第31話 一ノ瀬家の朝

 

 ◆楓視点


 私とエルちゃんは身支度をした後に、リビングで一緒に仲良く朝食を食べています。朝ごはんは定番の食パンと苺ジャムです♪ 飲み物はエルちゃんの大好きなオレンジジュースにしました。


「あらあらぁ、エルちゃんったら〜♡ お口にイチゴジャムが付いてまちゅね〜ふきふきしてあげるね。そんな慌てなくても、誰もエルちゃんの分の食パン取らないからね。喉つまらせないようにゆっくり食べてね♪」

「――――――!? ――――――!!」

「美味しい?」


 私は朝から癒されております。可愛い妹のエルちゃんが食パンを口に詰めて、リスさんみたいに頬っぺたを膨らませてモグモグと食べています。エルちゃんは本当に美味しそうに食べるので、見てるこっちも幸せな気分になりますね♪


「エルちゃん、今日はお姉ちゃん達と近所の駄菓子屋さんに行きますよ〜そして、帰って来たらお姉ちゃんと一緒にお勉強頑張ろうね♪」

「――――――。」

「ん? 食パンおかわりする?」


 エルちゃんが食パンを食べ終わった後に私が手にしてる食パンを見ながら、指を咥えてじっーと見ております。エルちゃんは本当に分かりやすい子ですね♪


「はいどーぞ♪」

「――――――!? ――――――!!」


 少し意地悪してしまいました。食パンをエルちゃんが取ろうとした瞬間に引っ込めて見たら、エルちゃんは涙目で机をバンバンっと叩いて頬っぺたを膨らませています。エルちゃんの反応が物凄く可愛いくて、本当は駄目だと分かってるのですがついやってしまいます。


「――――――!? ――――――!」

「うふふ……エルちゃんごめんね。お姉ちゃん物凄く反省しました♪ はいどーぞ♪」

「――――――? ――――――♪」


 やはりエルちゃんはチョロいですね。これじゃ知らない人からお菓子とか貰ったら、警戒せずホイホイ付いて行かないか心配になって来ますね。


「うふふ……慌てないでゆっくり食べなきゃ、メッですよぉ。あぁ、またお口周りがジャムでべっとりだね。ふきふき〜♡」


 エルちゃんのお口周りに苺ジャムがべっとり付いてしまいました。これは私が食べさせた方が良いのかもしれませんね。お姉ちゃんの特権でもあります。


「うわぁぁぁぁっん!! ガチャ爆死した……せっかく、貯めたジュエルが……私のアンソニーどこぉ?」

「あらあら、葵ちゃん朝からどうしたの?」


 ソファに座っている葵ちゃんが急に叫んで何事かと思いましたが、どうやら葵ちゃんがやってるソシャゲのガチャで爆死したらしいですね。


「バチモンの新キャラが来ててね……これがまた可愛いの! だから思い切って貯めてたジュエル全部使ったら、盛大に爆死だよぉ……ぴえ〜んっ!」

「あらあらぁ……まあ、そういう時もあるわよ。あら? エルちゃんどうしたの?」


 エルちゃんが食パンを持ちながら、席を立ち上がり葵ちゃんの方へトコトコと近付いて行きました。


「うぅ?」

「ん? あ、これはね。スマホって言うんだよ〜エルちゃんこれが気になるの?」

「――――――? あいっ!」

「あぁっ!? エルちゃん、そこ押しちゃ駄目だよ! あぁ……しかも画面に苺ジャムが……」


 エルちゃんがどうやら葵ちゃんのスマホに興味があるみたいで、ガチャ画面の残りラストのスカウトチケットのボタンを押してしまいガチャを引いてしまったらしいのです。その際に葵ちゃんのスマホの端末に苺ジャムがべっとりと付いてしまいました。


「ふぁっ!? こ、これって虹確定演出じゃん!」

「――――――? んにゅ?」

「え……まじか!?」


 何と! エルちゃんが引いた単発ガチャが、葵ちゃんのお目当てのピックアップキャラのアンソニーだったそうで!


「わ〜い! エルちゃんありがとう! ムギュっ♡」

「ぐぬぬっ!?」

「後で駄菓子屋さんで好きなだけお菓子買ってあげるからね♡」


 何とも微笑ましい光景ですね♪ 葵ちゃんがエルちゃんを抱っこして、自分の膝の上に乗せながらエルちゃんにスマホを見せながら抱き着いています♪ 私も葵ちゃんとエルちゃんを抱きしめたいです♪


「葵ちゃん、はいティッシュ」

「お姉ちゃんありがとう! ついでにエルちゃんのおててとお口もキレイキレイにしようね〜」

「わぷっ……ふにゃぁ」

「ふきふき〜♪ んんっ! 可愛い♡ どうしてエルちゃんはそんなに可愛いの?」


 あぁ、羨ましいです! 葵ちゃんがエルちゃんを後ろからムギュっと抱きしめながら頬っぺたをスリスリとしています! 私も混ざりたいです!

 エルちゃんは恥ずかしそうにえへへと笑っております。これぞまさに天使の笑顔ですよ!



 ◆エルちゃん視点



 うひょおおお!? 何このモチモチとしたパンは!? それにこのソース? 赤色のドロドロとした物をパンに付けると甘くて美味しい! これ単体で食べるのも有りですね。


「ここの家で出てくるパンはどれも柔らかい……ここに来る前はパンって固くて不味くて、スープに浸さないと食べれない物ばかりだと思ってました。恐るべし……そしてこのドロドロとベタベタした甘い食べ物が癖になりそう」


 僕がモチモチパンを食べてたら何故かお姉さんが、僕の方を慈愛に満ちた様な優しい表情でずっと見つめてくるのです。


「んん? 僕の顔に何か付いてますか?」

「――――――♪」

「ふむふむ……良く分からぬ」


 僕は再びパンを食べ始めたら、今度はボブカットヘアーのお姉さんが突然何か叫び始めたのです。


「――――――――――――――――――!!」

「何じゃあれわ」


 お姉さんが手に持ってる薄いカードみたいな物をポチポチと押しているのです。しかもカードが意志を持つかのようにピコピコと光っていました。僕はそれが何かとても気になってしまい、お姉さんに近づきました。


「ねえねえ、お姉さん。それなぁ〜に?」

「―――――――――♪」

「ふむふむ、これ押せば良いのかな? えいっ!」

「―――――――――!?」


 僕がカードを触ったら、何とそのカードが眩い光で光って居るのです! これは……分かったぞ。あれだ!


「お姉さん、これは冒険者ギルドで魔力とかを測定するための魔力測定カードですね?」

「――――――!!」


 やはりそうですか。お姉さんのこの慌てようを見て確信に至りました。そうか、こんなにも虹色に光っているのだ。僕は魔力の素質が凄まじいのかもしれない。それでお姉さんは驚いてるのですね?


「ふふ……僕は何たって精霊猫エレメント・キャットをテイム出来たんだ……えへへ」


 やばいです。朝からニヤニヤが止まりません。こんな顔お姉さん達に見られたら、僕は軽蔑されてしまうかもしれないですね。お姉さん達に見捨てられたら僕はもう生きて行ける自信が無い……


「はわっ!?」

「――――――♪」


 僕がニヤニヤしていたら、いつの間にかお姉さんの膝の上に乗せられておりました。そしてその愛らしい笑顔で、僕の頬っぺたにスリスリ攻撃を仕掛けて来たのです!


「お、お姉しゃん!? は、恥ずかしいです! 僕はもう立派な大人なのです! しかも、ブライアンもこっちを見てますよ!」


 僕の相棒の精霊猫……ブライアンがじっーと僕の方を呆れたような顔で見つめております。


「あっ! ブライアンにもご飯あげなくちゃね。ブライアン! このパンモチモチして美味しいよ!」

「――――――!?」


 僕はお姉さんの腕の中から脱出して、ブライアンの元までモチモチパンを持って走って行きました。



 ◆葵視点



「あ! エルちゃん、暴れたら危ないよ?」

「――――――!!」

「ん? どこ行くの?」


 エルちゃんは私の膝の上から降りて、白猫のタマちゃんの元まで駆け寄って行きました。


「エルちゃん、走ったら転んじゃうよ?」

「――――――!?」


 案の定エルちゃんは何も無い所で盛大に転んでしまいました。そして床に苺ジャムの付いた食パンをべっちょりと……エルちゃんを見てた楓お姉ちゃんが、慌ててエルちゃんの元へと駆け寄って行きます。


「あらあら、エルちゃん大丈夫?」

「あうっ……」


 エルちゃんが涙目になりながら立ち上がって、床に落ちたパンを見つめております。物凄く悲しそうな表情をしておりますね。


「――――――。」

「エルちゃん!? 床に落ちたパンは食べちゃ駄目だよ? また新しいの出して上げるから。ね? 何処も怪我してない? 大丈夫?」

「うぅ……ぐすんっ」


 これはデジャブです! エルちゃんが泣きそうです! これは私とお姉ちゃんで宥めてあやすしか無さそうですね。


「にゃ〜ん♪」 

「――――――。――――――?」

「にゃお〜ゴロロ」


 何と白猫のタマちゃんが、泣きそうなエルちゃんの近くに寄って頬っぺたをスリスリし始めました。お姉ちゃんも笑顔でクスクスと笑っており、物凄く尊い光景です。


「お! タマちゃんやるぅ〜エルちゃんが泣き止んだね。凄い!」

「一時はどうなるかと思ったけど、タマちゃんのおかげね♡」


 エルちゃんはタマちゃんの頭を恐る恐るそっと撫で撫でしています。はうっ……朝から可愛い成分補給が捗どっちゃうね♪ タマちゃんもエルちゃんもどちらも可愛い過ぎ!

 もう私、お姉ちゃんみたいに語彙力完全に消失してる気がする。


「うふふ……パシャパシャパシャパシャパシャパシャ!!」

「お姉ちゃん写真撮りすぎぃっ!」


 楓お姉ちゃんは自分のスマホで、エルちゃんとタマちゃんを連射でパシャパシャと撮ってご満悦の様子です。


「これは職場のデスクトップ用と私のスマホ画面の背景用とお化粧道具セットにも貼ってそれから……あ! 鑑賞用に額縁に収めて私の部屋とリビングにでも飾ろうかしら♪」

「うわ……最早溺愛してるとかのレベルじゃない……末期だ。」


 お姉ちゃんのスマホのフォルダの中は、きっとエルちゃんの写真でいっぱいですね。お姉ちゃんさりげなくいつもパシャパシャとエルちゃんに気付かれないように撮ってるからね。お姉ちゃんはもうエルちゃん無しでは生きて行けない様な気がします。


「やれやれ、タマちゃんのご飯もそろそろ用意しなくちゃ」


 私は台所から猫ちゃん専用の餌を持って来てお皿に入れました。


「にゃ〜ん♪」

「はい、タマちゃんも良く噛んで食べてね♪」


 私がお皿に猫ちゃん用のご飯を入れた後に、タマちゃんが近寄って来てモグモグと食べ始めました。


「――――――。じゅるり……」

「あ、エルちゃん? それは猫ちゃん用のご飯だから、つまみ食いは、メッだよ?」

「――――――? ――――――。」


 エルちゃんの食欲が中々ですね。キャットフードを見て美味しそうと思えるエルちゃんが凄いです。


「さてと、葵ちゃん。そろそろ出掛けましょうか」

「おけおけ! 例のベビーカーにエルちゃん乗せるの?」

「うん♪ 勿論! その為に買ったんだから♪ うさぎさんのぬいぐるみも持たせちゃお♡」


 そう言うとお姉ちゃんは何処からか、うさぎさんのモフモフの可愛いぬいぐるみを持って来ました。


「エルちゃん〜そろそろお姉ちゃん達とお出掛けしよっか。そして、エルちゃんの大好きなモフモフのぬいぐるみでちゅよ〜」

「――――――?」

「よいしょっと」


 エルちゃんはキョトンとしていましたけど、お姉ちゃんがエルちゃんを抱っこしてベビーカーに乗せました♪ エルちゃんは目をキラキラと輝かせながらうさぎさんのぬいぐるみをモフモフしております。


「エルちゃんがベビーカー乗っても全然違和感無いわね♪ さて、葵ちゃん準備は良い?」

「私は何時でも大丈夫だよ!」

「では明智商店に行きましょうか♪」


 今から3人でお出掛けです。今日は外も快晴で、絶好のお出掛け日和です♪ エルちゃんは駄菓子を見たらどんな反応をするのか楽しみです!

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