第34話 早乙女キララ降臨

 

 ◆楓視点



「エルちゃん♪ 目的地に着きましたよ〜ここが明智商店だよ♪」

「――――――!? ――――――!!」

「うふふ……エルちゃん驚いてるね♪」


 私達は目的地の明智商店に到着しました。家から歩いて10分くらいの距離なので近いです♪


「あんらぁ!? あらあらあらぁ!? お久しぶりん♡ 楓ちゅわんに葵ちゃんじゃないのぉ♪」

「あっ! キララさんお久しぶりです♪ ご無沙汰しております」


 丁度私達が明智商店に着いた頃、たまたま店の外に店長の早乙女キララさんが出て来ました。キララさんは私達を見た瞬間、身体をくねくねさせながら女の子走りで私達の前まで出迎えてくれました♪


「キララさんお久ぶり! 元気してたぁ?」

「もおぉ〜めちゃくちゃ元気よぉん♡ 葵ちゃん、見て見てぇん! これ、アタシの手作りの衣装なのよぉん♡ どうかしらぁん?」

「おおっ! 似合ってるよ! 凄く素敵! チャイナドレスのクオリティ高いなぁ」

「ほんとぉっ!? アタシめっちゃ嬉しいわぁん♡ んふ〜(魅惑の悩殺ポーズ)」


 昔から葵ちゃんとキララさんは物凄く仲良しさんなのです。葵ちゃんが中学の頃からの知り合いです。そして、VTuberの西園寺モモネちゃんの中身が葵ちゃんだと言うこともキララさんは知っております。


「あら? あらあらあらぁっ!? この光り輝くキャンディーちゃんは誰っ!? あっ! もすかしてぇ楓ちゅわんの子供かしら!?」

「待って、私まだ結婚してないよ〜この子は訳あって一ノ瀬家の家族になっためちゃくちゃ可愛い妹の一ノ瀬 愛瑠エルちゃんよ♪」

「そうなのねぇん♡ まぁ、深い事情は聞かないわぁん♪ 乙女はいつだって、秘密のベールで守られているものねぇ♡ きゃあああっ!! そんなビクビクしなくても大丈夫よぉん♡ 何て可愛いキャンディーちゃんなのかしら♪ もぉ〜食べちゃいたいわぁん♡」

「ヒィッ……!?」


 あらあら、エルちゃんが目を見開いて驚いているわね♪ でも、エルちゃんの気持ちは良く分かります。私もキララさんに初めてお会いした日は似たような反応だったので♪ 慣れたらあっという間です。


「しかもこの長いお耳は……もすかしてぇ〜コスプレなのかしらぁん♡ ねえねえ! 楓ちゅわん! この愛らしいキャンディーちゃん抱いても良いかしらっ!?」

「うふふ……ちょっと待って下さいね〜よいしょっと」

「――――――ッ!?」


 私はエルちゃんをベビーカーから降ろして、優しく抱っこしてからキララさんの方へエルちゃんを預けました。


「――――――!? ――――――!!」

「エルちゃん大丈夫だよ〜キララさん優しくて良い人だから♪」


 あらあら、エルちゃんが私の身体にしがみついて離れようとしません。涙目で私を上目遣いで見つめて、庇護欲がそそられますね♪ 可愛いです♡ ぺろぺろしちゃいたいです♪


「エルちゃん? 大丈夫だから、ね?」

「――――――!! ――――――!?」


 私はエルちゃんをよしよしと頭を優しく撫で撫でしてから、キララさんにエルちゃんを預けました。キララさんは、エルちゃんを抱いて顔をうっとりとさせてご満悦の様子です♪ 


「このおチビちゃん、めっちゃきゃわいいわぁん! アタシの事、キララお姉ちゃんと呼んでいいのよぉん♡ うふん♡ 頬っぺたスリスリもサービスしとくわねぇ♡」

「うぅっ――――――。ぐすん……ふぅぇぇええええええんんんっ!!」

「え!? ちょっ!? ど、どうしましょ!? 楓ちゅわん!?」


 何となく予想はしていましたが、キララさんに抱っこされながらエルちゃんが号泣してしまったのです。エルちゃんは私の方を見つめて、助けてくれと訴えているような目で見ておりました。


「あらあら、キララさん。エルちゃんをこちらに」

「ごめんね、アタシ怖かったかしらぁん?」

「エルちゃんは人見知りな所があるので、キララさんが落ち込む必要は無いですよ」


 私は号泣しているエルちゃんを優しく抱っこして、背中をそっと叩いてあやしました。私の胸に顔を埋めちゃって〜甘えん坊さんですね♪


「エルちゃん〜大丈夫でちゅよ♪ キララさんは優しくて素敵な人だから、ね? ほ〜ら、大丈夫だから♪」

「――――――。――――――?」

「楓ちゅわん、ごめんなさいねえ……お詫びにアタシがエルちゃんに駄菓子ご馳走しちゃう♡」

「いえいえ! お気になさらずに。ちゃんとお金払いますから!」

「別にアタシお金に困ってないから、良いのよぉん〜ゲイバー沢山経営してるからね♡ 明智商店は私の趣味なのよん♡」


 流石にそれは申し訳ないので、しっかりとお金は払わさせて頂きます。私はキララさんに化粧水を渡さなくちゃ行けないので、先に葵ちゃんとエルちゃんには店の中に入っててもらいましょう。


「葵ちゃん、エルちゃんと一緒に先に中に入ってブラブラ見てて」

「うん! りょーかい! エルちゃん〜葵お姉ちゃんと一緒にお菓子見て回ろうね♪ はい♪ おてて繋ぐよ〜♪」

「――――――。ぐすっ……んぅ?」


 葵ちゃんはエルちゃんと一緒に手を繋いで店内に入って行きました。エルちゃんは身体を震わせながらビクビクと怯えていましたが、きっとすぐに慣れると思うので大丈夫でしょう。


「あっ! 楓ちゅわん! 言うの忘れてたわん〜あたしの店に最近1人ね、バイトちゃんを雇ったの♡」

「あら、そうなんですか?」

「そうなのよぉん! しかも! これがまた、お淑やかでめちゃくちゃプリティな子なのよぉ〜アタシ最初は、女優さんかと思っちゃったわぁん♡ 名前は一ノ瀬 かなでちゃんよぉん♡ 楓ちゅわんと同じ名前ね〜♪」


 ほほう。そんなに美しい人が入って来たのですか。しかも、苗字は一ノ瀬ですか……気になりますね。


「今日奏さんという方は出勤してるのですか?」

「居るわよぉん〜今は店の倉庫で、荷物整理してるわね。後で呼ぶわねぇん♪ んふ〜(恐怖のマジキチsmile♡)」

「はい♪ 楽しみです♪」


 奏さんという方と是非ともお友達になりたいですね♪ まだ会っては居ませんが、謎の親近感が湧いてきます。さてと、例のアートリック社の化粧水をキララさんにプレゼントしましょう。


「良かったらこれ! キララさんにプレゼントします!」

「ん? これは……もすかして!? アートリック社の化粧水じゃないのおん!? こんな素敵なもの頂いて良いのかしらっ!?」

「はい♪ 是非とも使って下さい♪」

「楓ちゅわんありがとぉっ!! この化粧水でアタシの肌が輝いちゃうわぁん♡ これで次の合コンは、大成功間違い無いわねぇん! 必ず白馬の王子様を射抜いて見せるわぁん♡」


 キララさんがこんなにも喜んでくれるとは思いませんでした。プレゼントして良かったです♪ キララさんは凄い人なのです。年齢は不明ですが、人生経験が豊富でキララさんに相談をする方が多いらしいのです。この方は日本のオカマ業界の重鎮とも言われ、数多くのニューハーフの方がお姉たまと慕っている程です。噂ではこの人を敵に回すと地の果てまで追いかけられて、男性の方はお尻を開発されるとかされないとか。



 ◆エルちゃん視点



「んぅ? お姉さん?」


 僕は漆黒の馬車「ダークホース」から降ろされて、現在お姉さんに抱っこされて何故か頭を撫で撫でとされております。


「――――――!!」

「みゃあっ!? こ、来ないで下さい!」


 例の化け物……ゴリラウダー似の大男に這い寄られています。鼻息荒く、これは僕を食べる気なのかもしれません!


「ぼ、僕を食べても美味しくないですよ!? お腹壊しても知らないですからね!?」

「――――――? ――――――♪」

「ひゃぁっ!? 殺されるっ!?」


 何でお姉さん達は、そんなに平然としているのかが信じられません。この人どう見ても変態不審者さんですよ!?  

 騎士団に通報した方が良いですよ!


「――――――エ―――ル――――――ちゃん」

「えっ、お姉さん……嘘ですよね?」


 何故かお姉さんが満面の笑みで、僕をゴリラウダーに引き渡そうとしているのです!


「やだやだ! お姉さん!? ぼ、僕を売る気なのですかっ!?」

「――――――♪」

「ぐぬぬっ……僕は断固として、お姉さんの腕の中から動きませんからねっ! ふにゃぁっ!?」


 僕はお姉さんの身体にしがみついて最後の抵抗を試みましたが、所詮はか弱き幼女の力。お姉さんの腕力に負けて僕はゴリラウダーの腕の中に収まってしまいました。


「おぇっ! ゴリラウダーの身体から物凄くキツい香水の匂いがしゅる! まだスラムの匂いの方がマシだよぉ」

「――――――♪」


 匂いが混ざり過ぎて鼻が曲がりそうです! スラム出身の僕でもツンッとくる匂いです! もう匂いだけで魔物を殺せるレベルなのではないでしょうか? 恐らく勇者ですらこのゴリラウダーを討伐する事は不可能でしょう。ゴリラウダーのあなをほる攻撃とかで勇者は瞬殺ですよ!


「みゃあっ!? や、やめ! 痛い、痛いよぉ!」

「――――――♡」


 このゴリラウダー顎髭が少し生えているので、頬っぺたをスリスリされるとこれがまた結構痛いのです!


「うぅっ……お姉さんの元に帰るっ! これ以上地獄のスリスリ攻撃をするなら、僕の伝説の杖で成敗してやるからね! 僕の「隕石落下メテオストライク」食らって、無傷で済んだやつは一人も居ないんだもん!」

「――――――♡♡」

「ぎゃああああっ!! 助けてぇ、お姉しゃん……ぐすんっ……ふぅぇぇええええんんんんっ!!」


 結局僕はゴリラウダーに心も身もズタズタにされてしまいました。今日の僕は運が悪い日みたいです。


「――――――!? ――――――!!」

「うわぁぁぁああああんっ! お姉しゃんっ……!」

「――――――♪」


 僕は泣きながらゴリラウダーから解放されて、お姉さんの腕の中へ再びゴールインしました。やっぱりお姉さんに抱っこされる方が落ち着きます。


「お姉しゃんのいじわるぅっ!! もう一緒に寝てあげないもんね! ぷいっ!」

「――――――♪ ――――――?」

「うぅ……や、やっぱり今のは無しです。夜はお姉しゃんと一緒に寝りゅ……」


 まあ流石にね。夜はお姉さんが一人だと寂しくて泣いちゃうかもしれません。ここは僕が大人の対応をして上げましょう。決して……決してっ! 僕が一人で寝るのが寂しいと言う訳では無いんだからねっ!

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