第32話 新たな出会い

 ◆かなで視点


「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ!! 終わった……私、人生終了のお知らせ」


 私は一かバチかで近場にあったパチンコ店に全財産3千円を握り締めて行ったのですよ。そしたら、朝イチ20スロで投資2千円でフリーズして、アホみたいに勝って12万7千円プラスだったのです! 私は天にも昇るような気持ちで、別の台で更に増やしてやろうと思ったのが大きな間違いでした。


「うぅ……ドキドキで11万突っ込んで、やっと来た中段チェリーを引いたと思えばフリーズせずに天国2連で終わって……うわああああああああぁぁぁっんんんん!!」


 欲は身を滅ぼすとはまさにこの事です。もう二度とパチスロはやりません!


「ふぅ……でも結果的には大勝利よ。残りの手持ち金額1万7千円……とりあえず必要な物を買っちゃお」


 私は現在パチンコ店から出て帰宅している途中です。商店街のアーケードを通って帰ろうと思います。家に帰ったら、何を買わなければ行けないのか考えなければなりません。女の子には必要な物が沢山あるのです!


「それにしても活気に満ち溢れてるなぁ〜色々なお店がある。そしてあちらこちらから美味しそうな匂いがする。やはり生きてるって素晴らしい」


 私は歩いてるだけで色々と感動を覚えてしまいます。幽霊だった頃、味覚も嗅覚も全てにおいて死んでいたのですから……しばらく歩くと商店街の色々な店の店主から声をちょくちょく掛けられました。


「いらっしゃいませ〜そこの華麗なお姉さん!」

「ん? あ、私ですか?」

「そうだよ! 良かったらウチの産地直送の新鮮な野菜達を買ってかないかい?」

「野菜ですか……」


 今は辞めておきましょう。本当に必要な物を買ってから検討しなければ行けません。


「すみません……今日は辞めときま……」

「お姉さん良かったらこれ安くするからまとめて買っててくれないかい? この野菜達も貴方みたいに綺麗な人に食べて貰えたら喜ぶだろうなぁ〜」

「…………下さい」

「はい毎度あり! また来てくれたら次回もサービスしちゃうよ!」


 お野菜は大事です。健康を保つ為には最早必須! キャベツ、トマト、ナス、ニンジン等沢山入って580円なら安いです♪


「いらっしゃい、いらっしゃ〜い! お! そこの綺麗なお姉ちゃん! コロッケ買ってかないかい? おじさんがサービスしちゃうよ!」

「え? 私?」

「そうだよ! よっ! 大和なでしこ! 清楚で美人なお姉さん! モデルさんかと思っちゃったよ!」

「えへへ……そ、そうかなぁ?」


 しょうがないおじ様ですね。私が綺麗だって……うふふ……今日は特別です。


「じゃあ、この飛騨牛コロッケを2つ下さい!」

「あいよ! 2つで220円ね! これはお姉ちゃんが別嬪さんだからオマケだよ!」

「あ、ありがとうございます! 助かります!」


 何と肉屋のおじ様がコロッケを更に3つサービスしてくれたのです! やっぱ美人は得をしますね♪ 人前ではお淑やか系美少女ちゃんで行こう♪


「んん〜何だかさっきから視線が……」


 私の気の所為なのかもしれませんが、すれ違う度に男性からの視線を感じます。丈の短いスカートにニーソックス履いてきたのが間違いだったかな?


「今の私の容姿なら着物とか凄く似合いそうだよね。和服美人かぁ……」


 でも現実は厳しいです。今の私は貧乏の極みなので余裕はありません。どっかの富豪さんが私に100万くらいくれないかなぁ……はぁ……


「お? そこの美しい綺麗な嬢ちゃん! 良かったら刺身買わないかい? サービスするから!」

「え、でも私……お金に余裕が……」

「見てくれ! こんなにも綺麗な身が沢山! この光り輝く宝石のような美しくて脂の乗った刺身。嬢ちゃんみたいに極上品だよ! 日本一美しい嬢ちゃんに食べて貰えたら、この魚も本望だろうなぁ〜」

「え? 日本一美しい……ご、ごほんっ。良く見たらこの魚の身、良さみが深いわね。1パック下さい」

「毎度あり! こっちもサービスしとくよ!」


 何と魚屋さんの大将がマグロの刺身と帆立の刺身を1パックずつサービスしてくれたのです! 私の大好物です! せっかくなので、ここの魚屋さんでお醤油も買って行きましょう。


「すみません、こちらのマイルドデラックス醤油も1つ下さい!」

「あいよ! じゃあ、ワサビチューブも1つサービスしとくよ!」

「本当ですかぁっ!? ありがとうございます!」


 今日のご飯はかなり豪勢になりそうですね♪ 帰ったらぱーっとやりましょう!


「それにしても嬢ちゃん別嬪さんやなぁ〜モデルさん? 女優さん?」

「いえいえ! ただの一般人ですよ〜」

「ほほう、まあまた来てくれや! 嬢ちゃんならサービスするからさ」

「はい、ありがとうございました♪ また宜しくお願いしますね♪」


 そうして私は魚屋さんを後にして、商店街を歩く事10分が経過したくらいですね。変な人とバッドエンカウントしてしまいました。


「やあやあ〜麗しのマドマーゼル♪」

「…………」

「え? ちょっ!? 君だよ! そこの君!」

「な、何でしょうか? 腕離して下さい。通報しますよ?」


 無視しようとしましたが無理やり腕を掴まれてしまいました。身長は170くらいに金髪のピアスを開けているキザッたるい奇行種……おっと失礼。貴公子みたいな男性が現れました。上下服が共に白色です。服装も金を掛けている様子から、かなりのお金持ちみたいですね。


「見つけたんだ。僕の運命の人 まるで織姫と彦星のような運命的な出会い」

「はぁ……あそ。それは良かったですね。コロッケ冷めますので私帰りますね」

「コロッケ? そんな庶民が食べるような物は、君には相応しくない……僕と一緒に高級料亭で一流の料理を食べてみないかい?」


 高級料亭……ごくりっ……いやいや! 私は騙されないわよ! そんな下心丸出しな誘い文句に! しかもこの男さっきから私の太ももと胸ばかりチラチラ交互に見てる。こいつは危ないわ。貞操の危機だわ……しかも見た目も無いわね。 


「すみません……先約があるので、これにて失礼します!」

「あぁっ! 待って! 最後に1つだけ!」


 まだ何かあるようです。執拗いですね。私この男、生理的に無理です。控えめに言って気持ち悪いです。


「パンツ……見せてください!」

「……………………はっ?」


 パンツ? え、どゆこと? 初対面の人にいきなりパンツ見せて下さいとか言う人おるか? あ、目の前に居ました。でも、もしかしたら私の聞き間違いかもしれませんね。


「あのぉ……すみません。良く聞こえなかったので、もう一度お願いします」


 するとキザな金髪の男性は、真剣な表情を浮かべてこう言いました。


「美しい貴方のパンツ……僕に下さい」

「頭大丈夫ですか?」


 名前を聞いてくるならまだ分かるけど……こいつまじやべーですね。しかもパンツ見せてくださいからパンツ下さいになってるよ。私の周りには変態不審者さんしか寄ってこないのですか? 何のバグでしょうか。


「そんなエロい格好して、僕を誘って居るんだよね? ミニスカートにニーソックス。なんと言うけしからん絶対領域! はぁ……はぁ……何だったら、ブラジャーでも良い。君の全てを僕にくれ! 僕は……ブフォっ!?」

「あ、引っぱたくつもりがグーで殴っちゃった。てへぺろ♪」

「なんと言う一撃……左の頬だけでは物足りぬ! 左だけ赤いのは中途半端だから右の頬も殴ってくれ!」

「えぇ……」


 何コイツ……ドMなの? マジでやばいのだけど………変態パラメーターカンスト勢か何かでいらっしゃる?


「はっ!? 僕とした事が……今のは忘れてくれ。では改めて……って、あれ? ちょっと待って!」

「いや! 触らないで! 変態! 痴漢! ミジンコ! 女の敵!」

「黙れ! もう良い! 力づくで連れ帰ってやる! ベッドの上でもそんな強気な態度で居られるか見物だな!」

「いやっ! 誰かっ! 助けてっ!」


 私は変態に無理やり腕を掴まれて、車に引きずり込まれようとしております。このままでは女としての尊厳もプライドもズタズタにされてしまいます!


「あんらぁ? こんな真昼間からナンパ何て、大胆ねぇ」

「だ、誰だ貴様!? ヒイッッ!? ば、化け物!?」


 私も思わずフリーズしてしまいました。キザな金髪の男の背後に黒髪ツインテールの筋肉ムキムキの厚化粧をした、赤いチャイナドレスを着た髭を生やしたダンディな男性が威圧感を解き放つように仁王立ちしていたのです! 年齢は恐らく20代後半から30代前半、身長は185くらいと言った所かしら。


「あらやだ! 失礼しちゃうっ! 花も恥じらう乙女に向かって化け物ですって!? もうアタシ、激おこマジョスティックインフェルノよぉん!! 貴方のお尻であの名作、「オケツホリダー」するわよぉん!!」

「や、やめろ! 来るな……来るなあああっ!! ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ッ!?」


 金髪のキザな男は血相を変えて、全速力で逃げて行きました。私はどうやら助かったみたいです……


「あ、ありがとうございます!」

「良いのよん♪ 気にしないでちょーだい♪ 貴方も災難だったわねぇ」



 ―――10分後―――



 この人見た目はインパクトが凄いですが、話して見ると優しい人でした。どうやら名前は早乙女キララと言うそうです。性別は男ですが、中身は完全に乙女です。


「あらあら、奏ちゃんも苦労してるのねぇ」

「そうなんですよぉ……世の中世知辛いです」

「奏ちゃんお金に困ってるのなら、もし良かったら私の店で働かないかしらぁん? 奏ちゃんみたいな可愛い女の子なら〜アタシ大歓迎よぉん♡」

「えぇっ!? 良いんですか!?」


 もう何でも良いのでとりあえずお金が欲しいです! もう私は二つ返事で早乙女さんの勧誘に首を縦に振りました。


「アタシの店は、雑貨や食べ物等に加えて多種多様な珍しい物まで販売してるお店よぉん〜」

「良いですね! お店の名前は何て言うのですか?」


 早乙女さんはニカッとはにかむように微笑んだ後にお店の名前を言いました。


「アタシのお店は〜明智商店って言うの!」


 明智商店……意外と名前は普通で驚きました。早乙女さんのおかげで生活の方は何とかなるかもしれません!

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