第146話 閑話 エルちゃんの嫉妬と意地悪な楓お姉ちゃん

 




 ◆エルちゃん視点





「ふぅ......ついたの」



 あれから黒づくめの人達を撒いて、何とかスーパーホモネコバリューに無事辿り着く事が出来ました。現在、ゴンちゃんとタマちゃんと僕の3人?でスーパーの入り口付近におります。



 《エル、ちゃんと買う物は覚えてるの?》


「だいじょーぶ!」


 《本当に?》


「んみゅ! まかちてよ♪」


 《な、何だか心配だわ......》



 タマちゃんは相変わらずの心配性ですね。今回買う物は勿論覚えているのだ! 豆腐、焼肉のタレ、ポテトチップス、ウインナー、お茶漬けの素。余りのお金は使っても良いと言われてるので、なるべく安い買い物をして少しでもお金を残して置きたい。自分のおやつとかえでねーたん達のおやつも少し買って、残りのお金は僕の貯金に回すのだ! 


 かえでねーたんと結婚の議を行うには指輪と言うアイテムが欠かせません。本当は今すぐにでもプレゼントをしたい所だけど、お値段は僕の想像するよりも遥かに高いらしい。

かえでねーたんは超絶美人さんだから、他の人に取られる前に僕が先手を打つ! あおいねーたんから聞いた情報だと、結婚すると妻は左手の薬指に指輪をはめるそうなのです。指輪をしているとその女性は結婚してますよと言う証となるのだ。



「んみゅ」


 《どしたのエル?》


「なんでもないの。ボク、おかいものちてくる! タマちゃんとゴンちゃんは、おるすばんなの!」



 最近僕はとある事が少し......いえ、相当気になっている事案があるのだ。それは、かえでねーたんがお仕事に行ってる間に僕とあおいねーたんの2人でお洗濯をしている時でした。かえでねーたんのコートのポケットから小さな四角い紙が出て来たのです! 


 あれは確か5日前の出来事でしたね。漢字と言う魔界の文字は読めませんでしたが、名前の上に平仮名で【たなか、こういち......かちょう】と男性と思われる名前が書いてあったのだ! これは非常に由々しき事態です! かえでねーたんのポケットの中から男の名前の紙......僕はその日の夜、その白い紙を持ちながら、かえでねーたんがお仕事から帰って来るのを玄関で首を長くして待っていました。






 ―――5日前の夜―――





「葵ちゃん、エルちゃんただいまぁ〜♡」

「かえでねーたん! おかえりなの!」

「お姉ちゃんおかえり〜」



 エルちゃんと葵はいつも通り玄関で楓を笑顔で出迎えた。出迎える際と見送る際は、エルちゃんはいつも楓の頬っぺたにキスをするのもちゃんと忘れては無い。



「チューするの! ん!」

「エルちゃん♡ チュッ♡」

「かえでねーたん!」

「ん? どうしたのエルちゃん?」



 エルちゃんは頬を膨らましながら、ポケットの中から白い紙を取り出して楓に見せて問い詰める。



「かえでねーたん! これなぁに?」

「これは......お姉ちゃんの会社の名刺だね。課長さんの名刺。それがどうかしたの?」

「むむ! かちょー? ましゃか、お、おとこ!?」

「え、うふふ♪ エルちゃんたら♡ もしかしてヤキモチ妬いてるのでちゅかぁ?」

「むむぅ......かえでねーたん! じっくりと、おはなちするの!」



 エルちゃんが名刺をバンバンと叩きながら、プンプンとしている姿に楓と葵は微笑ましい様子でクスクスと笑っていた。エルちゃんは楓に男が居るのでは無いかと内心ソワソワしながら酷く動揺を見せている。



「あはははははははは♪」

「葵ちゃん、そんなに笑ったら駄目よ?」

「お姉ちゃんだって、笑いこらえるのに必死のくせに〜エルちゃんは楓お姉ちゃんが浮気してないか心配なんだって♪」

「うふふ♡ あぁ、もう駄目。笑っちゃいそうだわ♪」

「もう! あおいねーたん! かえでねーたん! これは、ゆゆちきじたいなの!」



 楓と葵は笑いながらエルちゃんの頭を優しく撫で撫でしてエルちゃんを何とか宥めようと試みる。



「エルちゃん、それはね〜」

「葵ちゃん待って♪ お耳近付けてくれる?」



 楓はエルちゃんに聞こえないように葵にそっと耳元で囁くのであった。



(やれやれ......お姉ちゃんって、案外Sだよね)

(うふふ♡ だって、エルちゃんが私に彼氏が居るのでは無いかと嫉妬してるんだよ♪ もう可愛い過ぎて、何だか仕事の疲れが今ので一気に吹き飛んじゃった♪ 何かズキュン♡と来ちゃったよぉ♡)



 な、何でしょうか......かえでねーたんがニヤニヤしてる時は大抵ロクでも無い事を考えて居たりするのですが、あおいねーたんまでニヤニヤしてるとは......ま、まさか!? かえでねーたんに本当に男が? いやいや、落ち着け。落ち着くんだ僕! あのニヤニヤしてる顔はきっと冗談......だよね? 



「エルちゃんは、お姉ちゃんの事そんなに好きなのでちゅかぁ?」

「だいしゅき! だって......けっこんしゅるもん!」

「エルちゃん、私は?」

「あおいねーたんもだいしゅき!」



 良し、落ち着いて来たぞ。かえでねーたんは、僕が頑張って作ったお手製の婚姻届にサインをしてくれたんだ。そうだ、考え過ぎは良くないよね。ただ、【かちょう】と言う言葉は僕も見た事も聞いた事も無い。あおいねーたんやかえでねーたんと沢山お勉強はしていますが、次から次へと分からない事ばかりです。



「エルちゃん、他にも沢山名刺あるよ♪ ほら、こっちは若い男の人でそれから......」

「な、なぬ!? み、みせるの!!!!!」

「ちょっと待ってね〜うふふ♪ ほら♪」

「んみゃああああああ!? ふ、ふれんち! ふれんちなの!」

「え? ハレンチじゃなくて、フレンチ? うふふ♡ エルちゃんは本当に食いしん坊さんだね♡」

「ちがうの! もう! これは、ぼっちゅーするの!」

「はう♡ か、可愛しゅぎるよぉ♡」

「むむぅ......うわきはメッ!」



 な、何と言うことでしょうか......他にも男の名刺が沢山あるとは。えいぎょう......しゅにん。かかりちょう? ぐぬぬ......誰なのだ!? こ、これも名前なのかな? いや、今はそんな事はどうでも良いの! 問題はかえでねーたんが沢山の男と会ってると言う事! ボクの見てない所で!



「デュフフ♡ そんなに気になる?」

「きになるの! ぜんぶ、おはなちするの!」

「エルちゃん♡」



 これはやはり、ボクも一緒にかえでねーたんの職場に付いて行く必要がありそうだ。女性ならまだしも......いや待てよ? かえでねーたん、女性だからと言っても直ぐに手を出してしまうような変態さんだった......ぐぬぬ。どうすれば良いのだ!?



「や! かえでねーたん、わたしゃないもん! ボクもいっちょに......おちごといく! ちっかりと、かんちするの!」

「よしよし♪ エルちゃんもうやめて♡ お姉ちゃんの負けだよ〜これ以上エルちゃんのそんな可愛い姿を見せられたら......お姉ちゃん理性を失った魔物になっちゃうよ?」

「うわきはメッなの!」



 エルちゃんは涙目を浮かべながら楓の足に必死にしがみつく。その様子を見てた楓は、口から涎を垂らしそうな程に顔を破顔させて内心発狂しそうになっていた。

楓はエルちゃんを優しく抱っこして、背中をさすりながら幸せそうな顔であやしている。とても外では見せられない様な表情とヤンデレみたいな目付きでエルちゃんの頬っぺたに自分の頬っぺたを密着させてスリスリとしていた。



「ぐすんっ......こんいんとどけ......やくそくちたのに」

「えへへ♡ エルちゃん心配しなくて良いんだよ? この課長さんは男性の方だけど、職場の上司。他の人もお仕事関係の人達だからさ。私の恋人はエルちゃんだからね♡ エルちゃんが大きくなったら、お姉ちゃんと結婚しようね♡ チュッ♡ お姉ちゃんはエルちゃんが可愛くて、ついつい意地悪しちゃったの♡ ごめんね♪」

「んみゅ、かえでねーたんのいじわゆ! けっこん......やくそくなの! うしょついたら......ボク、おこっちゃうもん!」

「えへへ♡ お姉ちゃんは意地悪だよぉ♡ エルちゃんは本当に純粋だね〜♡ お姉ちゃんの心をいつもそうやって浄化してくれるんだもん♡」



 全く、かえでねーたんには本当に困ったものです。僕にそんな意地悪をして何が楽しいやら。僕もかえでねーたんに意地悪を......いや、駄目だ。お返しにかえでねーたんに意地悪するとそれが倍返しとなって帰って来るし、何をされるか分かったもんじゃない。


 だけど、かえでねーたんのニヤニヤした顔はある意味心臓に悪い。美人のかえでねーたんが微笑んだりニヤニヤするだけで、それはまるで天使の様に愛らしくて美しいのだ。僕の心臓がドキドキしちゃう......本当にかえでねーたんは困った小悪魔さんです。



「あん♡ エルちゃんたら......そんなにモゾモゾと動かないでよ〜えっち♡ そんなにお姉ちゃんのパイパイがほちいの? むぎゅう♡ 後でお姉ちゃんのパイパイ好きなだけ触らせてあげるからね〜♡ お姉ちゃんの新鮮なミルクもあげまちゅからね〜♪ よちよち♡」

「ぐぬぬ!? ち、ちぬ!?」

「えへへ♡ 仕事終わりにエルちゃんを抱くの最高ね♡ むぎゅう♡」



 かえでねーたんのお胸は相変わらずの殺人兵器です! 抱かれるのは好きですが、かえでねーたんの包容力は最近では更に凄みを増して、窒息してしまいそうなレベルにマジでやばいのだ! しかも、かえでねーたんから甘くて良い匂いがするせいで、意識が飛びそうになる事もあるくらいです。同じ家に住んでるのにどうしてこうも良い匂いがするのでしょうか?



「お姉ちゃん、エルちゃん埋もれてるから......こんな所でイチャイチャしてないでお姉ちゃんは早く着替えてよね。ご飯冷める前に皆んなで食べるよ」

「はぁ〜い♡ エルちゃん、ご飯食べたらお姉ちゃんとお風呂入って〜その後一緒にお遊びしよっか♪ 今日は何やる? また探偵さんごっこ?」

「んみゅ! やりゅ! じけんかいけちゅ!」

「えへへ♡ 最早エルちゃんが可愛すぎるのが事件だよ♪ お姉ちゃんは理性保つのに精一杯なんだもん♪ エルちゃん〜お姉ちゃんの事件も解決してね♡」



 僕が最近みくるちゃんの他に見てるテレビの1つが【迷探偵めいたんていマルオ】。数多くの難事件を解決する探偵さんなのだ。僅かな手掛かりを元に推理をして事件の犯人を導き出すと言うのが探偵なの!



「おおぉ〜そかそか♪ じゃあ、ご飯食べてお風呂入ってからね♪」

「んみゅ! ボク、たんてい! やりゅの!」

「いいよ〜良し、せっかくなら葵ちゃんも一緒にやろうよ♪」

「え、私も? まあ良いけど」






 ―――リビングにて探偵ごっこ―――





 探偵役⇒エルちゃん


 エルちゃんの助手役⇒楓お姉ちゃん


 依頼人役⇒葵お姉ちゃん


 友情出演?⇒白猫のタマちゃん




【消えた葵の限定プリンとお菓子達】




 エルちゃん達はご飯を食べた後に楓と葵の3人で、一緒にお風呂に入り綺麗さっぱりと洗い流した所である。エルちゃんはソファの上で寝ていたタマちゃんを無理矢理起こしてリビングで探偵ごっこをしようとしていた。




「エル先生! 依頼人さんが来ましたよ!」

「んみゅ。かえでくん、ここへ......おとおちしなさい」

「はい先生♡(きゃあ♡ アメゾンで買ったおもちゃと探偵コスプレ衣装めっちゃ似合ってるわ♡ かえでねーたんと呼ばれるのも素敵だけど君付けで呼ばれるのもまた良さみが深いわね♪)」



 エルちゃんは楓が通販サイトのアメゾンで購入した探偵ごっこ一色セットを着用して、足を組みながらソファに座っている。エルちゃんは、おもちゃのパイプを口に咥え紳士な探偵と言う雰囲気を演じようとしていたが、楓は内心そのエルちゃんの可愛いさに悶え苦しんでいた。



「失礼しま〜す。こちら一ノ瀬探偵事務所で間違い無いですか?」

「んみゅ! ようこちょ! そちらにおしゅわりくだちゃい!」

「失礼します(あぁ♡ エルちゃんの噛み噛み言葉が相変わらず可愛いなぁ〜♪」



 葵はソファに恐る恐る座り、エルちゃんと対面するような形で座る。



「かえでくん、こちらのおねーたんに、ごくじょーのおかちをたのむの!」

「はいは〜い♪」



 楓は机の上にエルちゃんの好きなお菓子を置いた。そしてエルちゃんは、お菓子を食べ始めて幸せそうな表情を浮かべるのであった。



「んふ♡ おいちいの♪」


「「…………(エルちゃんが食べるんかい!!)」」



 2人は内心突っ込みを入れつつも楓と葵はクスクスと笑いながらもお芝居を続けようと試みる。



「もぐもぐ♪」

「ごほんっ、エル先生、本題に入りましょう♪」

「んみゅ! きょーは、どうちましたか?」

「はい、実は......最近我が家で食べ物が消えると言う事件が起きてまして〜」

「ふむふむ」



 葵はニヤニヤしながら話しを続ける。楓は何かを察した様にエルちゃんの隣で笑みを浮かべながら静かに話しを聞いている。



「私が楽しみにしていたプリンが無くなってたり、戸棚に置いておいたクッキー等がいつの間にか無くなってるのです」

「......」



 エルちゃんは目を泳がせながら、白猫のタマちゃんの方へと視線を向ける。楓や葵に声が聞こえない様にエルちゃんはタマちゃんの近くに行き小声で話す。



「タマちゃ......ねむりのたまごろー! でばんなの!」


 《ちょっと! 誰がタマ吾郎よ! レディに向かって本当失礼よね、あんた。しかも、気持ち良く寝てた所を無理矢理起こされて、私プンプン何だから!》


「タマちゃん......よちよち♡」


 《おいこら、話しを逸らすな。どうせエルが食べちゃったんでしょ? この食いしん坊アホエルフ》


「ぐすんっ......だってぇ。おいちそうだったんだもん」


 《本当にエルはどうしようもない子よね……こればかりは援護出来ないわよ?》



 エルちゃんは視線を泳がせながらも再びソファに姿勢良く座って前髪を弄り始める。エルちゃんは困った時の癖で、視線を泳がせながらも前髪を弄ることが多いのだ。



「よ、よち! は、はんにんをさがすの! しんじつは〜いちゅもひとつ!」

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