第121話 VTuber、宇佐美めぐる② 屈指の迷作?スーパーマリコ★ブラザーズEX!

 





 ◆宇佐美めぐる視点・過去編






「ンア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!! 葵、もう1回!」

「ふふ......これで私の50勝。明日奈ぷえぷえ弱っちいね〜」


 な、何故勝てぬ......!? あたしの得意なぷえぷえクエストで一勝も勝てないなんて......5連鎖もしてるのに、葵側のお邪魔ブロックが全然増えて行かない。むしろ直ぐに消されて倍返しで飛んでくるわ!


「あたし、ぷえぷえ自信があるんだけどなぁ」

「私もぷえぷえは得意だよ♪ 次はこれやって見る?」

「おお! それは一部の界隈の中で、更にそのニッチな界隈で盛り上がったと言われる伝説の迷作!【スーパーマリコ★ブラザーズDX!】じゃん!」


 あの人気の名作、マ〇オをパクって、大元に訴えられて生産停止になった【スーパーマリコブラザーズDX!】。これ生産停止になっちゃったから、謎にプレ値付いてもう買えない代物よ。何故葵が持ってるのかは謎だけど、アタシも少し気になってたゲームだからこれは良い機会ね。


「てか、何で葵このゲーム持ってるのよ」

「これたまたま友達から貰ったの〜」

「ふ〜ん、そうなんだ」

「私、このゲームで一度配信をした事があるの」

「あ、そうえば葵はゲーム配信してるんだっけ?」

「そうだよ! 西園寺モモネと言う名前でね♪」


 前に葵からゲーム配信を始めたと聞いたわ。あたしはゲームは好きだけど、流石に配信とかはやろうとは思わないわね。


「チャンネル登録者数もう少しで1000人行きそうだよ♪」

「へぇ〜葵凄いわね。1000人超えると収益化出来るんだったよね」

「そうだね〜マリコブラザーズのお陰で最近伸びが凄いんだよ! このゲームはクソ......とてもユニークなゲームだからやってみて♪」

「う、うん......」


 今クソゲーって言おうとしてなかったかしら? まあ良いわ。試しにやってやろうじゃない! スーパーマリコ★ブラザーズ!


「私横で見てるからね。私はこのゲームに関しては、大体網羅したから色々と教えてあげる♪」

「うん、あの......ちょっと近過ぎない?」

「ん? ソンナコトナイヨ」

「何故カタコトなの!?」


 葵があたしの隣りに座るのは良いけど、私の身体にむぎゅっとくっ付いて来たのだ。まあ、これはこれで悪くないから良いんだけどさ。葵から物凄く良い匂いがする......何だろう、この美少女の香りは......どっかで嗅いだ事があるなと思えばシトラスの匂いがするわね。


「明日奈、このゲームの事をざっくりと説明するね。これは横スクロールアクションで、敵がトコトコと湧いて歩いて来るからそれを倒しながらゴールを目指すの」

「その辺は某人気ゲームのマ〇オと同じね。あらすじはどんな感じなの?」

「あらすじは、暗殺者の主人公が公爵家の令嬢セシリアを暗殺しようとして、失敗して捕まる所から始まるの。そして、その暗殺者は公爵家の令嬢に見初められて、メイドとなり長い月日を過ごすの......やがてマリコは主人のセシリアに淡い恋心を抱くの」


 え、このゲーム中世ヨーロッパが舞台なの!? 公爵家何て出て来るんだ......へぇ〜。しかも、ちょっと百合要素が混ざってるのかな?


「そして、公爵家の令嬢セシリアが大魔王によって誘拐され主人公のマリコは、最愛の主人を求めて旅に出ると言った内容かな。まあ、後はやって行けば分かるよ〜」

「え、大魔王? 公爵家の次は魔王が出るんだ」


 何かめちゃくちゃなストーリーになりそうな予感がする。私がタイトルから予想してた内容とは全然違ったわ。


「お、1ー1って出て来たよ」

「これは最初のステージ。このゲーム結構難しいから頑張ってね♪」

「葵、あたしはこう見えてゲームは得意なのよ♪」

「え、私にぷえぷえ50敗してるのに?」

「う、うるさい! あれはたまたま調子が悪かったのよ!」


 全く......てか、葵との距離がめっちゃ近いのは気の所為だろうか? 私の首元に葵の吐息が......これじゃゲームに集中出来ないじゃない!


「あ! このキノコは、確か取ればパワーアップして大きくなるやつだよね? 良し♪ 取っちゃお♪」

「あ! 明日奈そのキノコ取ったら駄目だよ!」



【GAME OVER】



「は? え......何?」

「それ毒キノコだから」

「毒キノコ......!?」


 めっちゃ、ややこしいわ! 何で赤い見た目して毒キノコやねん! 残りのライフ4になっちゃったわ......普通大きくなるとかじゃないの!?


「まあいいわ......おっけ、この毒キノコは取っては駄目なのね」

「うん♪ そのまま横に進んでみて」

「お、何か敵が歩いて来たわよ......てか、ヨボヨボのおじいちゃんが杖をついて歩いて来てるんだけど」


 これ敵と呼べるのかしら? 流石にお年寄りを踏んでしまうのは駄目では......てか、何でおじいちゃんが登場してるのよ!


「ん? 何か白い車が出て来たわよ?」

「あ! こ、これは......低確率で発生するプリ〇スに乗ったおじいちゃん完全体だ! 早く避けないとプリ〇スミサイルが飛んで来るよ!」



【GAME OVER】



「は? マリコ轢かれて死んだ......」

「ちゃんと避けないと駄目だよ。プリ〇スミサイルは当たれば即死だから」

「いやいや!? もう意味が分からないよ!」


 スーパーマリコブラザーズDX......これはとんでもないゲームだわ。開幕早々に2回も死んじゃったじゃないの! 初見殺しが酷すぎるわよ! 何よプリ〇スミサイルって!


「まあ、おじいちゃんだからと言って油断は禁物と言う事ね......」


 良し、こうなれば絶対にこのクソゲーをクリアしてやるわ! 最後まで完走して、エンディングを見てやろうじゃない!


「葵、このゲスい顔したキノコの敵は踏んで大丈夫よね?」

「うん、そいつは踏んだら死ぬよ♪」

「良し、あたし踏むわ!」

「明日奈がね♪」



【GAME OVER】



「何でやねぇ〜〜〜〜〜ん!!!!!!!」







 ――――――数時間後――――――






【あ、貴方は!?】

【ふふ、良くぞここまで来た。マリコよ......大魔王サタニエルさまの四天王が1人! ヘルニアのザドキエルだ! セシリアを返して欲しくばこの私を倒して行け!】


 ヘルニアのザドキエル......そんな腰が悪いなら無理しなくても良いんじゃないかしら? てか、やっと1人目のボスか......ここまで来るのに色々と理不尽な目に合ったわ。


「明日奈、ヘルニアのザドキエルと真正面から挑むのはハードだよ。ザドキエルは、大の熟女好き。さっき洞窟のエリアの宝箱の中に熟女のエロ本があったよね?」

「え、あぁ......謎の熟女のエロ本ね。あ、まさか......」

「このエロ本を賄賂として渡せば通してくれるの!」

「いやいや!? 何そのクソ要素!? しかも、ヘルニアのザドキエルただの腰の悪い中年のおっさんじゃん! しかも、熟女好きの変態......」


 まあ良いわ、この死にゲーのボス戦何てどうせろくなもんじゃないだろう。なら、賄賂で済むならさっさと渡して次に進むわ!


【あ、あの......これつまらないものですが】

【こ、これは......幻の熟女名鑑100選!? マリコ......良いのか?】

【はい、その代わりここを通らせて下さい】

【うむ、良かろう】


 最早シュール過ぎて草超えて森。色々と突っ込み所はあるけど、ヘルニアのザドキエル、賄賂で通してくれるとか魔王への忠誠心無さすぎでしょ!


「おお! 明日奈、このアイテムは超低確率でドロップするアイテム!【美少女の少し汚れたおパンティ】だよ!」

「は?」

「これをマリコに装備させると移動速度がアップする代物なの」


 もう突っ込むのも疲れちゃったわ。葵もこのゲームやり過ぎて完全に麻痺してるのかもしれないわね。




 ―――そして、私はこの時運命的な出会いを果たす事になる




「あら? 葵ちゃんのお友達?」

「あ、楓お姉ちゃん♪ うん、私の友達の明日奈だよ〜」

「え、あ......あたち......あしゅな......」

「可愛いお嬢ちゃんですね♪ 私は葵ちゃんの姉の楓と申します♪」


 突然過ぎて人見知りコミュ障が発動してしまった。しかし、葵にお姉さん何て居たんだ。しかも、超絶美人! とても高校生とは思えない程の胸の大きさ......お姉さんが着ている制服がピッチピチで今にもはち切れそうな程。


「よろしく......お願いしましゅ......」

「あらあら、可愛い♡ 最近の小学生の子はお洒落何だね〜♪」

「ぷぷっ......お姉ちゃん、明日奈は私の同級生だよ」

「ええ......!? 合法ロリなの!?」


 合法ロリって......え、あたし小学生に思われてたの? そんなに幼く見えるのかな......何だか目にホコリが入ったのか涙が出て来ちゃう。


「ごめんね、明日奈ちゃん。良かったら飴ちゃんいる?」

「はい、頂きます......」


 でも、凄い優しそうなお姉さんだな。あたしは一人っ子だから、お兄ちゃんやお姉ちゃんが居る人は少し羨ましいなと思う。


「明日奈、ちょっと休憩しよっか♪」

「うん、結構やってたもんね」


 何だかんだ、スーパーマリコブラザーズDXは結構やりごたえ十分なクソゲーでした。まだストーリー半分も行って無いけど、既にお腹いっぱいになりかけてる。


「明日奈ちゃんよしよし♪」

「あうっ......」

「そんなに緊張しなくて大丈夫だよ♪」


 何か楓お姉さんの頭撫で撫でが、ママに撫で撫でしてもらうのと同じくらいに気持ち良い。葵には口が裂けても言えないけど、アタシは未だにママと一緒にお風呂に入って夜は同じ布団で寝ているわ。


 あたしのお母さんは凄いんだから♪ 女手一つで私を育ててくれて、優しくて頼もしくて兎に角凄いの! 高校を卒業したら、ママには沢山親孝行をして楽をさせてやるんだから!


「ん? どしたの明日奈ちゃん?」

「ママっ......」

「え? ママ?」

「はわわわっ......!? ち、違うのです! ちょっと言い間違えただけ......」

「明日奈ちゃん♡ 良いのよ♪ 私の事をママでもお姉さんとも好きに呼んで♡」


 こうして明日奈は、この日から頻繁に一ノ瀬家へと遊びに行く事になるのであった。


 

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