第50話 エルちゃんの小さな冒険

 


 ◆あおい視点



 エルちゃん……お姉ちゃんの事が本当に大好き何だね。玄関の扉の前に座りながら、健気に楓お姉ちゃんの帰りを待ってるよ……まるで飼い主の帰りを待つ子犬のように。


「エルちゃん、心配しなくてもお姉ちゃん夕方にはちゃんと帰って来るから大丈夫だよ」

「うぅ……」

「よしよし♪ もう、泣き虫さんですね〜」


 あぁ……可愛い♡ エルちゃんを抱っこして私はリビングへと向かいました。朝ごはんを一緒に食べたら、エルちゃんと一緒にもう一眠りしようかと思います。エルちゃんも目をゴシゴシと擦っていたので、まだお眠のようですね。


「ぐすんっ……あおいねーたん!」

「あらあら、甘えん坊さんでちゅね〜♪ お姉ちゃんが仕事の間は、私に沢山甘えてね♡」


 小さい子は人肌が寂しいお年頃です。ちゃんと愛情を持って接しないとね。もし、将来エルちゃんがグレてヤンキーにでもなってしまったら私達が困ります。


(エルちゃんにもいつか反抗期が来るのかな……?)


 もし、エルちゃんにうるせぇババア!とか将来言われでもしたら……私ショックで寝込んでしまうかもしれません。


 いえ、純粋なエルちゃんならきっと大丈夫。エルちゃんがそうならない為にも常日頃から、優しく接する様に心掛けよう。でも、もし悪い事をしたらそこはちゃんと怒りますけどね。エルちゃんのお姉ちゃんとして、私がしっかりしなくては……楓お姉ちゃんはエルちゃんの前だともうデレデレなので駄目です。




 ・・・一ノ瀬家 リビング・・・




「よいしょっ。エルちゃん朝ごはん一緒に食べましょうね〜今日は食パンだよ」

「んぅ……? ――――――?」


 エルちゃんが首を傾げながら、上目遣いで私を見つめています。


「エルちゃん……」


 誰か助けて下さい! 私の妹が可愛すぎて、私おかしくなりそうです! うっ……胸が苦しい……今ならお姉ちゃんも居ないから、少しばかりイチャイチャしても大丈夫だよね? ご飯食べたら私のお腹の上にエルちゃん乗せて二度寝しちゃお♡


「うふふ……エルちゃん多分気に入ると思う。じゃじゃーん! 苺ジャムだよ!」

「――――――? チャム?」

「惜しいなぁ、ジャムだよ♪ これはパンに塗って食べるんだよ」


 エルちゃんが物珍しそうにジャムを見ていますね。小さなおててでジャムを持ち、クンクンと匂いを嗅いでいます。私は食パンにジャムを塗ってからエルちゃんに渡しました。


 エルちゃんの座る場所は勿論、私の膝の上です。いつもはお姉ちゃんにエルちゃんを取られてしまうので、居ない時は私がこうしてエルちゃんの温もりを……ディフフ


「エルちゃんこのジャムを食パンに付けるんだよ。はい、どうぞ♪」

「…………」

「大丈夫だよ、毒なんて入ってないから♪ はい、あ〜んして♡」


 エルちゃんは小さなお口でパクリと食パンを食べた直後、目を大きく見開いてからもぐもぐと食パンを食べ始めました。エルちゃんは何でも美味しそうに食べるので、見ているこちらも癒されます♪ 別の意味で私も満たされてしまいますよ♡


 私の膝の上に小さな天使ちゃんがご飯食べてるよ♡ クンクン……良い匂いがしますね♪ 綺麗なサラサラな金色の艶のある髪の毛。触り心地も最高ですね〜肌もモチモチしてプルンとしてます。小さなおてて、小柄な抱きやすい身体。今ならエルちゃんは、食パンを食べるのに集中しているのでお触りし放題です! 


「ぐふふ……」

「んぅ……?」

「何でも無いよぉ〜♡」


 エルちゃんと二度寝してから今日は何しようかな〜何かお姉ちゃんらしい事をしてあげようかな。よし、寝て起きてから考えよう♪


「ピコーン!」


 あら? 誰だろう? メッセージが2件来てますね。


「二宮マッマ……そうえば今週土曜日に家に来るんだった。それと、もう一件は……げっ!? 真由美じゃん!」


 真由美は私と同じVTuberの一人で、私より2つ上の先輩です。真由美はお姉さん系路線で、名前は夢見アスカと言うキャラクターで、世の中の男性にママと言われ絶大な人気を誇っています。


 ただ……真由美は美人な人だけど、お姉ちゃんと同じ可愛い物が大好きな変態です。しかも、今週土曜日に遊びに行くねと連絡が来てます。まだ良いとも返信もしてないのに気が早いですね。


(まあ、一人増えた所であんまり変わらないか)


 二宮マッマだけでも変態で大変なのに……違う路線の変態がまた一人増えてしまいました。楓お姉ちゃんは賑やかで良いじゃない♪とか言うと思うけど、毎回誰かしら来る度私が餌食になるのですよ! 例えるならサンドイッチですね。具材が私で外側のパンが変態2人です。私やお姉ちゃんの周りには、美人な人が多いけど一癖も二癖もあるプロの変態さん達が多数居ます。


(まあ、うちにはエルちゃんと言う可愛いさの原発が常時稼働して居るから、今回は大丈夫かな?)


 エルちゃんには申し訳無いけど、私にあの二人を止めれる自信はありません……二宮マッマはエルちゃんに凄く会いたがってたし。真由美も恐らくエルちゃんに目を付けるでしょう。


「またその時考えよ。あら? エルちゃんもう食べたの?」

「――――――♪」

「あらあら、お口にジャム付いてるよ? お姉ちゃんがふきふきしてあげる」


 うふふ……何だか私の中の母性が覚醒してしまいそうです。これがお姉ちゃんになると言う事なのかな? 妹の面倒を見て、一緒に遊んであげたりお昼寝したりと。


「あ、そうだ。エルちゃんそろそろオムツ替えようか」

「んにゅ?」


 私はエルちゃんを抱っこしてソファに移動します。エルちゃんを横に寝かせて、オムツを取り替えてあげました。


「――――――!?」

「暴れたら駄目だよ〜すぐ終わるから」

「――――――!」

「しょうがないなぁ……秘技! こしょぐり攻撃♡」

「―――――――――!? ――――――! ――――――!!!」


 エルちゃんがキャッキャと笑いながら悶えております。あぁ、癖になりそうです。これでエルちゃんを疲れさせてから、オムツを取り替えてあげましょう。



 ・・・10分後・・・



 やばい、やり過ぎちゃった。何とかオムツを取り替える事に成功したのは良かったのですが、エルちゃんがソファの上でダウンしています。


「エルちゃんごめんね、そろそろお姉ちゃんと一眠りしよっか♪」


 頭の下にクッションを敷いて、エルちゃんを私のお腹の上に乗せたら完璧です! これが噂の妹抱き枕と言うやつですね♪ 抱き心地が最高過ぎて、もう離したくありません!


「ムギュっ♡ エルちゃんムギュっ……!」

「ぐぬぬ……!?」

「もう! エルちゃんは何でそんなに可愛いの? お姉ちゃんを困らせてそんなに楽しいの? チュッ♡ あ、もう1回しとこ♪」


 顔を赤くしちゃって可愛いですね♪ 朝の何気無いエルちゃんとのコミュニケーションです。イチャイチャしてたら、私も眠くなって来ました。


 そして気付けば、私はエルちゃんを抱きながら夢の世界へと旅立って行くのでした。




 ◆エルちゃん視点




「ぐぬぬ……!?」

「すぅ……すぅ……」


 これでは僕が完全に抱き枕では……


 良い匂いがする……女の人は何でこんなにも良い匂いがするのだろうか……お姉さんの友達の人もお姉さん達とは違った良い匂いがしました。でも、貧乳でしたけど。


 あおいねーたんの柔らかい大きな胸を枕にして、僕は現在お姉さんの上に横たわっています。あおいねーたんは気持ち良さそうにスヤスヤと僕を抱きながら眠っていますね。



 ―――――――――――――――



 あれから何時間が経過したのでしょうか? 抱かれるのは好きなので問題は無いのですが、何故だか中々眠れません。


「うぅ……かえでねーたん。まだ帰ってこないの」


 もしかして、昨日内緒でおかちを僕が食べたせいで怒って出て行っちゃたのかな……? あのおかちは、お姉さんの分だったのかな……


「はわわぁ……ど、どうしよう!?」


 内心不安な気持ちでいっぱいになって来ました。今直ぐにかえでねーたんにおかちを食べた事を謝りに行こう! 我慢出来ずに食べちゃった僕が悪いのです。


 僕は早速行動に移しました。寝ているあおいねーたんを起こさない様にそっと腕から抜け出します。


「このモフモフの服装だけど、まあいいや」


 僕は早速靴の置いてある玄関へと向かいました。持ち物はお姉さんから貰った熊さんの小さなバッグと伝説の杖に僕が拾ったレンブラント鉱石のみです。この僕の宝物……拾った物だけどお姉さんにプレゼントしよう。


「よし、行くぞ! 確かここを回すと扉が開く筈……お! 開いたぞ!」


 僕は背伸びをしながら大きな扉の鍵を開けて外へと出ました! 外は快晴で青空が何処までも広がっています。早くお姉さんを探しに行かなければ……


「まずはこの間行った、ゴリラウダーが出現した場所に行ってみよう」


 僕が道の隅っこをしばらく歩いていると前方から冒険者らしき人を発見しました。僕は通りすがりにニッコリと会釈をしてから横を通り過ぎました。何か驚いたような表情をしてましたね。


「それにしても凄い人だったな……あの男の人はテイマーの方なのだろうか」


 背の高い男の人が大きな魔物を連れていたのです! 魔物の首に紐を繋いで堂々と歩く姿は、まさに歴戦の猛者。そんなオーラが漂っておりました。さっきの魔物は、危険指定難易度A級の【ハウンド・ドッグ】ではなかろうか。(※男の飼い主が柴犬の散歩をしているだけです)


「この場所は凄い人達が多いのかな? お金持ちの人が多そうです……やばい、何か場違い感が……」




 ◆とある女子大生 優花ゆうか視点




 快晴の青空の下、閑静な住宅街にとある2人の女子大生が歩きながら喋っていた。


「真奈〜今日どうする?」

「今日は大学の講義もお休みだから、一日カラオケで歌わない? 優花も歌うの好きでしょ?」

「お! 良いねそれ! 行こ行こ♪ あれ?」


 私達の前に愛らしい金髪の小さな女の子がおもちゃの杖を持ちながら、こちらに向かって歩いて来ます。あれは、エルフのコスプレをしてるのかな? モフモフの兎さんのパジャマも着て可愛いです♡


「あらあらぁ、可愛いらしいお嬢ちゃんだね♪ パパとママは?」

「――――――?」

「え、日本語が通じない……どうしよう」


 このままこの子を一人にさせる訳には行きませんね。小さい子が一人で外を出歩くのは危険です! 今頃親御さんも心配してこの子を探しているかもしれません。


「真奈」

「ええ、分かってるわよ」


 私と真奈でこの子の親御さんを探してあげることに決めました!

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