第138話 天狼会 直系 神楽坂組、組長の彩芽とエルちゃんの出会い

 



 ◆エルちゃん視点





 ―――商店街アーケード下にて―――




「んふぅ......おいちかったの♡」




 あれから沢山の方に食べ物を恵んで頂きました♪ 山田のおばさんのくれたマグロのお刺身なる食べ物もめっちゃ美味しかったのだ! このままではいずれ太ってしまうのではなかろうか......いや、それはきっと大丈夫だろう。日頃から身体を動かしてるから問題無し! しかし、太るかもしれないと考える事が出来る様になるとは......本当に贅沢な悩みだな。以前の僕なら食べるご飯もありませんでしたからね♪



「のどかわいたの......」



 お、あそこのゲーセンの所に自販機が沢山並んでるぞ。飲み物を買ってから交番に100円玉を持って行こう。そしたら、その後にスーパー【ホモネコバリュー】でお買い物なのだ!



「どれにちよう......むむ!」



 こ、これは......前にかえでねーたんに買って貰った【午後のこーちゃ】! このミルクティーと言う飲み物も口当たりが良くまろやかな甘さでとても美味しかった。



「............」



 しかし、ここで大きな問題が一つあります。午後のこーちゃは文字に書いてある通りに午後に飲まなければ行けない飲み物です。かえでねーたんに【この午後のこーちゃは朝飲んだら駄目何だよ〜♪】と教えて貰いました! 午後とはお昼以降を差す言葉だった筈......今は午前。



「ごくりっ......えい! おしちゃうの!」



 あぁ......ついにボクは悪い子になってしまうのか。この飲み物を飲みたい自分の欲には勝てませんでした。かえでねーたん達は幸い今日はお家にお留守番をしています。なら、今日この瞬間だけ......ボクは悪い子になっちゃうもんね!



「むむ!?」



 何だか周りの人達の視線が......やっぱり午後のこーちゃを午前に買うのはやばかったかな。しかし、ボクはもう後には引けぬ! ここで堂々と飲んでやるもんね!



【あの小さい女の子可愛い♡】

【ミルクティー見ながら真剣に悩んでる姿がもうやばい♡】

【あの子1人なのか?】

【エルフのコスプレしてる幼女......だと!?】

【天使が降臨なされた......あぁ、拝んどこ】



 通行人の人達は、エルちゃんの事を微笑ましいなと思いながら見ている人が大半である。そんな中エルちゃんは1人勘違いをして、午後のこーちゃを午前中に買ってしまったと言う罪悪感と戦いながら1人冷や汗をかきながら悩んでいた。



「ぐすんっ............どうちよ」

「お嬢ちゃんどうしたんだ? ママとパパとはぐれて迷子になっちゃったかな?」

「んにゅ?」



 エルちゃんが涙目を浮かべているとゲーセンの中から1人の若者が出て来たのである。金髪の爽やかなお兄さんが何事かと思い、今にも泣きそうなエルちゃんに話し掛けて来たのだ。



「ちがうの......これをごぜんに......ぐすん」

「ん? ミルクティー? あ、蓋が開かないのかな?」

「ちがうの! あさのんだら......だめなの」

「ぷっ......あはははははは!!」

「わらいごとじゃないの!」



 全く......失礼なお兄さんですね。腹を抑えながら大爆笑してるよ。



「お嬢ちゃん、大丈夫やで。それはいつ飲んでも問題無いぞ」

「ふぇ? だって......かえでねーたんが」

「かえでねーたん? あぁ、お姉さんの事かな? 多分、それはお姉さんの冗談じゃないかな?」

「えっ......しょうなの?」

「それらただの商品の名前だからな。お嬢ちゃんは純粋やな♪ 貸してみ、お兄さんが開けてあげるぞ」



 だ、だまされた!? 今思えば、あの時のかえでねーたんニヤニヤと笑って居たような気がする。してやられた......



「はい、どうぞ♪」

「おにいしゃん、あいあと!」

「どう致しまして♪ ちゃんとありがとうが言える何て凄いな! お嬢ちゃん1人なのか?」

「うみゅ! おつかいなの!」

「おお! そかそか、お嬢ちゃん良い子やな♪ あ、やっべ!? バイトの時間に遅れる! お嬢ちゃん、気を付けてな♪ 怪しい人には付いて行ったら駄目やからな。ほな、またな!」

「んみゅ! ばいばい!」



 今の金髪のお兄さんカッコ良かったな〜ボクもあんな風になりたい......いや、それは無理ですね。多分成長したらお兄さんとは真逆、と言うかボクは女の子だからどちらかと言うとイケメンとは程遠い物になっちゃうのかな。



 エルちゃんはミルクティーを飲みながらご満悦の様子である。そして、エルちゃんは再び交番を目指して歩き始めるのであった。






―――――――――――――――





「むむ!? あれはあいしゅ! あっちは......おでん!?」



 この商店街は本当に誘惑が多い。おでんは一度だけあおいねーたんが食べさせてくれた事があったので、今でも良く覚えています。熱々だけど、お味噌と言うものを付けて食べる味の染みた大根はまさに格別! 



「じゃるり......」



 ちょっと寄ってこうかな。別に時間はまだまだたっぷりとある。テレビで見た事がありますが、屋台のおでん屋さんに入る時【大将やってるかい?】と言ってから席に付いていました。ここは僕も同じ様に真似をしてみよう。



「にほんちゅ♪ あちゅかん♪」



 ぐふふ♡ あおいねーたんには駄目だと言われてましたが、今日はほんの少しだけ日本酒と熱燗と言うお酒を呑んじゃうもんね! テレビであんなに美味しそうに飲んでる姿を見る限り相当な物に違い無い。今日が僕の初のお酒デビューになるかもしれません♪





 ―――エルちゃんはおでんの屋台に惹かれて、トコトコと屋台の方へと足を運ぶのであった。





「らっしゃい!」

「へい、たいしょー! やってゆかい!」

「かはっ......!? か、可愛い......♡ お......お嬢ちゃん、ママとパパは何処に居るのかしら?」

「んみゅ? ボクちとりだよ?」

「え、1人なのかい......!?」



 ふぇ......綺麗で燃えるような深紅色の赤髪にあおいねーたんに負けないくらいの大きなお胸、凄い気の強そうな美しいお姉さんだ。俗に言うオラオラ系のお姉さんなのでしょうか? 



「ボクはえる! おねえしゃん、よろしくなの!」

「あぁ♡ エルちゃん言うのか♪ アタイの名前は神楽坂かぐらさか彩芽あやめってんだ♪ 気軽に彩芽お姉さんと呼んでなぁ〜お嬢ちゃん宜しく♪」

「あい!」

「エルちゃん、そこに座りなさいな。まだ準備中だけど、他のおでんの種はそろそろ温まって来てるから食べな♪」

「わーい♪ あいあと!」



 エルちゃんはウキウキ気分で椅子に座ろうとするが、ここで問題が一つ発生した。椅子の高さが大人用のサイズでエルちゃんには椅子が高くて座れないのである。



「あやめねーたん......すわれないの」

「あ、あやめねーたん......か、可愛い過ぎるやろぉぉおおおお♡」

「んみゃあ!?」

「あ、突然大きな声出してごめんなぁ。今のはお姉さんの独り言だから気にしないでくれ♪」



 ふむ......恐らくかえでねーたんやあおいねーたんよりも歳は上かもしれません。気さくで大人の色香を持つ余裕のある女性に見える? かえでねーたん達と暮らし始めてから、ボクは今まで沢山の女性と関わって来たのだ。


 なので、この女性はやばい人かまともな人なのかと言う違いが段々と分かるようになって来たのかなと思ってましたが、このお姉さんはどちらなのか良く分からない。でも、彩芽あやめお姉さんから只者では無さそうな気配を何となく感じます。これは僕の直感と言えば良いのかな?



あねさん買い出しから戻りましたぜ〜」

「はわわ!?」

「ん? いらっしゃい! 可愛いお嬢ちゃんやな〜」

「あ、あう......」


 な、何だこの人!? 片目に傷がついた強面のお兄さんがやって来たぞ!? このお兄さんめっちゃ強そう......てか、貫禄あり過ぎて怖いよぉ。やばい、今少しだけチビりそうだった。



「鮫島! エルちゃんが怖がってるじゃないか!」

「な!? お、お嬢ちゃんごめんなぁ。俺は怖くないぞ〜おじさんの名は鮫島言うんや♪ 宜しゅうな♪」

「ボ、ボクはえりゅ......なの」

「このおじさん見た目はイカついけど、根は良いやつだから大丈夫やで♪」



 確かに見た目は怖いけど、何だか情がありそうな強面のお兄さんと感じですね。鮫島の兄貴と呼んだ方が良さそうです。



「さめじまたん......あうっ」



 あ、しまった。思わず変な呼び方で言っちゃったよ......僕の滑舌の悪さは死活問題なのかもしれません。いや、そもそも滑舌云々の話しなのか?



「ん? どした鮫島?」

「姐さん......何なのですか! さめじまたん......って! 可愛いにも程がありますぜ! 俺変な扉開きそうでしたよ!」

「まあまあ、落ち着け。確かに気持ちは分かる」



 ここは冷静にならなくちゃ......焦って同様しては行けない。ボクはただ普通におでんと日本酒を頼むだけ......



「あやめねーたん! にほんちゅ!」

「え? にほんちゅ......日本酒のことかい?」

「んみゅ!」

「こらこら、エルちゃん駄目だぞ? お酒は大人になってからな♪」

「ボクはおとな! だって......15ちゃいだもん!」

「ぷっ......あはははははは!! 鮫島今の聞いたかい! エルちゃんは冗談が上手いなぁ♪ それに大人は20歳からやで♪」

「がっはははは!!!」



 むぅ......思いっ切り爆笑してる。でも、この人達暖かくて優しそうな人達ですね♪



「ふぇ? しょうなの?」

「せやで〜あたいは今年で28歳やからもう立派な大人やで♪ こっちの鮫島のおじちゃんは32歳」



 知らなかった......大人になるのは20歳からだったのか。郷に入っては郷に従えと言いますからね。お酒は潔く諦めるとしよう。



「お酒じゃなくて、エルちゃんにはこっちのオレンジジュースな♪」

「じゃーちゅ!!」

「クスクス......あ、それともこっちの哺乳瓶に入れた方が良かったかい?」

「もう! ボクはあかちゃんちがう!」



 最初は哺乳瓶とおしゃぶりを愛用していましたが、最近になってこれは赤ちゃんが使う物だよと言う事が分かったのです! かえでねーたんに【これを使うと強くなれるんだよ♪】と言われまんまと騙されたのは恥ずかしい......



「はぅ......♡ もう♡ エルちゃん可愛すぎよ♡」

「あ、姐さん......顔がまじもんの乙女みたいですぜ?」

「はぁ!? 鮫島てめぇ! あたいが日頃から乙女じゃない様な言い方じゃねえか!」

「何処に暴走族や半グレ集団を1人で壊滅させる乙女が居るのやら......」

「鮫島......おまえ死刑な♡」

「姐さん〜勘弁してくだせぇ」



 この2人仲が凄く良さそうです。暴走族と半グレ集団と言うのは良く分からないですが、それはきっと凄い事なんだろうなぁ。


 

「エルちゃんごめんなぁ〜はい、熱々の卵と大根につくねだよ♪」

「むむ! おいちそう!」

「あ、熱いからお姉さんがフーフーして食べさせてあげよっか♪」

「だいじょーぶなの!」

「またまた〜幼い子は遠慮したらあかんで♪ せっかくやしお姉さんの膝の上座って食べような♪」

「ふぇ!?」



 どうしていつもこうなるのですかぁぁあああああああああああああああああああああああ!!!




 エルちゃんに選択肢等は初めから無かったのである。彩芽はうっとりとした顔でエルちゃんの事を可愛がるのであった。

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