第56話 集う四天王
◆
「奏ちゃん大丈夫だよ、きっとエルちゃん無事に見つかるわよん」
「店長.......はい! そうですよね。これだけの人数が揃えば.......私も葵さんや楓さんの力になりたいです!」
早乙女キララさんが経営してる明智商店には、総勢50名近くのオネエ達が集まっていた。今も尚続々と明智商店に集結している歴戦の猛者達。様々な多種多様な変態.......屈強な女装をした厚化粧の男達が真剣な面持ちで待機している。皆キララさんの一言で集まったその道のプロなのだ。
「皆、集まってくれてありがとう!」
「愛しのお姉たまの為なら例え火の中、水の中、尻の穴でございますぅ♡(野太い声)」
「あちき達に任せてくだせえ! あたいの上腕二頭筋でお嬢ちゃんを見つけて見せるわん♡」
「アタイのフェロモンでお嬢ちゃんを惹き付けて見せるわん♪ うふんっ♡(マヂキチSmile)」
地獄絵図かな? 皆んな善意で集まってくれてるのは有難いですが、変態と言うかむさ苦しい.......と言うより何処のコミケ会場なのでしょうか.......全員男なのに婦警、メイド、ドレス、海パン、つなぎ、スク水、セーラー服、チャイナ服.......まともな服を着ている人が一人も居ません! キララさんが言うにはこれが普通だと言うのです。しかも、早乙女キララ四天王の【おゲイの帝王ベリアナ】、【悩殺のローズ】、【男喰らいのステファニー♡】、【両刀のマルビッチ】と言う方達はキララさん曰くレベルが高いそうです。
「むっ、来たわね。キャンディーちゃん達が!」
「あ、あれが四天王ですか.......ごくりっ(今回は絶対に突っ込みませんからね)」
明智商店の店の扉がゆっくりと開かれる。気付けば他のオネエ達は皆道を譲っていた。圧倒的存在感、謎の威圧感、溢れ出る只者では無い気配。店に入ってきたオカマの名前は四天王の一人、【おゲイの帝王】の異名で知られるベリアナだった。
「キララお姉たま。お久しプリッツ♪ ここに来る前に警察ちゃんに補導されちゃったん♡ 露出を控えて下さいと厳重注意を受けちゃったわん〜あちしの魅力にやられちゃう所だったのかしらねぇ? あ、ごほんっ.......この不肖ベリアナ、キララお姉たまの要請により参上つかまつりました」
そらそうでしょうね.......青色のビキニって.......せめて服着て下さい! 黒のツインテールに赤いハイヒール、そして青色のビキニ.......しかも、胸毛や足の毛を剃っていない! 通報案件ですよ!? 失礼な言い方になるかもしれませんが、まるで艶のある黒いツインテールのカツラを被ったゴリラにビキニを無理矢理着せたようなものですよ。てか、良くその格好で捕まらなかったですね.......
「ベリアナァ、久しぶりねぇ〜貴方の魅力は十分溢れ出ているわん♡ 服を着ないと周りの人がその魅力にやられちゃうから、ちゃんと服を着てちょーだいね♪ そして、来てくれてありがとう。他のキャンディーちゃん達は?」
「他のおゲイ達もそろそろ到着するかと思われます。ん? あんらぁ?」
あ、やばい。ベリアナさんと目が合ってしまった。失礼の無いように一応自己紹介だけしておこう。
「は、初めまして.......キララさんのお店で働いている一ノ瀬 奏と申します。よろしくお願いします」
「可愛い子じゃなぁい♡ 私の事は親しみと愛称を込めて、ベリちゃんと呼んでね♡ 心配しなくても大丈夫、私は男にしか興味無いのよ♪ 特技はノンケかどうか瞬時に見極められる事。趣味はノンケを私色に染めること♪ ノンケのケツを求めて三千里〜狙った獲物は
「あはは.......そ、そうですか」
誰もそんな事聞いて居ないのですが.......名前からして男が好きなホモなのですね。あれ? ゲイとホモって意味同じだったけ? しかも、ゲイにおを付けるだけで何故かおゲイと言う言葉に品格を感じてしまう。てか、私は一体何を考えてるんだろ.......
私がそんなどうでも良いような事を考えていると明智商店に只ならぬオーラを纏とった品格を感じさせるようなやばい人が入って来ました。と言うかさっきからやばい人しか居ません。
「お久しぶりでございんす〜キララお姉たまの右腕、【両刀】マルビッチ華麗に参上なのでありんす♡」
「マルちゃんお久しぶり! 来てくれて嬉しいわぁん♡」
「お呼びとあれば何時でも〜親友の葵ちゃんと楓ちゃんの頼みですし。全力で事に当たりたいと思いんす」
吉原遊郭に出て来そうな黒に艶やかな模様の入った豪華な着物を着ている御仁の名前は、【両刀】の異名で知られるマルビッチと言うそうです。爽やかなイケメンが着物を着る姿は絵になりますね。マルビッチは銀座や歌舞伎町に沢山のゲイバーを抱えるカリスマ溢れるオネエさんだ。
「綺麗.......あの、本当に男の方ですか?」
「あら? 貴方はもしかして奏ちゃんでありんすか? うふふ.......私は男だけどどっちも行けるのでありんす♡ 攻めでも受けでもばっちこいなのでありんす」
流暢に廓言葉を使いこなすその姿は、まさにエレガント。でも、私は男よりも可愛い女の子が好きなので恋愛としては対象外ですね。やはり、女の子同士が至高! いつかは楓ちゃん、葵ちゃん、エルちゃんを私のものに.......
「これだけの数のオネエさん達が集まるなんて.......やはりキララさんは凄いですね.......」
「そんなこと無いわよん〜男の尻を追いかけてたら、いつの間にか同士が集まってただけよん。奏ちゃんはぷりてぃーな女の子だから、この気持ちは分からないかもしれないわね.......」
「キララさん.......趣味は人それぞれですよ! 私も三度の飯より女の子が好きですし。将来は美少女ちゃんと結婚したいです! 私は女の子同士でも愛さえあれば問題無いと思います!」
何だかこれ以上話すと色々と脱線してしまいそうですね。今回の目的はエルちゃんを無事見つける事なのです!
そして、また一人明智商店に凄まじい雄叫びを上げて入って来た人物がいた。またしても只者では無い変態界の奇行種。そこには、純白のウエディングドレスとブーケを持ったゴリラが居た。
「うぉぉぉぉおおおおおおおおおおあああああおん.......!! お姉たまぁん♡ 遅くなり申し訳ありません! 今日の下着が決まらなくてぇ.......」
「ローズ、良く来てくれたわね。大丈夫間に合ってるわよん」
あかん。私の思考が停止してる。何故ウエディングドレスなのか.......流石キララさんの四天王.......色々と格が違う。個性が強すぎます!
「アーメン.......」
「あら! ステファ!」
「キララお姉たま、お久しぶりでございます。本日は私達に任せて下さいませ」
早乙女キララ四天王の純白のウエディングドレスを身に纏った【悩殺のローズ】、紺色と白のシスター服を着た【男喰いのステファニー】が明智商店に到着した。ついに早乙女キララ四天王の面々が揃ったのだ。
「あら? ステファ二ーのお化粧、それって.......もしかしてレーベル社のお化粧品じゃないの!? それちょー高いやつじゃない!」
「あら? 気付いてしまいましたか.......ローズもウエディングドレスが輝いていますね」
「あらやだ♡ 貴方のシスター服も似合ってるわよん♪ 今度そのお化粧試しに購入してみようかしら」
ふーん、【男喰いのステファニー】。見た目はシスター服を着た20代後半の眼鏡を掛けたお兄さん何だけど、それ以外は至って普通ですね。この人は恐らくノンケでしょうか? 四天王の人にもまともな人が居たのですね。
「今日は何も無ければ神様に懺悔しながら、初物の男達を食べようと思ってたのです。男達の手足を縛ってから、怯えた顔を見るのが堪りません。ゾクゾクしちゃう♡ あぁ、実に背徳的だ.......アーメン」
前言撤回です。ステファニーさんは、普通にやばい人でした。流石キララさんの四天王です。私みたいな一般人では到底太刀打ち出来ません。
「皆んな、改めて集まってくれてありがと! 今日は楓ちゃんや葵ちゃんの妹さんが行方不明と言う事件が発生したわん。今日は幼い妹さんのエルちゃんを手分けして探して欲しいの!」
「お姉たま、そのエルちゃんという子の写真はあるのでありんすか?」
「葵ちゃんから許可は得てるわよ。これが例のエルちゃんよ」
早乙女キララは四天王を含めたキャンディーちゃん達に写真を渡す。オネエ達はエルちゃんの写真を見た瞬間、口を開けたまま全員絶句してしまった。
「何て、何て愛らしい子なのかしら.......しかも、金髪の上にエルフのコスプレですって!? ウオオオオオオオッ.......!!」
「天使だ.......天使がいるわん!」
「お持ち帰りしたいわぁん〜♡ 庇護欲がそそられる」
「頭なでなでしたいです!」
「一緒に遊んであげたいでありんすね♪」
エルちゃんの写真を見たオネエ達が大いに盛り上がっている。一部発言が危うい人も居るが、皆んなエルちゃんの可愛さにやられていた。
「さて、時間は無いわよ。ベリアナ! 貴方達は1丁目から2丁目の区間を頼むわ。マルビッチは3丁目から4丁目、ステファは5丁目から6丁目付近をお願いするわん! ローズはあたしと一緒に来てちょーだい!」
キララの言葉でここに集ったオネエ達が全員動き出す。
◆エルちゃん視点
「店員さん、ありがとうございました!」
「―――――――――♡」
僕は店員さんにお礼を言ってお店を後にしました。店員さんは最後まで目をハートにしながら、僕の身体にムギュっと抱き着いて来て、離れる気配が無かったのでその様子を見てた目付きの怖いお姉さんが間に入って、僕と店員さんを優しく引き剥がしてくれました。お金はどうやらあれで足りたみたいなので良かったです。
「ぐふふ.......かえでねーたんとあおいねーたん、喜んでくれるかな?」
どうやら僕が先程購入した美味しそうな食べ物の名前は、【けーき】と言う名の食べ物だそうです。店員さんが何度も指を差して呼んで居たので間違い無いです。僕はまたひとつ新しい甘い食べ物の名前を覚えました!
「――――――?」
「だ、大丈夫です! このけーきは僕が持ちます!」
エルちゃんは伝説の杖を脇に抱えながら、両手でケーキの入った白い大きな箱を持って歩き始める。優花と真奈はエルちゃんが大きなケーキを持つのは大変だろうと思い持ってあげようとするのだが、エルちゃんは自分で持つのだと白い箱を宝物のように抱いている。優花と真奈はそんなエルちゃんの愛らしい様子を見て微笑んでいた。
「お姉さん達もありがとうございます。この恩はいつか必ず!」
僕達が道を歩いていると前方から、女性の格好をしたヤバそうな男達が何やらヒソヒソと会話をしながら僕の前までやって来ました。
「ふぇ? な、何なのですか? ま、まさか!?」
「――――――!」
「くっ.......狙いはこの最高級の【けーき】か!? これはかえでねーたんとあおいねーたんと一緒に食べるものだから、渡しませんよ!」
横を見るとお姉さん達は顔を青ざめていました。あの目付きの怖い、人を殺してそうなお姉さんまでビビっています。この変態さん達は只者ではなさそうです。
「仕方無い.......お姉さん達はこれを持って逃げて下さい! ここは僕が
「――――――!?」
「大丈夫です。僕にはこの伝説の杖がありますから!」
僕は伝説の杖を両手で持ち迎撃態勢に入りました。このお姉さん達を巻き込むわけには行きません!
「――――――♡」
「ん? 何だ?」
女性の格好をした男達が急に身体をくねくねとさせて、目をハートにしています。まさか、この伝説の杖には魅了させることの出来る属性が付与されているのだろうか? これは好機だ! 行けるぞ!
「僕の名は、将来有望な冒険者になる予定の大魔法使い(自称)エルだ! いざ尋常に勝負!」
「――――――?」
「なぬ!? いつの間に僕の背後に!?」
僕は前に居る女装をした男達にばかり意識を向けていたせいで、背後に居た変態さんに気が付きませんでした。しかも、この変態さん.......只者ではなさそうです。プロの暗殺者かもしれません。身に纏う気配もやばい。
「ふぁっ.......!? か、返せ! 僕の伝説の杖!」
「――――――♡」
「くそ、身長がデカいからって.......僕を弄ぶとは良い度胸ですね」
僕の戦いはこれからだ。この危機を必ず乗り越えてやるのだ!
◆
楓は現在、堤防の河川敷付近を捜索していた。服はびしょ濡れで、シャツの上からブラジャーが薄らと見えている状態だ。エルちゃんを探し初めてからもう半日が既に経過しようとしていた。辺りは薄らと暗くなって来ており夜の帳が降りようとしている。楓はかつてないほどに内心焦っていた。
「エルちゃん〜! エルちゃあああああんっ! 何処に居るの! 居たら返事して!」
エルちゃん.......本当に何処にいるの? 近場はほとんど探したけど、見当たらない。もしかして、本当に誘拐されたのかしら.......ど、どうしよう。神様、お願いします。エルちゃんがどうか無事に帰って来ますように.......うぅっ.......
「あ、お姉ちゃん! びしょ濡れじゃん! 風邪引いちゃうよ!」
「私は大丈夫だよ。葵ちゃん.......そっちはどう?」
「ううん.......あちこち探したけど居なかった。エルちゃん大丈夫かな? キララさん達も親身にエルちゃんの事探してくれてるけど、未だに.......」
楓と葵は内心不安と恐怖に襲われていた。2人にとってエルちゃんは、かけがえの無い大切な可愛い妹なのだ。
「お姉ちゃん、一旦帰って着替えて来たら?」
「いいえ、私はエルちゃんを見つけるまでは帰らないよ! 1分1秒でも早く探し出さないと。もう暗くなって来たし.......エルちゃん大丈夫かしら.......もしかしたら、変態不審者さんに襲われて、監禁されてあんなことやこんな事をされてるかもしれないわ! 世の中ロリコン何ていくらでも居るから.......ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ.......エルちゃん!!!!」
「お、お姉ちゃん落ち着いて! 気持ちは分かるけど焦っても現状は変わらないよ」
焦っては駄目だと分かっていてもどうしても焦ってしまう。ここまで探しても居ないとなると何か事件に巻き込まれているのでは.......うぅっ.......また涙が出て来た。もう雨に濡れながら沢山涙も流したせいで、今の私はかなり不格好でしょうね。でも。エルちゃんの為なら私は何だってする覚悟よ!
「葵ちゃん、警察やキララさん達から連絡無い?」
「うん、今の所無いよ.......お姉ちゃん、私もう一度家の近辺探してみるよ」
「私も公園とコンビニ近辺もう一度探してみるよ」
私と葵ちゃんが行動を開始しようとしたその時でした。葵ちゃんのスマホが鳴ったのです。
「お姉ちゃん、ちょっと待って! キララさんから連絡が!」
「え! キララさんから!?」
何とエルちゃんが見つかったそうなのです! 何と近場のケーキ屋さんから出て来た所をローズさんが発見したとの事です!
「エルちゃああああああああぁぁぁっんんんん!!」
「お、お姉ちゃん!?」
「葵ちゃん! 早く行くよ!」
私達は猛ダッシュでエルちゃんが居るとされるケーキ屋さんの近くに向かいました。
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