第40話 泣いちゃったエルちゃん
◆楓視点
あらあら♪ エルちゃんが両手を広げて、ゴンちゃんに飛び込んでおいでと言ってますね♪ 言葉は分からずとも雰囲気で伝わります♪ エルちゃんは家で飼っている白猫のタマちゃんとも仲良しです。きっとすぐにゴンちゃんとも仲良くなると思います♪
「わふっ!」
「――――――!?」
尻尾を振って喜んでいます。ゴンちゃんもエルちゃんの事が気に入ったのかもしれませんね♪
「――――――!!」
「あら? エルちゃんどうしたの? ゴンちゃんも尻尾振って喜んでるよ? 撫で撫でしてあげないの?」
「――――――ぐぬぬっ……」
よく見るとエルちゃんの足がプルプルと震えています。大きなワンちゃんが少し怖いのかもしれませんね。尊い光景なので、もう少し暖かい目で見守りましょう。エルちゃんの行動を観察するのも面白くて癒しとなります♡
「エルちゃん頑張って♪ ゴンちゃんも喜んでるよ!」
「エルちゃんファイトだよ♪ ほら、ゴンちゃんもエルちゃんに撫で撫でして欲しそうだよ? 大丈夫、怖くないよ〜♪」
奏さんも葵ちゃんもエルちゃんの横で、暖かい目で応援しております。
「――――――!!」
そして、ついにエルちゃんがゴンちゃん目掛けて走って行きました。
そんなに走らなくてもゴンちゃんは逃げないのに……早く抱きたい気持ちは分かるけど、お姉ちゃんはエルちゃんが走って転ばないか心配です。
「わふっ!?」
「――――――っ!?」
こ、これは……デジャブの予感……
「「「あっ……」」」
あちゃ〜私の予想が的中してしまいました。エルちゃんがゴンちゃんの目の前で、前のめりに転んでしまいました。
室内に一瞬の静けさが訪れ、私達の間で緊張が走ります……私達は急いでエルちゃんの元へ駆け寄り、怪我してないか入念に確認をします。女の子に一生物の傷が出来てしまったら、一大事です! 我が家のお姫様にもし傷が残ってしまったら……私は……
「……うぅっ……ぐすんっ」
「エルちゃん!? 大丈夫!? 何処か怪我しちゃった? お姉ちゃんに見せてみて!?」
私は急いでエルちゃんを抱っこして、顔とか身体を入念にチェックをします。奏さんも葵ちゃんもエルちゃんの身体や顔を一緒にチェックしてくれております。
「ふぅえええぇぇえええええええんんんんんっ!!!」
「エルちゃん♪ 痛かったね〜よしよし♪ お姉ちゃんが痛くないようにおまじない掛けてあげるからね♪ 痛いの痛いの〜飛んでけ〜!」
ちゃんと私がエルちゃんを抱っこしていれば……そう思うと後悔が津波のように押し寄せて来ます。でも幸い、エルちゃんのおでこが少し赤いだけで、他は何とも無さそうなので内心ホッとしております。後は、我が家の幼いお姫様の涙を止めなければ行けません。
「エルちゃん! 奏お姉さんの顔を見て! 居ない居ない〜ばあっ!!」
「うわぁあああああああっんんん!!」
まさかの逆効果でした。エルちゃんは更に号泣してしまい、身体をプルプルと震わせております。奏さんは少しショックを受けた様な表情を浮かべておりました。
「楓お姉ちゃん! エルちゃんをこっちに頂戴! 今回は私があやすよ!」
「葵ちゃん……分かったわ」
今回は葵ちゃんにエルちゃんをあやして貰いましょう。私の胸に顔を埋めているエルちゃんを優しく引き剥がして、葵ちゃんにエルちゃんを渡します。小さい子をあやすのは中々大変です。
「エルちゃん♪ よしよし〜大丈夫だよ〜」
葵ちゃんがエルちゃんの背中をポンポンっと優しく叩きながらあやしております。こんな事を言うのは駄目なのかもしれませんが、泣いているエルちゃんをあやしている葵ちゃん……控えめに言って最高です。
・・・数分後・・・
「ふえぇ……………………………んにゅぅ……………すぅ……すぅ」
「あらあら、今度は泣き疲れて寝ちゃったかぁ♪ 可愛いなぁ……エルちゃん♡」
何と葵ちゃんは、エルちゃんを泣き止ませたと思いきやエルちゃんを寝かし付けてしまいました……葵ちゃんの腕の中で、エルちゃんは静かに寝息を立てています。
「葵ちゃん……凄い……子供の扱いが上手いのね」
奏さんも驚きながら、エルちゃんの元へ近付き、そっと頭を撫でております。奏さんの顔が物凄く慈愛に満ちた女神様の様な表情をしております。見ているこちらもほっこりとしますね♪
「ゴンちゃんごめんね、エルちゃんがお寝んねしちゃったから、また今度遊んであげてね♪」
「わんっ!」
ゴンちゃんも察してくれているのでしょうか、静かにエルちゃんの寝顔を見つめております。エルちゃんが寝ちゃったので今日はこの辺でお開きですね。お菓子を沢山買って、家で皆で食べましょう。
「エルちゃん可愛い……♡ 楓さん、エルちゃんを私に下さい!」
「あらあら、奏さん? 冗談は行けませんよ?」
「ですよね〜でも、エルちゃんを見ていると心が浄化されるような……ストレスも嫌な事も全て吹き飛んでしまいますね♪ エルちゃんは無自覚なのかもしれないけど、居るだけで周りに幸せをばら蒔いていますよね♪」
「そうですね♪ 私もエルちゃんと居ると胸がポカポカと暖かいです♪」
うふふっ……確かに。エルちゃんの可愛いさは異常です。庇護欲や愛でてあげたい等、様々な感情が湧き出て来ます。母性に目覚めてしまいそうです。それと同時に、エルちゃんを見ていると危うさを感じたりもします。エルちゃんはまだ小さいからしょうがないですが、エルちゃんがもう少し成長して大きくなったら、一人でお出掛けする様にもなるでしょう。知らない人にお菓子をあげると言われてホイホイと付いて行ったり、誘拐とかされないか心配です。エルちゃんはちょろいし警戒心薄いので……
「お姉ちゃん、私エルちゃん抱っこしてるからお菓子や菓子パンのお会計だけお願いしてもいい?」
「うん♪ 勿論だよ!」
私はカゴいっぱいに入った菓子パンとお菓子をお会計する為、奏さんにレジをお願いしました。
「毎度ありです♪ はぁ……エルちゃん達ともうお別れですか……寂しいです」
「うふふ……また来ますよ♪ あ、良かったら連絡先交換しませんか?」
私は奏さんの連絡先を聞こうとしましたが、予想外の答えが返って来ました。
「あ、すみません……私、今携帯止められちゃってて……あはは」
「あらま、そうなんですか? んん〜では連絡先をこのメモに書いてお渡ししましょうか?」
「はい! 是非お願いします!! スマホ使える様になったら、登録させて頂きます!」
何だか奏さんの雰囲気が最初と違いますね。お淑やかな雰囲気かと思えば、私と同じこちら側の人間です。きっと変態さんなんでしょうね♪ 最高です♪
「むにゃむにゃ……ふぇ?」
「あら、エルちゃん起きしたの? 楓お姉ちゃんの所に行きたいの?」
「ふにゅ……」
エルちゃんが寝惚けながら目を覚ましてしまいました。ですが、エルちゃんは私の方をじっーと見ております。私は葵ちゃんからエルちゃんを受け取り、背中をさすったり、優しくトントンとしていたら、エルちゃんは再びスヤスヤっ……と眠ってしまいました。
「エルちゃんは楓お姉ちゃんの方が良いのかな? 何だか嫉妬しちゃうなぁ〜」
「うふふっ……そんな事無いと思うよ。葵ちゃんにも懐いているじゃない♪」
私は内心ニヤニヤが止まりませんでした。エルちゃんは、私の事をママかお姉ちゃんと思って甘えているのでは無いでしょうか。エルちゃんの年齢くらいなら誰かに甘えるのは当然です。むしろ、甘える相手が居ないと言うのが異常なのです。
「エルちゃん♪ おやすみ〜チュッ♡」
「あぁっ! お姉ちゃんだけずるいよ! 私もエルちゃんにチューしたいのに!」
「これはお姉ちゃんの特権ですよ? うふふっ……」
「ええ! 私もエルちゃんから見たらお姉ちゃんだよ!」
葵ちゃんと他愛ないやり取りをしていたら、奏さんが羨ましそうな表情でエルちゃんを見ております。
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ!! もう無理! 私もエルちゃんの頬っぺたにチューする!」
「奏さん!? え、ちょっと!? あ、葵ちゃん! 奏さんを止めて!!」
「エルちゃんも葵ちゃんも楓ちゃんも皆んな可愛いっ! 3人とも奏お姉さんが抱いてあげるわっ♡」
奏さんがついに暴走してしまいました。恐らく今の奏さんの方が素なんでしょうね。本当に面白い方です♪
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