第46話 似た者姉妹
◆エルちゃん視点
「はわわっ……!? この本女の子同士でキスしたり、イチャイチャしてる絵が沢山!?」
「――――――♪」
「んぅ……? やっぱり女の子同士でキスするのは貴族同士の挨拶なのかな? ぐぬぬ……女の子同士裸で抱き合うのも挨拶なの?」
そうか……そういう事だったのか……完全に理解しました。きっとお姉さんは貴族の挨拶の仕方を僕に教えてくれていたのだ。
「郷に入っては郷に従え……か」
「――――――!」
お姉さんがテンションが高く鼻息も荒いです。僕は背中越しにお姉さんの柔らかな胸の感触を感じながらドキドキしております。この状況は何度もあるのに、未だに慣れないです。でも、本音で言うと最高です!
「お姉さん相変わらずいい匂いがしゅる〜くんくん……んふ……」
「――――――♪」
「こ、これは!?」
お姉さんが本の次のページを捲りました。女の子がお互いの身体を触りながら、ベッドで身体を重ね合わせて一つになっています。お姉さんは、僕にいつも教えてくれていたのだ。夜一緒に寝る時は、お姉さんが僕を離すまじと抱き着いて来るのは、挨拶やコミュニケーションの仕方を教えてくれていたのだと。
流石貴族の世界……僕の知らない領域です。
「ふむふむ……言葉が分からずとも絵を見れば分かるとは……」
「――――――!」
「――――――!?」
あれ、いつの間にかボブカットヘアーのお姉さんが戻って来てる。僕はお姉さんの膝の上から降ろされて、精霊猫のブライアンの横に座りました。お姉さんは正座しながらしょぼんとしています。何やら怒られているみたいです。
◆
「葵ちゃん……あの……」
「ん? なぁ〜に? どうしたのお姉ちゃん♪」
「この縄そろそろ解いて欲しいなぁ〜♪ て思ってみたり」
「エルちゃんのお勉強が終わるまで、そこで待っててね♪」
「そ、そんなぁ……ぐすんっ……」
大変心苦しい所ではありますが、楓お姉ちゃんの身体を縄で縛りました。少しの間部屋の隅で待ってて貰いましょう。エルちゃんの教育に悪いと思ったので、お勉強は私が見る事にします。
「んぅ? ――――――?」
「エルちゃん大丈夫だよ♪ 楓お姉ちゃんはドMだから、ああして縛られるのが大好きなの♪」
「ちょっと葵ちゃん!? 私ドMじゃないよ!? ドSだよ!」
「お姉ちゃん……突っ込む所、本当にそこで良いの?」
私のお姉ちゃんが、日を増す事に変態度が上がって来て困っております。エルちゃんの教育にあたり不安が過ぎります。ここはまともな私が、エルちゃんの為にもしっかりとしなくては行けません。
「葵ちゃんが反抗期だよ〜しくしく」
「お姉ちゃん、ちゃんとエルちゃんに教える事出来る?」
「勿論だよ! 出来るよ! お姉ちゃんにお任せあれ!」
私は少し迷いましたが、お姉ちゃんの縄を解いて上げることにしました。次もし暴走したら、お口に猿轡してから手足を縄で縛りましょう。
「エルちゃん♪ 一緒にお勉強頑張ろうね」
「――――――!」
よし、まずは平仮名の読み書きの練習からですね。
「エルちゃん、これは平仮名って言うんだけど今日は一緒に、あいうえおから覚えていこっか♪」
「――――――?」
「あ、い、う、え、お。言えるかなぁ?」
エルちゃんは平仮名表を見ながら困惑しております。平仮名表を逆さまに持って見たり、裏面を見たりと興味津々です。
「あ、あぅ……」
「よしよし♪ 焦らずゆっくりと覚えて行こうね♪」
「うんうん♪ 私や葵ちゃんが丁寧に教えて行くからね〜」
「――――――?」
うふふ……一生懸命に首を傾げながら考えるエルちゃん可愛い♡ はっ!? あ、危ない所でした。気付けば私の手がエルちゃんの頭の上に……無意識の内に頭をなでなでしておりました。綺麗な金髪にサラサラの髪の毛……
「ごほんっ……気を取り直して」
「あ、葵ちゃん? 大丈夫?」
「へっ? あ、大丈夫だけど?」
「葵ちゃん、鉛筆の持ち手が逆だよ?」
「!?」
私とした事が……どうしちゃったんだろ。何でこんなドキドキするのだろう。
「んにゅ……かえで……ねーたん?」
「はぅ……!? エルちゃん♡」
突然エルちゃんが、かえでねーたんと言いました。お姉ちゃんは、もう目が♡です。エルちゃんがあざとすぎる! タチが悪いのは、本人は素だと言う事。恐るべし小悪魔エルちゃん……これはお勉強を教える側も対策しなければ、エルちゃんの可愛いさにやられてしまうかもしれません。
「ん? エルちゃん何書いてるのかな?」
「――――――。」
エルちゃんが鉛筆で何か書いていますね。私とお姉ちゃんで、エルちゃんの様子をしばらく見守る事にしました。
―――10分後―――
「あいっ!」
エルちゃんは、何かを成し遂げたような満足した表情を浮かべております。紙には、化け物? 人の形をした異形が書かれています。
「葵ちゃん……もしかしてこれって、私と葵ちゃんじゃない? それでこのわたあめみたいなのが、タマちゃんかな?」
「エルちゃん……」
何とエルちゃんは、私やお姉ちゃんの似顔絵を書いてくれたと言うの? やばい、目から涙が出そうです。エルちゃんの画力に関しては、年相応と言った所でしょう。化け物……実に芸術的な絵ですね♪
「――――――!」
「エルちゃんありがとう♡ 額縁に収めて、部屋に飾って置くね! あらあら? うふふ……甘えん坊さんでちゅね〜よしよし♪」
「んにゅ……」
エルちゃんが楓お姉ちゃんに甘えています。ずるい、私もエルちゃんにもっと甘えられたい!
「あら? どうしたのエルちゃん?」
「――――――!」
何とエルちゃんが、今度は私の身体にピタっと抱き着いて来ました! しかも、上目遣いで私に何か言っております。
「あ……おい……ねーたん?」
「はうっ!?」
嘘……今エルちゃんが私の名前を……全身にイナズマが駆け巡るような衝撃。エルちゃんの
「んぅ……?」
「エルちゃああああああああんんんんっ!! しゅき♡」
「わぷっ!?」
もう無理! 可愛い! 尊い! ずっと抱きしめて居たいです! もしかして、この感情は母性なのでしょうか。エルちゃんを見てるとお世話したくなるし、沢山抱きしめてあげたり、チュッチュしたくなります。駄目だと言うのは分かって居るのですが、可愛い子を見ると少し虐めたくなります。エルちゃんを誰も居ない部屋に閉じ込めて、エルちゃんの全てを独り占めしたい。
「あ、葵ちゃん!? エルちゃんも困惑してるよ? ちょっと落ち着こう!」
「お姉ちゃん……言ってる事と行動が矛盾してるよ?」
「はっ! 私の身体が制御不能に!? 私の身体が何者かによって操られている!?」
お姉ちゃんは私とエルちゃんをガッチリと抱いて、外では見せられないような表情をしています。結局、お勉強所では無くなってしまいました。
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