第51話 楓の職場
◆
「はぁ……はぁ……ま、間に合った」
家から全速力で走ってきたので息が上がってしまいました……休み明けの朝から遅刻するとは思いませんでしたよ。
「うぅ……やけに男性からの視線が多いなと思ったら、私のスカートの裾がめくれてパンツが……あぁ……恥ずかしい」
穴があったら入りたいとはまさにこの事ですね……しかも今日私が履いてる白いパンツ、これ葵ちゃんのだし……でも、もう過ぎた事は仕方ありません。良い事を考えましょう!
「うふふ……エルちゃん♡」
今朝はエルちゃんが私の足に、泣きながら抱き着いてくる姿が可愛い過ぎて死にそうでした♪ いえ、もう100回くらい死にました♡ エルちゃん私の事が好きなのかな? だとしたら嬉しいなぁ♪ 私もエルちゃん大好きだよ♡
「ディフフ……」
「あ、あの……楓先輩?」
「ふぁっ!? び、びっくりした……ごほんっ。舞香さんおはよう♪」
この子は職場の後輩で、名前は
「楓先輩がこの時間に来るなんて、珍しいですね」
「朝寝坊しちゃって……えへへ。あ、そうえば舞香さん、明日の会議の資料間に合いそう?」
「うっ……何とか頑張ってみます」
「私の仕事終わったら、そっちも手伝うからね♪」
「楓先輩……ありがとうございます!」
さて、パソコンの電源を立ち上げてと……今日のやる事は……
「ごほんっ。一ノ瀬君おはよう」
「あ、田中課長……おはようございます♪」
私の部署の田中課長です。年齢は40代中半で、頭が少し寂しい小太りの男性の方です。私に良く話し掛けて来るのですが、正直あんまり関わりたくはありません。
「良かったら今夜、仕事終わりにフランス料理を食べに行かないかい? 僕の奢りだよ」
「今夜は用事があるのですみません……」
「なら明日はどうかね!? 何なら明後日とかでも!」
「田中課長、落ち着いて下さい」
田中課長の視線が私の胸に向けられています。鼻を伸ばして下心丸出しですね……私は仕事を早く終わらせて帰るのです! 家には私の可愛い妹達が待っています。もしかしたら、エルちゃんが今頃寂しがって泣いているかもしれません。早く仕事を終わらせて定時に上がろう!
丁度その時、タイミング良く会社の始業のチャイムが鳴ります。田中課長は残念そうな顔をしながら自分の席へと戻って行きました。
「ふぅ……私もこの資料早く作成して、定時に帰るぞぉ! あ、その前に……」
会社の引き出しの中にエルちゃんの写真を入れておきましょう。休憩時間にエルちゃんの写真を見て回復を……
「あら? 一ノ瀬さんその子は誰ですか?」
「あぁ、この子は訳あって私の家族になった妹のエルちゃんです♪」
「ふわあぁぁ……めっちゃ可愛いですね!」
「私の妹は可愛いよ♪」
舞香さんが写真を凝視して頬を赤く染めています。エルちゃんの秘蔵の寝顔写真です♪ エルちゃんが私に抱き着きながら寝ている時に撮った素敵な1枚なのです!
「楓先輩羨ましいなぁ……私は兄が3人居て暑苦しいです。私もエルちゃんみたいに可愛い妹が欲しかったです……」
「うふふ……機会があったら会わせてあげるよ♪」
「おお! 是非お願いします!」
よし、そろそろ気合いを入れて仕事に取り掛かるとしましょうか!
―――1時間後―――
「一ノ瀬さぁん、後で資料ダブルチェックお願いします」
「一ノ瀬さん、ここの機能使い方が分からなくて……」
「一ノ瀬さん! ちょっと宜しいでしょうか?」
「一ノ瀬君、お茶入れてくれないか?」
「一ノ瀬さん、今夜の夜どうかな?」
「一ノ瀬さん! 愛してる!」
ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛……発狂しそうです。男性陣は一体何なのですか!? 仕事が進まないじゃないですか!
「後で資料見ますのでそこに置いといて下さい♪ 下野さん、ここの機能はこうしてこう使うのです! 課長、お茶はもう少し待って下さい。佐藤さん、今夜は私用事あるのですみません。 霧島さんどうしましたか?」
「ここのプログラムが上手く動かなくて……」
「あれ? これバージョン古く無いですか? 最新版のマクロ使って直して下さい。ここのサーバーに雛形データ置いてあるので。使い方の手順のマニュアルもPDFで入ってます」
この部署は人は多いですが、女性の人数はそんなに多くはありません。しかも、何故なのか男性陣は私にばかり声を掛けて来ます。他に仕事に詳しい人なら沢山居るのに……
「一ノ瀬君、今夜飲みに行くんだけど、君もどうかね?」
「青島部長……すみません、今夜用事がありますので……」
もうやだ、お家に帰りたい……エルちゃんとイチャイチャしたい。休み明けは色々としんどいですね。とほほ……
◆会社員
「ん〜やっと昼休みかぁ」
今日こそは、仕事終わりに一ノ瀬さんをディナーに誘うんだ! うちの会社の高嶺の花とも言われている、セクシーで優しくて美人で……スタイル抜群で、もう全てがExcellent! マジで可愛い。
「一ノ瀬さんみたいなお嫁さんが欲しいなぁ」
「無理無理、一ノ瀬さんは高嶺の花だぞ? 裏ではファンクラブが出来てる程の人気っぷり。俺らみたいな日陰物には縁がない女性だよ……」
俺に話し掛けてきた体育会系のスポーツ刈りの男の名は
「一ノ瀬さんは知らないだろうけど、会社内での裏アンケートでは、【お嫁にしたい女性ナンバーワン】、【甘えたい女性ナンバーワン】、【えっちしたい女性ナンバーワン】、【踏まれたい&罵倒されたい女性ナンバーワン!】と他にも多数あるが、どれも一ノ瀬さんがぶっちぎりで1位だよ」
「競走は激しいか……でも、俺は諦めんぞ! 一ノ瀬さんのハートを射抜いて見せる!」
俺と泰生は一ノ瀬さんの方にさり気なく視線を向けると……
「「あれは……!?」」
一ノ瀬さんが真剣な表情でパソコンと睨めっこしている。俺達は自然と視線が一ノ瀬さんの巨乳に……服のボタンが今にもはち切れそうだ。
「一ノ瀬さんのたわわな胸が机の上に……」
「あぁ〜揉みてぇ……吸いてぇ。欲望のままに一ノ瀬さんの身体をめちゃくちゃにしたい」
「分かる……それな。俺は毎晩、一ノ瀬さんをおかずにしてるよ。一ノ瀬さんのパンチラを運良く拝めた日は、それはもう色々と捗るぜ。もし、一ノ瀬さんのパンチラ写真があるのなら、俺100万出すわ」
「マジかよ! 確かに一ノ瀬さん、たまに無防備になるよなぁ。階段登る時は、男性の大半は後から遅れて上がって行くもんな。その日に一ノ瀬さんのパンツを拝めたら、良い一日なると言われてるな」
昼休みに変態トークをして花を咲かせる増田と泰生であった。
◆会社員
一体何をしたらあんなに胸が大きくなるのだろうか。一ノ瀬さんの胸に押し潰されて窒息死するなら、俺死んでも良いかもしれん。
「やべえ、俺の息子が……」
「落ち着け神崎! 興奮する気持ちは分かるけどなぁ」
「あぁ……何とかお近付きになれないだろうか? 一ノ瀬さんの趣味って何だろう……?」
きっと一ノ瀬さんは、休日優雅にティータイムしながら読書とかしてるんだろうなぁ……いざ一ノ瀬さんを目の前にするとチキって全然話せない。
◆
「ん〜良く寝たぁ……」
ぐーんと身体を伸ばしてから私は身体を起こしました。二度寝は最高ですね♪
「あれ? エルちゃんが居ない」
もしかしてトイレかな? ちょっと見に行って見よう。私はトイレの方へと歩いて向かいました。
「エルちゃん〜おトイレかな?」
あれ、居ない……え、エルちゃんどこ行ったの!?
私は家の全部屋や押し入れ等もくまなく探しましたが、エルちゃんの姿は何処にも見当たらないです。
(まさか……お外に!?)
私は玄関でエルちゃんの小さな靴が無い事に気が付きました。さらにドアの鍵が空いてると言う事は……
「ど、どうしよう!? 急いでエルちゃんを探さなくちゃ! エルちゃん一人で外出は危ない!」
お、お姉ちゃんにも連絡入れとかないと! あぁ、どうか神様お願いします。エルちゃんが無事で居ますように……とりあえず家の周りと近場を探そう!
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