第35話 奏とエルちゃん

 

 ◆エルちゃん視点



「ふわああああぁ……何これ!? 甘い匂いがしゅる!」

「―――――――――♪」


 僕はお姉さんに手を引かれながら店の中に恐る恐る足を踏み入れました。辺りを見渡すと見たことの無い高級感溢れる様な物ばかりなのです! こんな凄い光景見たら誰だってテンションが上がっちゃいますよ! 店内もかなり大きいです!


「昨日の夜に行ったお店も凄かったけど、こちらはその何倍もしゅごい……」

「――――――♪」

「ぬっ!? あ、あれは……高級パンだっ!」


 僕はお姉さんの手を引いて、高級パンが沢山並んでる大きな棚へと走って向かいました。


「――――――!?」

「こっちの細長いパンや円状の真ん中に穴が空いたパンもどれも美味しそうだなぁ……何だこの黒いソースがかかったパンは!? ふおおぉっ!? 何このもじゃもじゃしたパンは……色々あるんだなぁ……」


 僕は近くに置いてあったカゴを持って来て、パンの棚の前に置きました。昨日の夜に他の店でお姉さん達が使っていたのを見たので、恐らくこれに商品を入れて店員さんに渡せば貰える筈です。お金は持って無いですが、僕には先程道端で拾ったこの光り輝くレンブラント鉱石があるのです! 今日の僕はお金持ちなのです!


「ぐふふ……美味しい物が沢山買えるぞ。どうせならパン以外も買っちゃおう」

「――――――?」

「お姉さん、今日は僕の奢りですよ! 日頃のお礼を込めて何でも買ってあげますからね ! えっへん!」


 僕が住んでた街では、このレンブラント鉱石が貴重で高値で取り引きをされているのです。1粒で銀貨1枚。しかも、僕の手にしてるこのサイズなら軽く見積もっても金貨数枚はする筈です。


「今日は、ぱっーと使っちゃうぞ♪」

「――――――♪」

「ふぉおっ!? パンの上にお肉乗ってゆ!? こっちにはピンク色にカラフルな粒が付いたパンがありゅ」


 僕はどれも気になってしまい、高級パンを次々にカゴに入れて行きました。高級パンも素敵ですが、他の商品も気になります! 


「――――――!? ――――――!!」

「ヒィッ……!? ご、ごめんなさいっ!?」


 背後から大きな声が聞こえたので、咄嗟に振り返って何故かごめんなさいと反射的に謝ってしまいました。スラムの生活の時の直ぐに謝る癖がまだ抜けないのです。


「なっ!? ええぇっ!?」

「――――――?」

「その煌びやかな豪華な衣装……も、もしかして王族の方ですかっ!? ……と言うか……本物!?」


 まさかこの店は王族御用達の店だったのか!? いや違う……ここは王族の方の所有する倉庫なのかもしれない……お姉さん達も貴族の方なのだから、王族の方と会う機会はありますよね。ドレスの様な姿で長い艶のあるロングヘアーの黒髪にお淑やかな雰囲気。まさに清楚と言ったような儚げのあるお姫様みたいな女性が現れたのです。恐らく本物のお姫様なのでしょう。しかも、僕の方を見て何やら驚いている様子です。


「―――――――――!!」

「あ、あう……ごめんなさい! 決してお姫様の高級パンを横取りしようと思ってた訳では無いのです! 本当でしゅ!」


 あぁ、噛んじゃった……や、ややばいです……ど、どうしよう。王族の方は道を塞いだだけでも斬首刑にされると言うあれですよね? はわゎ……僕、お姫様の高級パンを……あぁ


「お、おおお姫様っ!? ど、どうか命だけはお助けを!」

「――――――? ――――――?」


 何やら王族のお姫様が口に手を当てながら、僕をじっーと見つめております。あぁ、何かやばい顔してるよ……うぅ……僕殺されちゃうのかな? いや、まだ助かる道はある筈だ。よし、こうなれば腹に背は変えられぬ……この大きなサイズのレンブラント鉱石をお姫様に献上してお許しをもらいましょう。


「お、お姫様っ!? つ、つまらないものですがどうぞ受け取って下さい!」

「――――――?」

「あうっ……あゎゎ。お気に召しませんでしたでしょうか……?」


 んぅ? 待てよ? もしかしてさっき、僕がゴリラウダーと呼んでたあの変態さんもドレスの様な物を着てたよね? という事は……あの変態不審者さんも王族の方なのか!? あぁ、終わった。僕の人生またしても詰んだ……うぅ……ぐすんっ。


「あぅ……」


 あぁ……この股に伝う暖かい感覚は……うぅ……おしっこ漏らしちゃった。



 ◆かなで視点



「よいしょっと〜これで整理と検品は終わりね!」


 私の名前は一ノ瀬 奏。うら若き乙女です♪ 現在成り行きで早乙女キララさんのお店で働かせて貰っています。今日は初日という事で、簡単な業務からキララさんに教えて貰いました♪ しかし、ただのアルバイトだと言うのにこの豪華で煌びやかな着物の衣装……凄いとしか言えません。これ本当に私が着ても良かったのかな?


「服も汚さないように気を付けなくちゃね。さてと、終わったからキララさんに報告しよう♪」


 商品の整理や検品が丁度終わった時に、店の方からベルの音がしました。どうやらお店にお客さんが来て下さったみたいですね。


「あっ、レジに戻らないと」


 私は急ぎ倉庫から出て、商品の販売フロアへと走って行きました。キララさんに恩を返す為にも一生懸命働きます!


「いらっしゃいま……ファッ!? 幼女ちゃんっ!?」


 私は唖然としてしまいました。これは神が仕組んだ運命なのかもしれません! 来訪したお客様が、何とあの美少女ちゃん達だったのです! 私が幽霊だった頃に見た、あのめちゃくちゃきゃわわな幼女ちゃんも居ます!


「お、落ち着くのよ……私。ヒーヒーフー……よしっ!」


 ここは大人のお姉さんの対応と言うのを見せなければ。いつものペースで言ったら幼女ちゃん達にドン引きされて冷たい目で見られてしまうかもしれない。今の私は清楚系美少女乙女のお姉さんなのですから♪



 ◆あおい 視点



「エルちゃん待って、そんなに急がなくてもパンは逃げないよ」

「――――――。――――――?」


 私はエルちゃんに手を引かれながら菓子パン等が沢山置いてある棚の前までやって来ました。エルちゃんはパンを見て目をキラキラと輝かせて居ます♪ エルちゃんの笑顔がとても眩しいです。


「うふふ、エルちゃんならこれも好きそうかな? これはね〜ドーナツって言うんだよ♪」

「――――――!?」

「ん? エルちゃん石取り出してどうするの?」


 エルちゃんがポケットから、先程道端で拾った石を取り出して、私にドヤ顔で見せ付けて来ています。本当に私の妹は世界一可愛いです♪


「あらあら、エルちゃん? その石はポケットに閉まっておこうね」

「――――――!」


 本当なら、道端に落ちている石は汚いので捨てたいのですが、エルちゃんから石を取り上げたら恐らく泣いてしまうでしょう。ここはエルちゃんの好きな様にさせてあげるのが得策ですね♪ そして、私とエルちゃんがパンを見てたら後ろから声を掛けられました。


「こんにちは♪ 可愛いらしいお嬢さんですね♪」

「はい♪ 妹が可愛いすぎていつも振り回されてますよ〜あっ、失礼しました。私は一ノ瀬 葵と申します♪ こちらは妹の一ノ瀬 愛瑠エルちゃんです♪」

「――――――?」


 誰だろう? 明智商店に新しく入ったバイトの方でしょうか? お淑やかで清楚……しかも煌びやかで豪華な高級感溢れる着物を着こなしています。パッチリとした目に整った顔。美しいスベスベそうな綺麗な肌に髪の毛も腰まである綺麗な黒色のロングストレートヘアーです。正に美しいが本当に似合う様な店員さんです。うちのお姉ちゃんとは違うベクトルの人なのかもしれません。お姉ちゃんも物凄い美人さんだけど、中身があれなので……


「うふふ……葵さんにエルちゃんね。私はご縁があって、今日からここで働かせて貰っている新人店員の一ノ瀬 かなでと申します♪」

「えっ!? 一ノ瀬ですか!? 同じです!」

「そうですね♪ 是非今後とも仲良くして欲しいです♪」

「はい♪ ん? エルちゃんどうしたの? そんな怯えて」


 何やらエルちゃんが店員の奏さんを見た途端、身体をプルプルと震わせております。何処に怯える要素があるのでしょうか? 奏さんは優しそうで穏やかな雰囲気の方だと思うのですが……


「あうっ……」

「あらあら? どうしたのかな?」

「――――――。」

「え? 私にその石くれるのかな?」


 エルちゃんは怯えながら、さっき拾って来た石を店員の奏さんに渡そうとしております。さっきまであんなに大切そうに持ってたのに突然どうしたのかな?


「エルちゃんありがとね! 私、このエルちゃんから貰った石を家宝にしますね♪ 帰ったらこのエルちゃんの指紋が付いた石を洗わずに丁寧に保管して、ぺろぺろしちゃいます♪」


 んんんっ!? 今さらっと凄い事言わなかった!? あれ? もしかして奏さんもお姉ちゃんみたいにあっち系の人なのかな? どうだろ……まだ決めつけるのは早いかもしれませんね。にしても奏さんの一つ一つの動作や喋り方が正に優雅。完璧と言っても過言ではありません。奏さんは本物のお姫様みたいです♪ 



 ◆かなで 視点



 葵さんもエルちゃんも超絶可愛いです! 私の理想のperfect(百合)を実現させるには必須です! あぁ……私も妹が欲しくなって来ちゃいました♪


「――――――?」

「ん? エルちゃんどうしたんですか?」


 エルちゃんがこちらを見上げながら私の顔をじっーと見つめております。何て愛らしい顔、ぱちぱちとしたおめめ……もう全てが可愛いですっ! もしこの場に誰も居なかったらエルちゃんをお持ち帰りしたいくらいです! はぁ……はぁ……


「ごほんっ……私の名前は奏って言うの♪ 宜しくねエルちゃん♪」

「――――――?」

「そんな不安そうな顔しなくても大丈夫ですよ〜ほーら! 居ない居な〜い……ばあっ!!」

「――――――!? ふぇ……」


 あれ? もしかしてデジャブかな? エルちゃんが泣きそうです。ここはエルちゃんに怖くないですよ〜とアピールしなくては行けませんね。むしろエルちゃんの好感度を限界突破させたいです!


「あ、あうぅ……」

「あら……そういう事ですか」


 エルちゃんはどうやらトイレに行きたかったみたいですね。でも、時すでに遅しでした。どうやらこの場で漏らしちゃったみたいです……幼女のお漏らし……良いね(変態思考加速)


「あら、エルちゃん漏らしちゃった? しまった、今日の朝パンツじゃなくて、エルちゃんにオムツを履かせれば良かったかな?」

「葵さん、大丈夫ですよ! 明智商店にはオムツも御座いますので! 良ければ私がエルちゃんにオムツ履かせますよ♪」

「いえいえ、そんなご迷惑をお掛けする訳には……」

「葵さん! お金払うので私にやらせて下さい!」

「え、ええぇ……」


 そして私は葵さんを強引に説得してエルちゃんにオムツを履かせる権利を頂きました! どさくさに紛れて抱っこしてからあんな事やそんな事……うふふ


「エルちゃん、奏お姉さんが新しいオムツ履かせてあげますよ〜よいしょっと! はぅ……エルちゃん軽いなぁ」

「――――――!?」

「エルちゃん? 暴れたら危ないですよ? それでは葵さん、エルちゃんを少しお仮りしますね♪」

「は、はい……」


 あぁ……夢にまで見たきゃわわな幼女ちゃん♪ ぱちぱちとしたおめめに小さなぷるんとした幼女特有の唇。肌もスベスベ……髪の毛もサラサラで良い匂いがしますね。


「おっと……素の私が出ちゃいそうでした。でも少し強引だったかな……」

「ぐすんっ……」

「あぁ、ごめんねエルちゃん! 早速変えますね〜」


 私は休憩室のソファにエルちゃんを横にして、早速エルちゃんのスカートをめくりました。


「――――――!? ――――――!!」

「ほほう、熊さんのパンツですか。可愛いの履いてるんだね♪」

「――――――!! ――――――!?」

「そんな恥ずかしがらなくても大丈夫だよ〜奏お姉さんこう言うの得意なの♪ 任せて♪」


 女の子同士なら何も問題無いですよね?

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