第111話 お姉さん風を吹かすエルちゃんと【オネエの重鎮 】

 





 ◆エルちゃん視点





「海斗くんと達也くん、お風呂に入ってさっぱりした?」

「はい! 本当にありがとうございます」

「ううっ......久しぶりのお風呂でした。ありがとうございます」


 僕はかえでねーたんの横で話しを聞いていたのですが、この人達も食べ物や住む場所も無く、生きる為にこの家に泥棒に入ったそうです。


 この人達の気持ちは良く分かります。僕も同じ境遇でしたからね......僕は運良くお姉さん達に拾って頂けましたが、世の中には苦しい人達が沢山いるのだ。そう思えば僕は幸せ者ですね......


「良し、紗奈ちゃん♪ 私と一緒にお風呂に......」

「はいはい、楓お姉ちゃんの魂胆は見え見えだよ」

「葵ちゃん、お姉ちゃんの事を一体何だと思ってるのかしら?」

「ん? 救いようの無い変態だと思ってる」

「ぐふっ......まあ、変態は褒め言葉だからね!」

「前は否定してたのに最近開き直って来てるよね。お姉ちゃん......」


 ふむ、ならばここは僕が行こうではありませんか。僕がお風呂について紗奈さんに色々と教えてあげるのだ!


「かえでねーたん! あおいねーたん!」

「ん?」

「どうしたのエルちゃん?」

「ボクがいっちょにはいゆ!」

「え、エルちゃんが?」

「んみゅ! まかちて!」


 昔の僕とはもう違うのだ! ここの家に来たばかりの頃は、色々と使い方が分からなくて苦戦していましたが、今ではお湯も出せるようになり、しゃんぷーとりんしゅを自分1人で出来るようにもなったのだ! しゃんぷーハットはまだ必要だけど......


「良いじゃない♪ エルちゃんもやる気になってるし〜紗奈ちゃん、エルちゃんと一緒にお風呂に入ってくれるかな?」

「是非お願い致します! エルちゃん宜しくね♪」

「んみゅ! こっちなの!」

「あ、ちょっと待って!? エルちゃん!?」


 僕は紗奈さんの手を引いて早速お風呂場へと向かいました。ここは僕がお兄さん......いや、今はお姉さん? として僕が紗奈さんの面倒を見るのだ! 紗奈さんはまだ子供、ここは精神大人の僕が色々と教えて上げる!


「さなしゃん! ここなの!」

「うん♪ 今服脱ぐね♪」

「んみゅ!」


 ほほう、こう思うのは失礼かもしれませんが、まだまだ蕾のように小さなお胸さんですね。僕より少しあるくらい? 何だかお姉さん達の大きなお胸ばかり見てたので、小さなお胸を見るのも何だか新鮮です。


「エルちゃん、準備おけだよ」

「んみゅ! こっちすわるの!」


 ――――――ふふ、ふははははははははは! きっと紗奈さんもこの家のお風呂には驚く筈です。ここのレバーを開くと何とお湯が簡単に出るのだから!



「さなしゃん! これひねるとね、しゅごいの! なんとおゆでるの!」

「うんうん♪」

「みてて! ほら!」

「お〜凄いね♪」


 うふふ、紗奈さん驚いてるぞ。僕も初めてお湯を見た時は目ん玉飛び出るかと思ったもん。反対側にひねると水が出るしこれは素晴らしい魔道具なのです!


「ボクがあらうね!」

「え? エルちゃんが洗ってくれるのかな?」

「んみゅ!」


 我が家のしゃんぷーとりんしゅは物凄く良い匂いがするのです! しかも、これを付けてゴシゴシ洗うと髪の毛に艶が出て綺麗になる優れもの! 僕の長い金髪の髪の毛もこれのお陰で艶が出て滑らかなのです♪


「エルちゃんありがとね〜うふふ♡」

「それでね! これがしゃんぷーなの! こっちがりんちゅ! これがぼでぃ〜ちょーぷ!」

「うんうん♪ 知って......そうなんだ!」

「んみゅ! ここをおすとね......ほら! あわあわしゃんでゆの! それでね、ちゃんぷーがさきなの! りんちゅはさいご!」

「そかそか♪」


 紗奈さんの僕を見る目線が何故だか暖かいです。まるでかえでねーたんやあおいねーたんが笑顔で僕を見つめているときの様な目ですね。


「良し! ここは歳上として、私がエルちゃんを洗ってあげるね♡」

「むむ......ボクがおねえしゃんなの!」

「おお〜背伸びしたいお年頃だもんね♪ エルちゃん可愛い♡」


 どうしていつもこうなるのだ!? 結局僕は紗奈さんに抱っこされて強制的に膝の上に移動をする事になりました。これではいつもかえでねーたんやあおいねーたんと入る時と同じだよ......


「エルちゃんの髪の毛綺麗だね〜羨ましいなぁ」

「んみゅ?」

「私も生活にもし余裕が出来たら。色々とお洒落したり髪の毛伸ばしたりしてみたいけど......私みたいな家も無い明日食べるご飯すら無いような人間が、それを望むのは間違っているよね......」

「むむ! それはちがうの!」

「え、エルちゃん?」


 紗奈さんの気持ちは痛い程に良く分かります。僕自身もスラムで生活している頃は、家も無く毎日酷く臭うようなゴミ溜りをベッドにして寝ていましたからね。明日食べるご飯どころか、今食べるご飯すらありませんでした。でも、奴隷だろうが、スラムの貧民だろうがそんな人間でもみんな幸せになる権利があるのです! 


 あの頃の僕なら今の紗奈さんと同じ事を考える事もあったと思う。でも、今はお姉さん達と暮らして、色々な人と交流する内に考えが変わって来たのだ。人は助け合いが大切。


 かえでねーたんに教えて貰った事ですが、人には優しくし、困っている時に手を差し伸べてあげるとそれがいつか自分にも帰って来る。お互いウィンウィンと言うそうです。


「よちよち♡ ボクもおてちゅだいするから! いっちょにがんばろ!」

「エルちゃん......むぎゅ♡ ありがとう!」

「んみゃ......!?」


 しかし、現実問題お金に関しては僕も難しいです。僕の毎月のお小遣い500円を渡したとしても焼け石に水です。お皿洗いや床磨き等のお手伝いをして、コツコツと貯めたヘソクリを合わせても恐らく700円......ぐぬぬ。お手伝いするとは言っても僕に何が出来るのだろうか?


「エルちゃん抱いたら元気出て来たよ♪ 私ももう少し頑張ってみようかな」

「ほんとぉ?」

「うんうん♪ 良し、紗奈お姉ちゃんがシャンプーしてあげるね♪」

「むむ! ボクがおねえしゃんなの!」

「ええ〜そうなの? じゃあ、エルお姉ちゃん?」

「んみゅ!」


 本来ならばお兄ちゃんなのですが、まあお姉ちゃんでも悪くはありません。僕は何処へ行ってもみんなから子供扱い......ましては赤ちゃん扱いですよ! こうしてお姉ちゃん風を吹かせてみたかったのだ♪


「うふふ♡ あれれ? エルお姉ちゃん〜その手に持ってるのはシャンプーハットかな?」

「ふぇ? こ、これは......しょの」

「私のお姉ちゃんなら、シャンプーハットは卒業しないとね♪」

「............」

「クスクス♪ 嘘だよ♪ 無理しなくても大丈夫、エルちゃんのお年頃の子は付けてる子も沢山居るよ♪」


 むむ......ここでシャンプーハットを付けてしまうと負けな様な気がします。泡が目に入ると痛くて涙が出ちゃうんだよねぇ......だけど、僕もそろそろ卒業を迎える頃であろう。いつまでもしてたら、かえでねーたんにも笑われてしまう。


「なしであらうの!」

「え? 本当に大丈夫?」

「んみゅ! おとこに......にごんは......ないの!」

「ぷっ......エルちゃんは女の子でしょ?」


 何だか紗奈さんのペースに乗せらている様な気もしますね。ぎゅっと目を閉じればきっと大丈夫。


「じゃあ洗うね♪」

「......!!」

「大丈夫だよ〜落ち着いて♪」

「んん!」





 ―――数分後―――






「お〜エルちゃん良く頑張ったね♪」

「んみゅ!」


 やった! 後でかえでねーたんやあおいねーたんにシャンプーハット無しでも髪の毛が洗えたと報告するのだ! きっと僕の事を褒めてくれて、頭を撫で撫でしてくれるに違い無い!


「これで、ボクがおねえしゃんなの!」

「あらあら。そうだね〜エルお姉ちゃん♪」

「えへへ♡」

「はぅ......♡ か、可愛い♡」

「ふぁ!?」


 何か紗奈さんが、興奮した時の様なかえでねーたんと表情が似ています。そして、紗奈さんと他愛ない話しをしながら髪の毛と身体を洗い終えて浴槽の中のお湯に浸かりました。


「ふぅ......気持ち良いね♪」

「あたたかいの!」


 いつ入ってもお風呂は贅沢ですね〜身体の芯まで温まり疲れも取れちゃうし♪


「んにゅ〜」

「エルちゃん、私の膝の上においで♪」

「んぅ?」


 これでは紗奈さんがお姉さんみたいでは無いだろうか......でも、ここで僕が紗奈さんの膝の上に行かないときっと紗奈さんは泣いてしまうかもしれません。人の温もりを感じたいお年頃なのでしょう。所で紗奈さんは何歳なのかな?


「さなしゃん、いくつなの?」

「ん? 私の年齢?」

「んみゅ!」

「私は中学1年、今は13歳だよ〜」

「ふぇ!?」


 紗奈さん、男だった頃の僕と同じ年齢だったのか! 何か雰囲気からしてもう少し幼いイメージがあったのですが、人は見掛けでは分かりませんね。


「エルちゃんは何歳なのかな?」


 ここは素直に13歳だと言っても鼻で笑われるだけでしょう。今の僕の年齢は、かえでねーたんとあおいねーたんが、4歳くらいと言ってたので4歳にしておこう。


「4ちゃいなの!」

「おお! そかそか♪ エルちゃんは大きくなったら、何か夢とかはあるの?」

「んみゅ! みくるたんみたいな、ぼーけんしゃになるの!」

「みくるたん?」

「まほーしょじょ、みくるたん!」

「あぁ、子供向け番組の少しアダルティな要素が入ったアニメだったけ」


 アダルティ? 番組? アニメ? まだまだ僕の知らない言葉が沢山出て来ますね。


「冒険者かぁ......何だか楽しそうだね」

「ボクね、おかねたくしゃんかせぐの! かえでねーたんやあおいねーたんにおんがえちしゅるの! それでね、かえでねーたんと......しょうらいけっこんしゅる!」

「あらまぁ♪ エルちゃんは優しくて良い子だね♪ よしよし♪ お姉さん達もきっと喜ぶね♪」


 うっ......紗奈さんに頭撫で撫でされるの結構気持ち良い。思わず身体から力が抜けてしまいます。


「エルちゃんの肌スベスベでモチモチしてて気持ち良いね♪」

「ぐぬぬ......」

「頬っぺたムニムニ〜♪」

「むっ! こちょこちょちてやるの!」

「え? 私にこちょこちょ攻撃は聞かないよ?」

「ふぇ?」


 な、何故だ!? 紗奈さんにこちょこちょ攻撃をしても何処も効かない......かえでねーたんやあおいねーたんですら、こちょこちょ攻撃が効く部位があると言うのに......


「エルちゃんにお返しするね♡」

「んみゃ!? め! そこはメッなの!」

「耳や首周りが駄目なのかな? じゃあ脇やお腹とかは?」

「あはははははははは! はんそくなの!」


 エルちゃんは紗奈のこちょこちょ攻撃で撃沈するのであった。






 ――――――――――――






「あ、エルちゃん、紗奈ちゃんおかえり〜」

「んみゅ......」

「楓さん、葵さん、お風呂ありがとうございました♪」

「いえいえ、さあ紗奈ちゃんもエルちゃんもこっちおいで♪ もうそろそろ早乙女キララさんが来るから、みんなでご飯にしよう♪」


 ふむ、キララさんが久しぶりに来るんだ。出会った当初はとんでもない化け物だと思ってたけど、キララさんは見た目によらず繊細で優しいお人です。今では僕のお友達でもあるのだ!


「あ、キララさん来たかも。ちょっと出て来るね〜」


 今回はどんな衣装で登場するのだろうか。出会う度にド肝を抜かれるような悍ましい......いや、奇抜な衣装で登場するものだから心の準備をしておかないと夢にも出て来そうだ。


「あんらぁ〜♡ みんなお久しプリッツ♡ んふ〜♡【マヂキチ悩殺ポーズ】」

「キララさん! 久しぶり〜さあ、こっち座ってよ!」

「葵ちゃんも元気そうで何よりだわん♡ あ、頼まれて来たセンタッキーのチキンとスーパーで飲み物とお菓子も沢山買ってきたわよん♡」

「ありがとね♪ 後でお金渡すから!」

「良いのよん〜お金はいらないわん♡」


 あおいねーたんとかえでねーたんは普通に対応しているのですが、海斗さん達は口を開いて呆然としています。まあ、その気持ちは分かりますよ。今日の服装もとても......


「キララさん、今日の服装は地雷系のゴスロリファッションですか?」

「そうなのよぉ〜楓ちゃん分かるぅ? あたし似合うかしら?」

「うんうん♪ とても良い味出してると思いますよ♪」


 この全身黒いフリフリの付いた服装は、ゴスロリと言うらしい。と言うかキララさんの筋肉ではち切れそうなのだが......心の準備をしなかったら、危険指定ランクS級のメデューサよりも危ないかもしれません。石化どころかこの先の人生にて、夢でもキララさんが出て来そうな恐怖がありますね。


「エルちゃんもお久しプリッツ♡ 良い子にしてたかしらぁん?」

「んみゅ! お久しぶりなの!」

「あらあら、前より言葉がお上手になったわねぇ〜エルちゃんの大好きなお菓子やジュースも沢山買って来たわよん♡」

「むむ!? わぁ〜い♡ おかち!」


 やったぁ! 僕の大好きな食べ物が沢山ある! キララさんはやはり良い人です♪


「そちらのそそる様な顔をしてるキャンディーちゃん達が、例の子達ねぇ?」

「は、はひ......ぼ、ぼぼぼ」

「あらやだぁ♡ そんなに怯えなくても良いわよん♡ 貴方、将来有望なノンケね♡ 今のうちにマーキングしとこうかしら♡ 貴方達、名前は?」

「か、海斗です!」

「達也です......」

「紗奈です!」


 3人とも壊れたロボットの様に固まっていますね。キララさんのインパクトは一生忘れる事は無いと思う。


「じゅるり......良い男♡ 海斗くん、達也くん♡ 貴方達、良い顔してるわねぇ♡ 話しは聞いてるわよん♡」

「は、はい......すみません......」

「まあ! そんな暗い顔をしないでちょうだいな♪ さあ、まずはご飯を食べながら話しましょ♡」


 こ、こりわ......骨付きのお肉! オレンジジュースやコーラのシュワシュワもあるぞ! うひょおおおぉぉ! ぽてと、おいちそうなパンケーキ!


「こらこら、エルちゃん〜? つまみ食いは駄目でちゅよ? 今からお皿の準備するから待ってね♪」

「エルちゃん、お姉ちゃんの膝の上においで♡」

「んみゅ! かえでねーたん! ごちそ〜たくしゃん!」

「そうだね〜キララさんにお礼言わないとね♪」

「きららしゃん、あいあと!」

「んふぅ〜♡ エルちゃんも沢山食べてちょーだい!」


 僕はキララさんにお礼を言ってから、かえでねーたんの膝の上に座りました。ご馳走を目の前にすると思わず興奮してしまいます!


「葵さん! 私もお手伝いします!」

「自分も手伝います!」

「お、俺も!」

「ありがとう、紗奈ちゃん達は座って待ってて♪」


 何かこんな大人数でご飯を食べるのは久しぶりなのでワクワクするね♪ やっぱり美味しいご飯はみんなで食べるのが1番です!


「では楓ちゃんとエルちゃんの横に失礼するわねぇ♪」

「キララさん、電話越しでも内容は伝えたと思うのですが、この子達のこれから......何か良い案はありますかね?」

「アタシね、その話しを聞いて少し考えてたのだけど、海斗くん、達也くん、紗奈ちゃん。アタシの経営するゲイバーで働いて見ないかしらぁん?」

「「「えっ......」」」


 げ、ゲイバー。キララさんから話しは聞いた事があります。何でもキララさんみたいな濃い人達が集まり、お客さんをおもてなしをすると言う大人向けのお店だそうです。


「丁度ローズの店が人手が足りなくて困っていたのよぉん〜勿論、貴方達はまだ未成年。裏方でお皿洗いやお掃除がメインとなると思うわん。お給料もしっかり出すし、住む家も用意するわよぉ♡」


 3人とも驚いた様な顔をした後に恐る恐るキララさんに問い掛ける。


「あ、あの......僕達は悪い事をしたのに何故、こんなにも良くしてくださるのでしょうか?」

「うふふ、歳をとって来るとね......何かとお節介したくなるのよん。アタシも貴方くらいの頃に周りに沢山迷惑を掛けてねぇ。学校も辞めて、親にも勘当されてどうしようも無い人間だったわぁん......それでも、周りの人達に助けられて今のアタシが居る。一度道を踏み外したからと言って、人生は終わりでは無いわよん」


 珍しくキララさんが真面目な表情で話してる。でも、僕もキララさんから多くの事を学んだ。そして、まだまだこの人からは学ぶ事は沢山ある。キララさんも相当辛い想いをして来て、人の痛みが分かるからこそ、その言葉には重みがあるのだ。


「人生と言うのは、いつだって上手く行かないわ。人の悩みは尽きる事は無い。誰もが羨むお金持ちの人も大きな悩みは沢山抱えているわん。どんなにお金や権力を持っていても幸せと言うのは簡単に掴めないものなのよ」


 キララさんは遠い目をしながら、昔を思い出すかのように語り続ける。


「今の状況は確かに苦しいものだと思う。でもね、そう言う事を経験するのは、アタシはお金では買えない素晴らしい宝物だと思うの。一度ドン底まで落ちたら、後は這い上がるだけ。例えるなら、貴方達はダイヤモンドの原石と同じよん。磨けば磨く程に輝くダイヤモンド。辛い社会の理不尽の波にも揉まれ、飢餓や肉体的にも限界の所まで追い込まれ、両親も亡くし心の拠り所を失っても尚、貴方達はここまで頑張って生きている。貴方達にはダイヤモンドと同じ輝きが見えるわん。もっと自分を誇りなさい!」


 3人は俯き始めて静かに嗚咽を漏らした。


「確かに貴方達がやろうとした事は、決して褒められる事では無いわよね。でも、貴方達の人生まだまだこれからよん。海斗くん、貴方は学校を辞めても尚、弟さんや妹さんの為に働いて頑張ったじゃないの♪ アタシはその話しを聞いた時、素直に凄いなと思ったわん♪ お節介かもしれないけど、手を差し伸べたいとアタシは思ったの」


 やはり、キララさんは良い人だな。昔、スラムで助けて貰った冒険者のおじさんを思い出すな。


「この先もまだまだ辛い事は必ず来るわ。どれだけ己の弱さや不甲斐無さに打ちのめされようとも......決して諦めないで。人生は最後まで希望を捨てたら駄目よ、諦めたらそこで全てが終わってしまう。どんなに傷付いても、手の平から零れ落ちる砂のように大切なものを沢山失ったとしても......3人で力を合わせて、人生を生きるのよ♪ 辛い時は沢山泣いたって良いのだから♪」


 キララさんは3人を優しく包み込む様に抱きしめる。


「キララさん......おれ......俺!」

「うわあああああんんんんん!!」

「ううっ......ありがとうキララさん......」


 ううっ......僕も歳をとったかな。目に熱いものが......僕も頑張るぞ!


「止まない雨は無い......今は激しい雨が降り注いで居るけども貴方達の人生は今後、素晴らしい快晴になるわよ♡」




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