第4話 美味しいご飯
(うぅ……恥ずかしい……なんで僕、お姉さんに抱きついちゃったんだろ……)
僕はあれから身体の汚れ等をお姉さんに落としてもらい、元から綺麗だった肌は、更に磨きがかかったように白く、幼女特有のもちもちのスベスベ肌となりました。そして僕はまた一つ、新たな壁にぶち当たっています。
「・・・・・・・♪」
「あ、あの……お姉さん? その手に持ってる服、明らかにお高そうだし……絶対女の子が着るような服ですよね!?」
「――――――?」
「え? これを着るの? 僕が?」
僕は精神は男なので謹んでお断りしようとしたのですが、お姉さんに無理やり白いスカートの服を着せられてしまいました。抵抗する暇も無かったです。
「は、恥ずかしい……足がスースーするよ」
「――――――!?」
お姉さんの目がキラキラと輝いて見えるのは、気の所為だろうか? でも僕は一つ誤解をしていた事が分かった。
(貴族のお姉さんは、僕に凄く優しくしてくれる……さっきも身体洗う時に抱きついてしまったけど、お姉さんは僕が泣き止むまでずっと優しく抱いてくれた。人に抱かれると言うのは僕に取っては、初めての経験だったから……何だろう、この気持ちは……)
「――――――♪」
(ん? エルちゃん? 何故かお姉さんはさっきから僕の事をエルちゃんと言ってる……多分名前?)
僕は再びエルちゃんと言う言葉を繰り返し発してみる。
「エ……エルたん? ぐぬぬ……案外発音するのが難しい」
僕がこの場所に来てから初めて覚えた言葉は、恐らく自分の名前であるであろう……エルちゃんでした。他の言葉は良く分からないけど、いつか分かるようになれば良いなぁと思う。僕は読み書きも数字も計算も何も出来ないから色々と苦戦しそうだ。
「うぅ? 何だろうそれ」
「――――――♪」
「また新たな魔道具なのかな? ふぁっ!? 暖かい風が出て来たぞ!? どうなってるのこれ!」
「――――――!!」
相変わらずお姉さんが何言ってるのか良く分からなかったけど、僕の濡れた髪の毛に何やら魔道具を当てて乾かそうとしているみたいです。その魔道具から暖かい風が出て、それを利用して髪の毛を乾かすと言う事だろうか。
「しゅっ、しゅごい……もしかして、この中に火の魔石が入ってるのでは!? もしかしてさっきのお湯が出るやつも……」
「―――♪ ―――♪」
「あ、ありえない……貴族の人達の生活はこんなにも贅沢なのか……僕がもし魔石を手に入れたとしたら、高価な物は直ぐに売って即刻ご飯にするのに」
今までの僕なら水浴びなんて、川で済ませてた者だからお湯に浸かると言う概念が無かった。でもお姉さんはふんだんにお湯を使い、めちゃくちゃ良い匂いのする高価そうな液体も沢山使っていた。もう僕にはお金持ちの人達の考えが良く分からないです。
そして僕はお姉さんに、自分の長い髪の毛を乾かして貰いました。
◆
「ふふっ~ふふ〜ん♪ よし、だいぶ乾いてきたわね。それにしても、絹のようにキメ細かくてサラサラで羨ましいわね。エルちゃんは、将来誰もが振り返るような美人さんになっちゃうね」
「――――――、、。」
「うふふっ、エルちゃん自分の髪の毛触って驚いてるね♪ 白いワンピース姿も本物の天使みたいで尊い……」
私はエルちゃんに白いワンピースを着せました。それからエルちゃんの髪の毛をドライヤーで念入りに乾かして、私は終始エルちゃんに癒されてニヤニヤしていました。
「エルちゃんは謙虚で欲が無いね~白いワンピースは葵ちゃんが小さい頃に着ていたお下がりだから、気にしなくて良いのに。そうだ! 私の今年の夏のボーナス全部エルちゃんの為に使っちゃおうかしら」
「―――――――――」
「あぁ、葵ちゃんとエルちゃんと3人でお買い物……良い、凄く良いよ! 一緒におてて繋いで……ぐふふ」
「――――――?」
「あ、エルちゃんごめんね! お腹空いちゃってるよね、よしご飯3人で食べよっか♪」
私はエルちゃんを抱っこして、リビングへ向かおうと洗面所を後にしました。
★一ノ瀬家 リビング★
「あ、お姉ちゃん~今日食材あんまり無かったから、冷凍のグラタンにしたけど良いよね?」
「私は何でも良いよ~葵ちゃんの作る食べ物なら何でも♪」
「作るというか、レンジでチンするだけなんだけどね」
私はエルちゃんを抱っこしながら食卓の方へと向かいました。
「可愛い~♡ お姉ちゃんこの服って、昔私が着てたワンピースだよね?」
「そうだよ~捨てずに取っておいて良かったわね。それとこの子の名前は、エルちゃんだよ! 一ノ瀬
「うん! 凄くいい名前だね! 私もエルちゃんのお姉ちゃんになっちゃうんだね~よし、エルちゃん! 今日からこの葵お姉ちゃんと一緒に夜寝んねしよっか!」
「葵ちゃん~? エルちゃんを独り占めするのはダメよ? 今日から3人で一緒に寝ましょ!」
葵ちゃんは少し驚いた顔をしていたけど、すぐに笑顔を浮かべて、一緒に寝る事に賛成してくれました。
「お姉ちゃんもエルちゃんも早く座って! グラタンが冷めちゃうよ~」
「そうだね! でもこの椅子だとエルちゃんには高さ合わないし……エルちゃん、お姉ちゃんの膝の上に座って食べよう! うん! それが良いね!」
「あぁ、さっそくお姉ちゃんの世話焼きのスイッチが入っちゃってるよ。お姉ちゃん過保護だからねぇ」
「うふふっ……あ、葵ちゃんオレンジジュース冷蔵庫から、持って来てくれる?」
「おけ! エルちゃんなら喜んで飲んでくれるかな?」
「ありがとう♪ さて、エルちゃんお待たせしちゃったね。それでは――頂きます」
私はエルちゃんを膝の上に乗せて席に付いて、頂きますと手を合わせてから3人で晩御飯を食べ始めるのでした。
◆
「めちゃくちゃいい匂いがする……何だろうこの美味しそうな料理は……」
僕はお姉さんの膝の上に座りながら目の前の料理に視線が釘付けだった。
(はっ! いつの間にか涎が出てた)
お姉さんは僕が涎を垂らしている事に気付いて、綺麗な布で僕のお口をフキフキと吹いてくれました。2人のお姉さんがニコニコしながら僕を見つめている。何だか恥ずかしい……
「んにゃ……うにゅ……」
「――――――♪」
「それにしても……どれもお高そうだなぁ、この器とか売ったらオークの串焼き100本は買えそうだ。ん? ふぁっ!? 何だこの透明の器は!? 中に鮮やかな色の液体が入ってるぞ……」
僕は鮮やかな色の液体が入った容器をじっーと見つめた。僕は意を決してお姉さんに、鮮やかな色の液体が入った容器を指を挿して、これは何ですかと聞いてみた。
「――――――♪」
「え? 飲んで良いんですか?」
僕はお姉さんから容器を受け取り、謎の飲み物をひと口飲んでみる。
「ふぁあああ……新鮮な何かの実のジュースだろうか……よし、もうひと口……あれ? もう無い!?」
どうやら僕は無意識の内にこのオレンジ色の飲み物を飲み干していたみたいだ。何て、恐ろしい飲み物何だろうか……口当たりが良くまだまだ沢山飲めそうだ。
「まだ飲みたい……」
「――――――。」
「ん? うひょおおお!?」
僕が空になった容器をしょんぼりと見つめていたら、茶髪のボブカットヘアーのお姉さんが何とお代わりを沢山持って来てくれたのだ! 先端に蓋の着いた大きな透明な器。この器だけでも相当な価値がありそうだ。
◆
「エルちゃんはどうやら、オレンジジュースが気に入ったみたいだね♪」
「オレンジジュースを飲んだ時のエルちゃんの顔、たまらないわぁ……そして飲み干した後に空になったコップを切なそうに見つめるエルちゃん……庇護欲がそそられちゃうね」
「エルちゃん可愛いすぎ! スマホでエルちゃんの写真撮っておこうかな」
葵はポケットからスマートホンを取り出して、エルちゃんを撮ろうと楓の方にカメラを向ける。
「葵ちゃん今だよ! エルちゃんは今、料理とオレンジジュースに気を取られていて、カメラに気づいてないよ!」
「よ〜し! お姉ちゃん行くよ! はい、チーズ!」
「うふふっ♪ これからもっとたくさん撮って、エルちゃんのアルバム作っちゃおうか」
「おお! 良いね良いね! エルちゃんの成長記録だね♪」
私と葵はご飯を食べながらエルちゃんの様子を見ていました。小さなおててでスプーンを持って、不器用ながら必死にグラタンを食べる姿はもう語彙力を失いそうです。
「お姉ちゃん! エルちゃん上手く食べれないみたいだから食べさせて上げようよ!」
「そうね~エルちゃん、お姉ちゃんが食べさせて上げるからね~」
「―――??」
私はグラタンをスプーンで掬ってから、熱いのでふうふうと冷まします。それからエルちゃんの小さなお口にグラタンを運んだら、ちゃんと食べてくれたのです!
「お姉ちゃん! 私もエルちゃんに食べさせたいよ!」
「じゃあ今度は葵お姉ちゃんにグラタン食べさせて貰いましょうね~エルちゃん、ほらグラタンが来たよ♪」
「―――!!」
葵ちゃんは席を立ち、エルちゃんの前まで行ってグラタンを食べさせようとするのですが、ここで葵ちゃんが少しいじわるをしてしまいました。エルちゃんのお口の前まで持って行ったグラタンを何と自分で食べてしまったのです。そのせいでエルちゃんは涙目になりながら、頬をふくらませていました。
「エルちゃんごめんね、次はちゃんと食べさせて上げるからね!」
「葵ちゃん、エルちゃんにいじわるしたらダメだよ~? エルちゃん泣いちゃうよ?」
「は〜い、エルちゃんごめんね。よしよし」
「―――!?」
エルちゃんは目を見開いて驚いております。表情がコロコロ変わるので、見てるこちらはとても癒されます♪ 葵ちゃんに関してはもう目がうっとりとしていました。
「エルちゃんの食欲凄いね、まだ足りなさそうだね」
「まあ、グラタン一つでは少ないよね。お姉ちゃん、戸棚にある108円のクリームパン2つあげてみる?」
「そうだね。エルちゃんクリームパン大好物みたいだし」
エルちゃんがグラタンを美味しそうに平らげた後に、葵ちゃんが戸棚からクリームパンを2つ持って来ました。エルちゃんは、再び目をキラキラと輝かせてクリームパンに視線が釘付けに……
◆
「あ、あれは!? 高級パンじゃないですか!? しかも2つ!」
「―――♪」
「え!? 2つもくれるのですか!? 美味しいご飯に飲み物、超高級パン2つ。何て贅沢何だろう……貰っちゃって良いのかな?」
お姉さん達はじっーと笑顔でこちらを見つめています。
(僕の顔に何か付いてるのかな?)
僕は自分の顔をぺたぺたと触って見るが、これと言って何も付いていない。そして僕はいよいよ、謎の高級パンの袋を開けようとするが、ここで僕はまた1つ気付いてしまった。
「このパンを包んでいる紙? みたいな透明のやつ、お姉さんは捨てていたけど、これも売れば絶対高いやつだよね!? 透明の紙には、何やら文字も書いてある」
僕は書いてある透明の紙をじっーと見てみた。
(108円? これがこのパンの名前だろうか……いや、ブランド名なのかもしれない。しかし、なんて読むんだろう?)
僕はこの透明な紙をゴミとして捨てるのではなく、ポケットにこっそり入れようとした所をお姉さんに見つかり、取り上げられてしまった。
「ヒィッ!? ご、ごめんなさい!」
「――――――。」
何故かお姉さんに頭を撫でられてしまった。どうして?
そして僕は頂いたパンをもぐもぐと食べ始めました。ここに来てから色々と驚く発見ばかりです。でも貰ってばかりなので、僕も優しいお姉さん達に何か恩返しがしたい……
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