエルちゃんも色々と頑張ってたんだよ♪ あ、そうえばあれがあったね。エルちゃんがお姉ちゃんにね〜」

「わ!? はわわ!? あおいねーたん! メッ! ないちょなの!」


 エルちゃんは慌てふためいて、急いで葵ちゃんの口を手で塞ぎました。顔を赤くして恥じらっているという事は、何か恥ずかしい事があったのかな?


「ええ〜エルちゃん、私に隠し事してるのぉ?」

「ちてないもん!」

「本当にぃ?」

「んみゅ!」


 うふふ♡ 何の隠し事かは分からないけど、無理に聞くのはやめておきましょう♪ また前みたいに婚姻届や結婚指輪だとか......まだこんなに幼いのに結婚するとか指輪を買うんだと色々と背伸びしてるエルちゃんが本当に堪らなく愛おしい♡ こんなに可愛い子が婚姻届を持って来たら、そら誰だってサインしてしまいますよ♪


「かえでねーたん」

「ん?」

「おちごと......たいへん?」

「そうだね〜凄くたいへんだけど、お姉ちゃんはエルちゃんのお陰でいつも頑張る事が出来るんだよ♪」

「しょうなの?」

「うんうん♪ あ、じゃあ〜職場での写真見せてあげよっか」


 楓はポケットからスマホを取り出してエルちゃんと葵に写真をいくつか見せる。


「これは今日私が食べたお昼ご飯だよ〜うどん定食!」

「むむ!? かえでねーたんずるいの!」

「へえ〜お姉ちゃんの職場の食堂かな? 何か社員食堂って憧れるよね」

「そうだよ〜安くて美味しいからね。まあ、普段は葵ちゃん達に愛情弁当作ってもらってるから、たまにしか食べないけどね♪」


 葵ちゃんが忙しい時は、毎朝コンビニでお弁当を買って行くか社員食堂で食べるかのどちらかです。たまにエルちゃんもお弁当を作るのを一緒に手伝ってくれてるのですが、エルちゃんがおかずをこっそりとつまみ食いしてしまうので、葵ちゃんに怒られているのをちょくちょく目撃したりしますね。


「じゅるり......ボクもたべたいの。ボクもいっちょにいく!」

「うふふ♪ 流石にエルちゃんを会社に連れて行けないよ。今度美味しいうどん食べさせてあげるからね♪」

「んみゅ! やくそくなの!」


 葵ちゃんも私のスマホを覗き込むかのように見ています♪ 私の肩に葵ちゃんの肩が密接しており、私の仕事で疲れた心は一気に回復しております♡ 可愛い妹達と触れ合いイチャイチャするこの何気無い時間が大好き♡


「次の写真はね〜」

「ん? この写真は飲み会の時のかな?」

「そうだよ〜前に取引先も交えてご一緒したの」


 あら? エルちゃんが食い入る様にスマホの画面を凝視してますね。目を大きく見開いて何か信じられない様なものを見た時の顔です。


「むむ! おとこ!」

「うふふ♡ そんなフグさんみたいに頬っぺた膨らませて〜ヤキモチ妬いてるのでちゅかぁ?」

「フグたんちがうの!」


 そんな可愛いらしい姿を見せられちゃったら、エルちゃんに意地悪したくなっちゃうなぁ♡ どうしたらこの衝動を抑える事が出来るのでしょうか?


「ちっかりと! おはなちするの!」

「はいはい♪」


 葵ちゃんは暖かい目で成り行きを黙って見守っています。プンプンと怒っているエルちゃんが可愛すぎて思わず口がニヤニヤしちゃうよ♡


「むむ......」

「お姉ちゃんが他の人に取られるのが嫌?」

「やっ! かえでねーたん、だいしゅきなの! かえでねーたんは......ボクのおよめしゃんなの!」

「はぅっ......♡」


 楓はレディとしてはしたない様な表情をしながら、エルちゃんの事を強く抱きしめた。楓はこの後エルちゃんの事をめちゃくちゃ愛でるのであった。

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