第30話 過保護なお姉さん

 

 ◆葵視点


「ふぅわああ〜ふうぅ……あれ、もう朝かぁ」


 私は目を擦りながら上半身を起こしました。カーテンの隙間からは朝日の光が漏れて、小鳥たちの囀りが聞こえますね。美しい朝の到来を告げています。


「今日は天気良さそうだね。んんぅ〜」


 私は身体を伸ばしながら、隣りで寝ている最愛のお姉ちゃんと妹の可愛いエルちゃんの寝顔を見て、自然と笑みが漏れてしまいます。


「ふふ……エルちゃんは何か美味しい物を食べてる夢でも見てるのかなぁ?」


 エルちゃんはお口をムニャムニャとさせて、えへへと何か素敵な夢を見てそうです♪ 対するお姉ちゃんは……


「ぐへへ……エルちゃん。……んふ……ディフフ……ムニャムニャ」


 まあ……見なかった事にしておきましょう。楓お姉ちゃんが最近残念な美少女と言うポジションに収まりつつあるかもしれません。エルちゃんを宝物のように抱いて幸せそうな顔で寝ています。


「エルちゃんの肌はモチモチしてスベスベして最高だね♪ ぷにぷに〜♪」


 私は寝ているエルちゃんの頬っぺたをぷにぷにと突っついて見たり、指先でそっと撫で撫でしました。もう癖になりそうです! もしかしたらエルちゃんは将来お姉ちゃんを超える美人さんに化けるかもしれませんね。一体どれ程の美少女になるのやら。


「ムニャムニャ……」

「あらあら♪ エルちゃん? それは食べ物じゃなくて、私の指だよ〜」


 エルちゃんが寝惚けながら、私の指を食べ物と勘違いしてかハムハムとして来ました。くすぐったいですね♪


「はぁん♡ 幼女特有の柔らかい唇……今ならお姉ちゃんもエルちゃんも寝てるから、大丈夫だよね?」


 私はエルちゃんの口から指をそっと抜いて、お姉ちゃんが寝ている事を確認してからエルちゃんの唇と私の唇を重ねます。


「んん……」


 かなりのディープなキスをしてしまいました。私はお姉ちゃんみたいにエッチで百合をする様な趣味は持ち合わせては居ませんが、これはこれで悪くないですね♪


「頬っぺたにもチューしとこ♡ チュッ♡」

「えへへ……ムニャムニャ」

「エルちゃんったら、本当に食いしん坊さんだね〜」


 エルちゃんは普段おとなしい子なのですが、食べ物絡みになると必死に食い付いて来るのです。その必死な様子も可愛いくて、つい意地悪したくなって困っちゃいます。


「ディフフ……葵ちゃん……そこはらめぇええ……ムニャムニャ」

「………………」


 楓お姉ちゃんの夢の中では、一体私は何をしているのでしょうか……てか本当に寝てるんだよね?


「お姉ちゃん……」


 試しに楓お姉ちゃんの頬っぺたをぷにぷにと突っついて見たら、これがまた幸せそうな表情を浮かべるのです。外ではクールビューティーなお姉ちゃんが、家ではこんな表情するなんて他の人から見たら想像出来ないんだろうなぁ〜しかも服がはだけていて、お姉ちゃんの爆乳が溢れるようにはみ出しています。てか、お姉ちゃんブラジャーつけてないじゃん!


「やれやれ……でも、逆にこういうのがギャップ萌とかする可能性があるのかな?」


 私はお姉ちゃんの将来が心配です。変な男にホイホイ付いていかなければ良いのですが……お姉ちゃんは恋愛に関して無頓着だから、相手を勘違いさせてしまう事も多々あるのです。お姉ちゃんからしたら、親切からしている様な事でも男性の人から見たら、俺に好意抱いてる? これは脈アリなのか? 等とお姉ちゃんを好きな人が多数居るのです。これは妹として見過ごせません! 私がしっかりとしなくちゃね。お姉ちゃんに這い寄る羽虫は潰しておかないとね♪ 


「やれやれ……美人な姉と妹を持つと苦労が絶えなさそうだね」

「んにゅ……すぅ……すぅ」

「あらあら♡ エルちゃんったら、甘えん坊でちゅね〜♡」


 何とエルちゃんが寝ながら私の胸に顔を埋めて来たのです! 無意識のうちに赤ちゃん言葉が出てしまいました。エルちゃんが最近小悪魔系天使ちゃんとなって来ている様な気がします。この世のありとあらゆる可愛いを詰めた存在のエルちゃん。あぁ、真の可愛いの前には人は本当にダメになりそうですね。


「どうしよう……めっちゃ嬉しい。エルちゃんが私に甘えて来てる……うふふ」


 多分、今の私の顔もお姉ちゃんみたいになっているのかもしれません。これでは人の事は言えませんね。ニヤニヤが止まりません!


「今までお姉ちゃんっ子だったから甘える側ではあったけど、今後はエルちゃんの姉としてしっかりお姉ちゃんしなくちゃね♪」


 エルちゃんの頭を優しく撫で撫でしていたら、反対側から楓お姉ちゃんが私を含めて抱き枕にして来たのです!


「エルちゃん……葵ちゃん……しゅき♡」

「お姉ちゃんったら……でも暖かい」


 昔は良くお姉ちゃんにこうして抱いてもらったのです。大人になってから恥ずかしいからと言う理由で断って居たのですが、家でなら昔みたいに……


「うふふ……私ももう少しだけ寝ようかな」


 まだ朝の7時です。私も再び目を閉じて、エルちゃんの身体を優しく抱いて二度寝する事に決めました。二度寝は至福の時です♪ 私の胸にエルちゃんが顔を埋めながら抱き着いてスヤスヤと眠っております。楓お姉ちゃんと私でエルちゃんの身体を優しく包み込む様な形となりました。これで甘えん坊のエルちゃんも寂しくはないと思います。 



 ◆エルちゃん視点



「んにゅ……んぅ?」

「――――――♪」

「ふぉぉあああっ!?」


 僕が目を覚ましたら目の前にお姉さんの顔があって、一気に眠気が吹き飛んでしまいました。と言うか近すぎませんかっ!? 鼻と鼻の先がぴったんこする程近いのですけど!?


「――――――♪」

「んみゃあっ!?」


 僕は朝からお姉さんの天使のキッス攻撃を受けて、頭の中が混乱しております。お姉さんは美人何だからそんな容易く唇を捧げては行けません! 僕は女の子に耐性がまだ……


「お、お姉さんっ!? 何か鼻息き荒いですが大丈夫ですか?」

「――――――!! ♡♡♡♡♡♡♡!!」

「わわっ!? ぼ、僕は赤ちゃんではないですよ!? は、恥ずかしいです……」


 僕はお姉さんに抱かれながら背中をゆすられて、何故かあやされています。お姉さんの後ろでボブカットヘアーのお姉さんがクスクスと笑っていました。笑ってないで助けてくださいよ!


「なっ!?」


 ボブカットヘアーのお姉さんの手には、子供用のフリフリとした可愛いらしい白いワンピースを手にして僕の方を見つめております。


「え、えっ? まさか、そのフリフリな可愛らしい服を僕が着るのですか?」

「――――――♪」


 僕はモゾモゾと動きベッドを抜け出して、全速力で扉の方へと走りました。


「僕はかっこいい服の方が良いです! そんなヒラヒラの服着るくらいならスラムの頃に着ていたボロ布を纏ってた方がマシですよっ!」

「――――――!?」

「――――――!!」


 お姉さん達には申し訳無いですが、僕だってれっきとした男の子なのです! しかも成人前の男性です! 今はおち〇ち〇付いてませんが、心は立派な……


「――――――♪」

「なっ!? ドアが開かない!? お姉さん達の罠なのかっ!?」


 僕の逃走劇はこうして呆気なく幕を閉じました。



 ◆楓視点



「今日もエルちゃんは可愛いでちゅね〜チュッ♡」

「――――――!? ――――――!!」

「エルちゃんったら〜遠慮しなくて良いんだよ? 本当はお姉ちゃんに甘えたいという事は知ってるんだからね♪」


 エルちゃんを抱きながら撫で撫でしていたら、エルちゃんは必死の様子で私の腕の中で暴れております。エルちゃんは恥ずかしがり屋さんなので、私からこうでもしてあげないと甘える事が出来ないのです。エルちゃんが素直に自分から甘えて来るようになる日をお姉ちゃんは心から待ち望んでいるからね♪


「さてと、そろそろ起きましょうね。エルちゃん〜こっちの服に着替えまちゅよ〜はい♪ バンザーイして♪」

「――――――!!」

「あっ! エルちゃんどこ行くの!?」


 何とエルちゃんは、私がベッドから起き上がった瞬間に全速力でドアの方へと走って行きました。葵ちゃんはエルちゃんに着させる為の可愛い白いワンピースを持ちながら、ニヤニヤと私達のやり取りを眺めています。


「葵ちゃん! エルちゃんを捕まえて!」

「お姉ちゃん、大丈夫だよ〜ほら、あれ見てよ」


 私は部屋の入口に向かって走ったエルちゃんの方に視線を向けました。


「――――――!! ――――――!?」

「うふふ……あらあらぁ〜エルちゃん? ドアノブ回す方向が逆だよ? しかも押すんじゃなくて、回しながら引っ張るんだよ〜」


 エルちゃんは必死な表情を浮かべながら、ドアノブを反対方向に回して何だかテンパっております。余程焦っていたのかドアノブを回す方向が逆で、扉を押して居ます。我が家の可愛いお姫様は、朝から私達をその可愛さで悶え殺しにしようとしております。


「あっ! そういう事か。お姉ちゃん、エルちゃんはもしかしたらトイレに行きたかったんじゃないかな?」

「あぁ、そうだったのね。エルちゃん、ごめんね。お姉ちゃんがトイレ連れて行って上げまちゅからね〜♪ まあオムツしてるから漏らしたとしても大丈夫だけどね」


 私はエルちゃんを抱っこして、葵ちゃんがドアを開けてくれたのでそのままの勢いでエルちゃんを抱えてトイレへと直行しました。




 ◆一ノ瀬家 2階トイレ前



「はい、トイレに着きましたよ〜エルちゃん一人でおしっこ出来るかな?」

「――――――!?」

「あ、エルちゃん暴れると危ないでちゅよ? またおしっこ漏らしちゃうよ? 良いの?」


 私はトイレのドアを開けてエルちゃんを便器に座らせました。私が扉を閉めようとした時にエルちゃんが私の腕を掴んで上目遣いでこちらを見ております。 


「あらあら? 一人じゃトイレ怖いのかな? じゃあ、お姉ちゃんが一緒に入って上げるから怖くないですよ〜」

「―――――――――!! ――――――!?」

「お姉ちゃんは、あっち向いてるから大丈夫だよ〜」


 今日のエルちゃんは何時もより忙しないですね♪ まあ、小さい子は感情がコロコロと変わるのでしょうがないのです。


「んぅ……んふ」


 私の背後からエルちゃんのジョロジョロっとおしっこをする音が聞こえてきます。どうやらトイレに行きたかった様ですね。言葉が分からないと意思疎通が大変です。私もエルちゃんの言葉が分かればなぁと何時も思います。


「あら? エルちゃん? ちゃんとお股ふきふきしたのかなぁ?」

「――――――んぅ?」


 何とエルちゃんはおしっこした後に、トイレットペーパーであそこを拭かないままオムツを履こうとしておりました。


「エルちゃん? 男の子だったら拭かなくても良いのかもしれないけど、女の子はおしっこした後ちゃんとふきふきしないと行けないんだよ?」

「――――――? ――――――んっ!」

「だーめ。もう、お姉ちゃんがふきふきしてあげるからじっとしててね」


 私はトイレットペーパーを数枚千切って、エルちゃんの小さな穴付近のお股をふきふきと拭いてあげました。


「ひゃあうっ!?」

「そんな恥ずかしがらなくても大丈夫でちゅよ〜女の子同士何だからセーフだよ」


 私は今まで幼い子のお世話をした経験が無いので、まだまだ分からない事が沢山ありますが、幼い子のお世話をするのはこんな感じなのかもしれませんね。少しずつエルちゃんに細かい所から教えないと行けないのかもしれませんね。




 ◆エルちゃん視点




「みゃあっ!? お、お姉さん!? くすぐったいです!! 自分で拭きますからっ!」

「――――――♪」

「ひゃあんっ……!? 何で女の子の身体はこうも敏感なのおっ!?」


 あれから僕は何故かトイレに連れて来られて現在に至ります。お姉さんに自分のお股をフキフキと拭かれる何て、恥ずかしいの極みですよっ!?


「――――――エル―――ちゃ―――ん♪」


 エルちゃんと言ってる事だけは分かるようにはなったのですが、どうしてこうなったんでしょうか……別に僕そこまでトイレ行きたかった訳では無いのですが……



 ―――数分後―――



「ぐすんっ……恥ずかしいを通り越して、いっそ清々しい気分ですよ……」

「――――――♪」


 僕はトイレを済ませた後、お姉さんに頭を優しく撫で撫でされながら多分励まされていたのだと思います。お姉さんは凄く優しくて素敵な人なのですが、最近段々と過保護になって来ているような気がするのです。今でも僕が1人で階段降りれますよ〜とアピールして階段を降りて行こうとするとお姉さんは優しい表情を浮かべながら、僕を抱っこして階段を降りて行きました。その後も僕が転けないように気を使ってくれてるのかずっと手を繋いでくれるのです。


「お姉さん、大丈夫ですよ。僕一人でも出来ますから」

「――――――♪」

「ぐぬぬ……」


 顔をぱちゃぱちゃと洗った後にお姉さんに綺麗な布でお顔をフキフキとされました。


「――――――♪ ――――――。」

「あ、お姉さん大丈夫ですよ。この変な奴に白い物体を付けて歯を磨くのですよね? こないだボブカットヘアーのお姉さんから教わりましたよ!」


 僕が出来ますよ! とアピールしてるとお姉さんは僕の口の中の歯を丁寧に磨いて行きます。そしてボブカットヘアーのお姉さんもやって来て、ニコニコしながら僕の頭を撫で撫でするのです。何で2人共そんなに僕の頭を撫で撫でするのかよく分かりません。


「でも、お姉さんに撫で撫でされるのしゅき♡」


 お姉さんに抱かれたり、頭を撫で撫でされるのが大好きなのでそこは問題ではありません。心の奥底がポカポカと暖かくなるような感じで気持ちいのです。さて、今日はどんな1日になるのかなぁ?

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