第16話 白い液体
「エルちゃん……尊い……」
「お姉ちゃん……天使が居るよ……」
「猫とエルちゃんがじゃれてる光景は、1万ドルの夜景よりも素敵ね……」
私達は今、物凄く尊くて素敵な光景を目の当たりにしています。エルちゃんと白猫のタマちゃんが仲良くじゃれ合っているのですよ!!
「にゃ~ん♪ にゃふ」
「――――――♪」
傍から見れば、可愛い幼女が見栄を張り背伸びしている様で微笑ましいですね♪
「私はそろそろ配信あるから、部屋に籠るね~明美さん、また何時でも来てくださいね♪」
「うん! 葵ちゃんも頑張ってね!」
「お姉ちゃんも後で見ようかな~ふふっ……」
葵ちゃんはエルちゃんの頭をよしよしと撫でてから、笑みを浮かべて2階へと上がって行きました。部屋には私と貧乳……失礼、間違えました。明美とエルちゃんとタマちゃんだけとなりました。
「ねえ楓、あんた今変な事考えて無かった?」
「え? 変な事考えて無いけど」
明美はこういう時になると妙に勘が鋭いです。それはさて置き、もう少しエルちゃんとタマちゃんの様子でもじっくりと観察しましょう。目の保養……エルちゃん成分を補給して置かなければ。
◆白猫視点(タマちゃん)◆
「――――――♪」
「にゃ? 知らない人間が居るにゃ」
「――――――!!」
「頭の悪そうな小娘だにゃ。たが、他の人間と違って耳が長いのは何故にゃ?」
にゃっ!? それは私のご飯! 人間が食べたらお腹壊すにゃ! 食べたらダメにゃ!
「――――――♪」
「全く……やれやれにゃ……あっ! その壊れた棒みたいなやつ振り回すのは危ないにゃっ!」
耳の長い小娘が鼻歌を混じえながら、棒を振り回して遊んで居るのにゃ。見てて危なっかしい小娘なのにゃ……
「うぅっ……ふぇっ……」
「ほら! 言った矢先に……何処怪我したのにゃ? 舐めて上げるから私に見せにゃさい」
耳の長い小娘が棒を振り回して、前のめりに盛大にこけたのにゃ。泣きそうな顔で私の方を見つめてるのにゃ。
「ほら、大人しくするにゃ」
「――――――!? ――――――♪」
世話のかかる子にゃ。どうやら私がちゃんと面倒を見る必要がありそうだにゃ。何だか危なっかしくて見てられにゃいな。
◆
「エルちゃんっ!? 大丈夫!?」
「あらあら~」
エルちゃんが魔法少女★みくるちゃんの壊れたおもちゃを猫ちゃんに見せ付ける様な感じで、振り回して遊んで居たのですが思い切りこけてしまいます。
「にゃ~ん♪」
「あらまぁ……タマちゃん優しいのね♡」
何とタマちゃんが、泣きそうなエルちゃんに頬を当ててスリスリしたり、ぺろぺろと舐めております。
「タマちゃんもエルちゃんの事が気に入ったのかな?」
「世話の掛かる妹の面倒を見てるお姉さんみたいだね」
エルちゃんとタマちゃんのじゃれ合ってる姿は本当に尊い光景です。
「ん? どうしたのエルちゃん?」
「――――――!!」
エルちゃんがタマちゃんを抱っこしながら私の元へとトコトコとやって来ました。
「楓、もしかしてタマちゃんを飼いたいのじゃないの?」
「なるほどね。そろそろタマちゃんにも首輪を付けてあげなくちゃね♪」
タマちゃんは元から家族同然です♪ エルちゃんも喜ぶと言うのなら、一緒に暮らすのは大賛成です。
「タマちゃん♪ これから改めて宜しくね♪」
「にゃ~ん♪」
「――――――♪」
エルちゃんは、タマちゃんの頬にスリスリとしております。タマちゃんの事が余程気に入った様子で何よりです♪
「明美、私お皿洗って片付けて来るからエルちゃんの面倒見ててくれる?」
「任せて! それと後で一緒にこれ見ない?」
楓が鞄からゴソゴソと何かを取り出しています。それにしても、楓の鞄の中は毎度色々入ってますね。
「何それ?」
「ホラー映画よ♪ 前から気になってたの♪」
「えっと……【ドキドキおげれつ♡大作戦】?」
「あ、ミス。こっちね」
明美が再び鞄をゴソゴソとして、1枚のDVDを取り出しました。【ドキドキおげれつ♡大作戦】……不覚にも少し気にはなりますね。しかし、エルちゃんに見せていい内容では無さそうです。
「これよ! ハゲルノ・バッチーノ監督作の【弱震アリ! もしかして揺れてる?】と言う作品なの♪」
「誰っ!? と言うかそれホラーのジャンルなの?」
「大丈夫、私も良く分かんないから(ドヤ顔)」
まあ、見る前から文句言うのは作品に対して失礼と言うものですね。お片付けした後に見てみましょう。
「じゃあ、ちょっと待ってね。洗い物すぐ終わらせるから」
「は~い♪ エルちゃん~お姉さんがおやつ上げるわよ♡」
「――――――!?」
さてと、台所にお皿持って行きましょうか。私はお皿を重ねてから流し台の所まで持って行きました。
「早く終わらせよ~♪ ん?」
「――――――!!」
私がお皿を洗剤で洗い始めようとした時に、私の足に何とエルちゃんがピタっと引っ付いて来たのです!
「あらぁまぁ♡ お姉ちゃんが居ないと寂しいのでちゅか?」
「――――――♪」
どうやらそう言う訳では無さそうです。もしかして洗うのを手伝ってくれるのでしょうか? もしそうだとしたら、エルちゃんは何て良い子なのでしょう♪ でもエルちゃんは背が低いので、流し台には届きません。なのでエルちゃんの足元に小さな台を置いて上げる事にしました。
◆
「わ~いおやつ♡」
「――――――♪」
お姉さんのお友達の方からまたしてもおやつを貰い、僕はニッコリです。足元にはブライアンが僕の足にスリスリしており、これまた可愛いのです!
「ん? お姉さんが何やら洗い物をしている……これは僕の出番かもしれないな」
僕はスラムで暮らしてた時に、洗い物の経験は多々ありました。ついにお姉さんの役に立てる出番が到来したかもしれません! 僕はお姉さんの元へトコトコと走って行きまずはお姉さんの足にピタッと引っ付きました。
「――――――?? ――――――♪」
「僕もお手伝いしゅる! それ洗えば良いのですね! 任せてよ! えっへん!」
僕はここで1つ新たな問題に気付きました。
「ぐぬぬっ……背が低くて届かない……」
「――――――♪」
お姉さんが何処からか小さな台を持って来てくれました!
これで僕も水でお皿を洗えると言うものです! 僕のやる気は、最高潮に上がっていました。
「ふむふむ……お姉さん、お水は何処にあるのです?」
「――――――♪」
「ふにゃっ!? 何これ、しゅごい! このレバー下げたらお水出て来た!」
僕は早速お皿を1つ取り出して水で洗おうとしましたが、お姉さんに手でちょっと待ってと制止されました。
「っ!? 液体かけてごしごししたら、泡が出て来た!? これ良い匂いがしゅる!」
「――――――♪」
お姉さんがフワフワの物に泡を付けて、お皿をごしごしと洗っております。しかしこれまた驚きました……汚れが綺麗さっぱり落ちるのです! 僕なんていつも水で適当にごしごし洗ってるだけでしたので、これは新鮮です!
「泡がしゅごいのおっ! ピュッピュッ、ドピュって出るの!!」
「――――――!!」
僕は少し調子に乗ってしまいました。白い容器をムニムニと押してたら、先端からドピュっと白い液体が出て来て、辺り一面に掛かってしまいました。そしてお姉さんの大きな胸や綺麗なお顔にも掛かってしまい、僕の顔は段々と青ざめて行くのでした。
「あ、あぁあああああっ!! お姉しゃんごめんなしゃい!?」
「――――――♪」
僕がしゅんっと項垂れているとお姉さんは僕の頭を優しく撫で撫でしてくれました。そしてお姉さんの顔もニヤニヤしており、次の瞬間お返しと言わんばかりに僕の顔には沢山の泡が付いてしまいました。
「んにゃっ!? 泡が目に入った! 痛い、痛いよぉっ!! ふぅえええええんんん!!」
「――――――!? ――――――!!」
お姉さんが慌てて僕の顔にお水をかけて、優しくフキフキしてくれました。お姉さんはたまにいじわるして来ますけど、お姉さんはとても優しい人だと僕は知っているので、そういう所も愛おしく思ってしまいます。
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