第52話 女子大生の山本優花とエルちゃん

 

 ◆エルちゃん視点



「な、何でしょうか……?」

「――――――?」

「んぅ……?」


 道をトコトコと歩いて居たら、知らない女性の人に話し掛けられてしまいました。2人の女性は何やらコソコソと話しているようです。何だか強面のお姉さん達ですね……


 もしかして……これは、カツアゲと言う奴でしょうか? スラムに住んでた頃に僕もされた事があります。その時は幸い食べ物やお金も持ってなかったので、殴られるだけで済んだのですが……でも、痛いのは嫌だな。


「――――――♪」

「その手は……ぼ、僕は大した物は持って無いですよ!?」


 何を言ってるのか分からないですが、どうやら僕が持ってる熊さんポーチの中に入ってるレンブライト鉱石と最高級のおかちをよこせと行っているのかもしれません。


「――――――?」

「ぐぬぬ……この場を乗り切るには致し方ないか……」


 僕は潔く、熊さんのポーチの中からレンブライト鉱石とかえでねーたんから貰ったおかちを女性に渡した。ぐぬぬ……無念。


「――――――?」

「え? レンブライト鉱石と最高級のおかちでは足りないと言うのですか!? まさか、この伝説の杖までも欲すると言うのですか……これはお姉さんから貰った僕の宝物です! 将来冒険者になる為に僕には必要な武器なのです!」


 女性の方は首を傾げて僕の顔をじっーと見ています。


「はわわっ……!? す、すみません! お願いだから殴らないでぇ……ぐすんっ」

「――――――!?」


 怖い……怖いよぉ……やっぱり外へ出ないで、あおいねーたんと一緒に寝てた方が良かった。


 今更になって僕はとてつもない後悔をしてしまいました。




 ◆女子大生 優花ゆうか視点




「あ、あのお嬢ちゃん? 良かったら私達がお母さんを一緒に探してあげるよ? だから……私と一緒に手を繋がない?」

「――――――!?」


 私はこの小さな女の子の手を握ろうと手を差し伸べたのですが、私達が怖いのかプルプルと震えて涙目になっております。てか、やばすぎる。語彙力無いと言われるかもしれませんが、かっ……可愛いです!


「真奈、どうしよう……この子泣きそう何だけど……」

「優花は美人だけど、ちょっとつり目気味だから少し怖いのかもしれないね。私も初めて優花と会った時睨まれてるのかと思ったもん……」

「えっ……私全然怖くないよ? 私って、そんなに怖いのかなぁ……」


 少しショックを受けてしまいました。確かに少しは自覚してた部分もあったのですが、いざ真奈に言われると中々応えますね。しかも、この子にまで怖がられて……この子に何とかして怖くないよとイメージを払拭出来たら良いのだけど。


 金髪で耳が長い小さな女の子は、可愛らしい熊さんのポーチの中から、意を決して何かを取り出しました。


「――――――?」

「え? えと……私にくれるのかな?」


 何と言うことでしょうか! この子可愛いが過ぎます! ポーチの中から、何やらそこそこ綺麗な道端に落ちていそうな石ころとぺろぺろキャンディーのグレープ味らしき飴を私にくれると言うのです!


「真奈、どうしよう。石ころと飴ちゃん貰っちゃったのだけど」

「ここは素直に受け取ったら良いんじゃない? 突っ返したらこの子も落ち込むかもしれないし」


 でも、何だか罪悪感が……これは、等価交換として私もこの子に何かをあげなくては行けませんね。


「そうだ! お嬢ちゃん、アイス食べる? お姉さんが買ってあげるよ♪」

「――――――。」


 金髪の小さな女の子は、目をぱちぱちと数回した後に少し後ろへと後ずさってしまいました。こうなれば、私のとっておきの優花スペシャルsmileでこの子を安心させてあげましょう! きっとこの子も落ち着く筈です!


「ねえ、お嬢ちゃん♪ うふふ……(優花スペシャルsmile)」

「ふぇ……ぐすんっ……うわぁあああああんんん!!」

「え、お嬢ちゃんちょっと待って!? え、ええぇぇ……!?」

「ちょっと優花! この子を怖がらせてどうするのよ! ごめんね、お嬢ちゃん♪ ん〜よしよし♪ 怖かったねぇ〜」


 真奈が号泣している金髪幼女ちゃんを抱っこして優しくあやしています。私も自分の顔をこんなに恨んだ日は今日が初めてかもしれません。私も泣きそう……


「優花お姉ちゃんは怖くないよ〜見た目は人殺してそうな目付きしてるけど、根は優しいお姉さんだから♪」

「え、待って。私の目付きそんなに怖いの!?」


 細目だと印象が悪いのかな? 少し大きく目を見開いてみようか。私は真奈から幼女ちゃんを抱っこしようと試みますが、幼女ちゃんは泣きながら私の腕の中で暴れています。


「ふぅええぇぇぇんん! かえでねーたん……あおいねーたん!」

「ん? 幼女ちゃんのお姉さんの名前?」


 幼女ちゃんを地面に降ろして、泣き止むまでそっと優しく頭を撫で撫でしてあげました。こう見えて私は子供が大好きです。私は一人っ子なので、妹や弟が欲しかったなと思ったりする事も今まで何度かありました。


「幼女ちゃん言うのもなぁ……せめてお名前が分かれば」

「ぐすんっ……」

「良い子良い子♪ 怖がらせちゃってごめんね? でも、一人でお外に出掛けるのはまだ早いよ?」


 この子の年齢は、恐らく4〜5歳児だと思われます。幼稚園児と言ったところかな? 最初はエルフのコスプレをしてるのかと思ってたのですが、どうやらお耳がピクピクと動いているので本物っぽいですね。この現代の日本にエルフが居るなんて聞いた事がありません。


「――――――!」

「あ! ちょっと待って! どこ行くの!?」


 金髪の幼い女の子は突然走り出して、近くにあった電柱の後ろに隠れてしまいました。顔を少しだけ覗かせてこちらを警戒しております。


「「か、可愛い……♡」」


 真奈と私の声が丁度被りました。電柱の後ろに小さな天使ちゃんが隠れています♪ 見ていて心がほっこりとしてしまいますね。


「真奈、お菓子無かったけ?」

「お菓子は無いけど……そうえば、コンビニで買ったスティック状のチョコチップメロンパンがあるわよ。10個入りの小さいタイプ」

「おお! メロンパンであの小さい子のハートを掴もうじゃない!」

「そんなにチョロくは無いんじゃない?」


 そうと決まれば早速試して見ましょう! 私は袋からメロンパンを取り出して、幼い女の子に向けてホイホイと前に差し出して見ました。


「………………じゅるり」

「マジか、この子めっちゃメロンパン見てるよ」

「お腹空いてたのかな?」


 私は幼い女の子の目線の高さになるようにしゃがみこんで、一歩ずつ女の子に近付いて行きます。指を咥えてこちらを警戒しながらじっーと見ています。


(この子間違い無く将来を約束された美少女だわ……今は美幼女と呼ぶべきだろうか)


 こんなに可愛い女の子は見た事が無い。大きなぱちぱちとした愛らしいおめめにぷるんとした唇、幼女特有のぷにぷにとした柔らかそうな肌。不安そうな表情でこちらを見る幼い女の子は、こちらの庇護欲と言う欲望を激しく刺激して来て守ってあげたくなってしまう程の愛らしさ。お耳が長いと言うのが一番の特徴ですね。


(エルフかぁ……エルフってあの、【くっ……殺せ!】とか【奴隷や犯される】等のイメージが強いわね。二次創作の見すぎかしら?)


 まあ、そんなどうでも良い話は置いておいて。今はこの幼い女の子……エルフなのでエルちゃんと呼びましょうか。暫定的にですけどね。警戒を解いてもらって、この子のご家族の方を探さなければ行けません。恐らく迷子になったのでは無いでしょうか?


「エルちゃん〜メロンパン頬っぺたが落ちちゃうほど美味しいよ〜」

「――――――!?」

「あれ? 今エルちゃんと言う言葉に反応した?」


 適当に名付けて呼んで見ただけなのに、もしかしたら気に入ってくれたのかな?


「優花、何でエルちゃんと呼んだの?」

「え、エルフだからエルちゃん」

「なるほど、そのまんまね……」


 幼い女の子……エルちゃんは私達とメロンパンを交互に見てから物欲しそうな顔でこちらを見ています。


「うふふ……分かりやすい子だね。良かったらどうぞ♪」

「――――――?」

「大丈夫だよ、毒なんて入って無いから」


 私は警戒してるこの子の前で、大丈夫だよと実演して見せます。私が手に持っているメロンパンを一口食べて安心だよとアピールしました。私の食べ掛けになってしまいましたが、エルちゃんにメロンパンを渡します。


「――――――!?」


 すると今度は、顔を赤くしてエルちゃんはモジモジとしています。こちらをチラチラと見ながら、私達を悶え殺しにしようとしています! 私と真奈のHPは最早0に近い……



「「何、この可愛い生き物」」



 あざとい……あざといぞこの子! この子を一人にするのはやはり危険です。世の中幼女が大好きな変態も居ますので、このままではエルちゃんが誘拐されてしまうかもしれません。と言うか確実に攫われてしまいます!  


「ほれほれ〜♪ メロンパン美味しいよ〜」

「――――――? ――――――。」

「何て言ってるのか分からないけど、鈴の音がなるような綺麗な声、お耳が癒される♡ はぅ……♡」

「優花……まるで変態不審者みたいだよ?」


 やれやれ、真奈は失礼な事を言いますね。私は至って健全ですよ? 


「――――――!」

「うんうん♪ 食べて良いよ♪」


 ついにエルちゃんが……小さなお口でメロンパンを食べてくれたのです! パクパクとメロンパンを美味しそうに食べていますね♪


「――――――!」

「ん? 美味しかった? まだまだあるよ♪」


 あらあら、すっかりとご機嫌になりましたね。エルちゃんって、案外ちょろいのかもしれません。


「――――――――――――♪」

「ああああああああぁぁぁ!! 無理! 可愛い過ぎる! もう我慢出来ないよぉ!」

「――――――!?」

「優花!? ちょっと落ち着いて! エルちゃんがびっくりしてるよ!」


 私の中に眠っていた何かが、覚醒してしまったのかもしれません。エルちゃん良い匂いがしますね♡ ぐへへ……

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